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わたしの嫁は神様でした  作者: 真咲 透子
5. 幼馴染との夏
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25. 夏の終わりに(上)

 英語の宿題は千尋との約束である夏休み最後の3日間の前日になんとか終了した。


 最後の一日は蓮も呼んで手伝ってもらった。ちーちゃんは「容赦」って言葉を知ってもいいと思う。もうしばらくは英語の勉強したくない。学校が始まるからそうは言ってられないけど、あのスパルタ教育から耐えた今は現実逃避しても許されるはずだ。


「やっと終わった……」

「本当にな。絢音の英語が壊滅的だと改めて知った」

「このくらいでへこたれてどうするのよ」


 幼馴染たちの視線はいつになく厳しい。えぇ、何でかは自分が一番分かっているけどね!!


「それはともかく!!明日はどうするの?」


 分が悪いと思った私は話題を変えた。夏休み最後の3日間は明日から始まるのだが、まだノープランだ。ちなみに、夏休み最後の3日間は課外もない為に完全に休みだ。


「どこか行きたいところある?ショッピングとか?」

「そうね……」


 千尋は考えるそぶりを見せた。いつもは私が行きたいとこばかりリクエストしているから新鮮だ。


「水族館がいいわ」

「水族館?」


 意外なリクエストに私は驚いた。


「そういえばこの前、リニューアルオープンしたって言ってたな。いいんじゃないか?楽しんでこいよ」

「何もなければ蓮も行きましょう」

「おっ。いいのか?せっかく絢音とのデートだろ」

「デートって」


 ちーちゃんと私は女の子同士なのですが。まぁ、ちーちゃんみたいな美人とデートって悪い気はしないけどね。うふふふふ。


「絢音、顔が怖いわよ」

「えっ」


 私の邪念が千尋にも伝わってしまったようだ。


「久しぶりに幼馴染だけで遊びましょう?」

「いいね。夏休みは何だかんだ言って3人で集まることあまりなかったし」

「あのいまいましい男のせいで……」

「千尋ー。落ち着こうなー」


 千尋がぎりり、と拳を握りしめながら言ったので、蓮が千尋をなだめにかかった。私もぽんぽんと背中をさすってみた。


「ちーちゃんは本当に瀧川くんが嫌いなんだね……」

「当たり前よ。あの男は」

「まぁまぁ。それより何時集合にするか?」


 蓮の言葉により明日の計画を立てはじめる。千尋の言いかけていたことが気になったけれど、いつになく楽しそうな幼馴染たちの姿を見ているうちに頭の片隅に追いやられていった。


 千尋は、どうしてそんなに瀧川くんを嫌うのだろう?


 その答えをまだ私は知らない──。



「あの魚、絢音っぽいな」

「こっちの魚も絢音に似ているわ」

「蓮もちーちゃんもさ、魚と私を見比べるのやめてくれないかな?」


 水族館にて。


 今日みたいなまさしく夏!というくらい快晴の中では超ベストチョイスだと思った。水族館は室内だしね。こんな日に外を歩いていたら丸焼きになりそうだ。焼けてもおいしくなんかないしね。


 目の前のジンベイザメを見る。おー、大きい。こうしてじっと見ていると海の中に迷い込んだみたいだ。全体的に青色の非日常な景色に思う。隣で「わぁ~おおきい!」と目を輝かせて眺めている少女を見て小さく笑った。リニューアルした水族館は、夏休み終わりが近いことからか人が多かった。


「絢音、こっちこいよ。クリオネがいるぞ」

「うん。今行く」


 蓮の声に近くの水槽へ近寄った。蓮の指さした先にはクリオネが優雅に水中を泳いでいた。


「わーすごい!ひらひらしてる」

「『流氷の天使』って呼ばれているけどな、こいつらの捕食方法が」

「蓮、やめて。夢を壊さないで」

「…………」


 クリオネの捕食シーンをテレビで見たことがある。頭がパカっと割れて、触手でくわっと餌を捕獲していた姿に、思わず箸を落としてしまった。一緒に見ていた隼人も、箸は落とさなかったが口が開いおり、テレビ画面に釘付けだった。


「こんなにかわいいのに。ギャップがすざまじいよね」

「ははは。瀧川みたいだな」

「!?」


 私はぎょっとして蓮を見た。


「絢音も気を付けないと、『近づいたらぱっくりやられていました』なんてことになりかねないぞ?」


 茶々を交えて言った蓮はいつもと変わらなかった。いっそ普通すぎて逆に彼の言葉は私の中に入りこんでいく。そのとき私の腕を千尋がつかんだ。


「絢音、蓮。何を見ているの?」

「ちーちゃん。クリオネ見てた」

「そう。……もうすぐイルカのショーの時間だけど」

「じゃあ行くか。イルカのところへ」


 イルカショーの会場まで歩きながら、目に付いた魚について感想を言っていく。するとあっという間に着いてしまいわくわくしながら席に座って待った。



「すごかったね!!」


 外は雲ひとつ見当たらず、青空が広がっていた。涼しい水族館から出た温度差を肌で感じる。アスファルトが日に焼けて独特のにおいがした。


「近くに水族館ができないかなぁ」

「水族館はそうホイホイできるものじゃないな」

「また来ればいいわ」

「うん!」


 私は千尋の言葉で笑顔になった。蓮も千尋も笑っている。水族館は家から遠い場所にあるので、今から帰ったらちょうどの時間になるだろう。


「明日はどこ行く?」

「隣町で夏祭りがあるから、明日はそこにするわ」

「いいね!確か神社であるんだよね。蓮、ライバルだよ」

「意味分かんねぇよ」 

「蓮はうちの町の神社の息子でしょ?商売敵だよ!」

「いや、神社は商売じゃないし」


 電車に揺られながら明日のお祭りの話をした。明日も楽しみだな。夏祭りと言ったらやっぱり浴衣だよね。今年は夏祭り行ってないからなぁ。どこにしまったっけ……。


「じゃあまた明日!」


 帰る方向が違うのでそう言ったら、千尋に不思議そうな顔をされた。


「3日間付き合ってって言ったじゃない。私の家に行くわよ」

「えっ」

「絢音、千尋。明日な」

「えぇ」


 蓮と別れた後は当然のように千尋のお屋敷へ直行コースだった。……さいですか。  

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