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プロローグ
今日も1日何事もなく終わるはずだった。
朝見た占いも3位とまぁまぁよかったし、苦手な英語のテスト結果も悪くなかった。それなのに……。
「──ああ、もう大丈夫だよ」
今起きたことの理解が追いつかない。混乱した頭では何も考えられず、腰が抜けてしまったようで立つこともできなかった。
「怖かっただろう。無事でよかった」
いまだ震えている私の前に、類を見ないほど端整な顔が近づいてくる。そっと壊れ物に触るかのように私の髪を撫でた後、額に柔らかい感触を感じた。ふわり、と私を真綿でくるむように私を抱きしめ、
「お前は私が守る。──我が花婿殿」
彼はそれはそれはやさしく、どこまでも甘い毒のような声でささやいた。
まわらない頭でふと思った。む、こ?私、女の子なんだけど!?
その後、私の意識は途切れ、闇に溺れていった──