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ピヨーン、ピヨー──、
何かに躓き、身体が傾いだ。
しかし、デクノボーはすぐに体勢を立て直す。
ところが次の瞬間。
黒い波がデクノボーを飲み込んだ。
デクノボーはバランスを崩した。
再び、体勢を立て直す。
だが大波に飲まれ、溺れたように路面に倒れ込んだ。
計画はいたって単純だった。
デクノボーをネットでからめ捕る。
事前にデクノボーの巡回ルート、時間、速度、バックアップ体制──警官の到着時刻──とやじ馬の配置を加味して、場所を決め、ワナを仕掛けた。
ネットはロバートが準備した。カーボン複合材で編まれたものだ。
路面に広げ、ローラーに絡ませ、手足に巻き付け、自由を奪う。
いま、デクノボーはネットから逃れられず、這い出そうにも、両肩の盾や、突き出た装備がますます絡まり、長い手足を持て余した一匹の巨大な昆虫のように、ひどく無様な姿を晒してた。
たいした獲物だよ。
ウィリアムは、火を失って久しい街灯の上から飛び降り、緊急信号の発せられる前に、もがくデクノボーをすっぽり遮断シートで覆った。すぐさま腰に差したロッドを抜きだし、手足に捻じ込み、テコとモーメントを利用し、関節を砕いて動きを封じようとした。そしてバッテリーから伸びるケーブルを切断、待機しているロバートがピックアップのトラックを寄せて、二人で荷台に乗せると、即座に撤収する手筈──、
「な……ッ」
何!?
しくった。
すぐさまバックアップ・プランに──、
不意に強い光に焼かれ、今や自分が間抜けな獲物になったのを知った。
闇を切り裂くのはヘリのローター。
「逃げろォ!」
ウィリアムは叫び、引き倒され、もがくデクノボーの上から自分もまろびながら、光の輪から逃れようとした。
どこかで何かが爆発した。確認している暇はなかった。
どうしてこんなにすぐに来た。
まさか──まさか。
ひゅっと何かが身体を貫いた。
ごきっと太い音を全身で訊いた。