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21. アンバランスな2人(中)

ひとだまを追いかけた先には、泣いている女の子がいた。私はそっと近寄ろうとする。


「おい、何しようとしてるんだ」

「……離して」


 生駒くんは私の肩をぐっとつかみ、それ以上先へは進めないように力を入れた。肩に指が食い込んで痛い。


「バカだろお前。こいつが危ないやつだったらどうするんだ」

「私の自己責任だよ。生駒くんには関係ない」

「関係ないってな……」

「そんな言うなら帰っていいよ、私は残るから」


 私は目線は女の子に向けたまま彼に言い返した。むちゃくちゃ言っている自覚はある。ビビりな普段の私なら即引き返しただろう。でも、どうしてだろう?この子をほうっておくことができなかった。なんとかしたい、という思いだけが強くなってゆく。


 しばらくどちらも動かなかった。


 生駒くんは私が消して折れないことを悟ったのだろうか、「チッ、俺は知らないからな」と悪態をつきながらも肩の手を放してくれた。


 私は女の子に近づき、その場にしゃがんだ。女の子と目線を合わせる為だ。


「──どうしたの?」

「…………」


 女の子はゆっくり顔を上げた。泣きはらして赤くなった、くりっとした目がこちらを向く。


「お姉ちゃん、私が見えるの?」


 その女の子は、おかっぱ頭に時代を感じる赤い着物を着ていた。不思議そうに私を見つめる。


「うん、見えるよ。……ねぇ、どうして泣いてるの?お姉ちゃんに教えてくれないかな?」

「…………」


 女の子はうつむいた。足をもじもじさせている。ダメかな……?とさらに言葉を重ねる。無理かなぁ。見知らぬ人に泣いている原因を聞かれても素直に話してくれないよね?不審すぎるか。


「……ったの」

「ん?」


 女の子はか細い声で何かを言った。私はやさしく聞き返す。


「とられちゃったの……」

「とられた……?」

「うん。もらったかみ飾りをとられちゃったの」


 こんな幼女からものを盗るなんてけしからんやつだな!!場違いにもそう思ってしまった。


「あっくんに」

「あっくん?」


 別の子の名前が出てきた。呼び名の感じからして同じくらいの年の子っぽかった。……いじめか何かかな?……こんなかわいい子をいじめるなんて、私が成敗してやろうか。


「あそこの洞窟どうくつに閉じこもっちゃったの……」


 女の子が指さした先に、洞窟が見えた。盗った人がわかっているのなら取り返せるかもしれない。


「そっか。それならお姉ちゃんと一緒に行こうか。かみ飾りを返してくれるようにお願いしよう!」

「ほんとう?」

「……お前本気か?」


 ようやく話がまとまろうとしているところに、生駒くんが水をさしてきた。


「そんな安請け合いするな。罠だったらどうするんだ」

「そんな訳ないじゃない」

「なんでそう言い切れるんだよ」

「勘」

「勘って……んな納得できねぇよ」


 生駒くんはまだ難しい顔をしている。あー、なんか面倒になってきたな。


「もうなんなのきみ。これから生駒くんのこと『こまくん』って呼ぶよ」

「意味分かんねぇよ。なんの流れでそうなったんだよ」

「何だい『こまくん』は。困ったやつだなぁ」

「お前まじふざけんなよ」


 生駒くんはキレそうだ。やだなぁー今どきの若者は。すぐカッとなりやすいんだから。そんな彼を無視してさっと立ち上がった私は女の子の手をにぎり、歩き出す。


「さぁ行こう。きみの名前は?」

「はづきだよ」

「はづきちゃんか。かわいい名前だね。私は絢音」

「おい無視すんな」


 何だかんだ言いながらも、生駒くんは私たちの後をついてきた。しばらく歩くと、洞窟どうくつの入口に着いた。


「ここに、はづきちゃんの言う『あっくん』がいるんだね」

「うん」

「……」


 洞窟の中を懐中電灯で照らしてみる。先は無く、どこまでも真っ暗だった。私たち3人は、洞窟の中に入っていった。数歩歩いただろうか、というところで


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ────


「……やっぱり罠だったじゃねぇか」

「…………」


 とても重い何かが動いた音がした。振り返って見てみると、さっきまで空いていた洞窟どうくつの穴が見事に塞がっている。


 なんというか……『お約束』ですよねー。

次でこの回はラストです。

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