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つんのめった身体はくるくると回転しながら宙に舞い、背中から地面に叩きつけられた。
「ぐはッ」
まるでプレス機で押しつぶされたようだ。口の中から塊のような物が飛び出した。
手が、足が、動かない。ひぅひぅと風切り音がひどい。それはヘリコプターのローターの音ではない。自分の咽喉の奥から漏れている音だった……いや、もっと深いところからだ。
真っ黒に武装した警官が光の外から現れた。何足もの底の厚いブーツが地面を叩き、揺らした。銃口は取り囲むように向けられていた。
畜生、何がメートル法だ……。インチじゃねぇのかよ。
最後の一瞬、小さな妹の姿を見た気がした。
ああ、ベス。かわいいベス。
すべてはベスの為に──。
*
真っ白い世界がぼんやり滲んで、やがて焦点を結ぶ。
病院のようにも見えたが違う。
病院? びょーいんってなんだ?
何か、頭の奥がズキズキとする。
ずきずき? あたまのオク?
コンランしている。じぶんはとてもコンランしている。
ほんとうに?
「やぁ」
視界の中に、赤い色をしたフレームの眼鏡をかけた女が現れた。「起きたかな?」
だれ? ダレってなに?
まぶしい。そのライト、ヤメテ。
「うん、よさげだね。せっかくだから目だけは本物を使わせてもらったよ」
なに? な……なに?
「うーん、あんまりうまくないかな?」