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にがじん!  作者: なお
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五話

 ここまで話せば大体予想がついているとは思うが最後まで内容を伝えておこう。

 その日、いつもの三人組はいつものように俺の家へと上がり込み、そしていつもとは違い伸吾の奴が部屋に入り一直線でパソコンの前へと向かい、起動ボタンを押していた。


「なんでパソコンを起動させたんだ?」


「まぁまぁ。ちょっとは落ち着いて物事を見ていなさいよ拓ちゃん。」


 そう伸吾が言い終わるとほぼ同時にパソコンから発せられていた喧しい機械音が鳴りやみ、それはまた起動完了の合図でもある。そして伸吾がパソコンの乗ったデスクの前に設置された椅子へと座り、素早い手つきでインターネットへと繋ぎ、よくわからない見たことも無い会社のチャットソフトをダウンロードしていた。むろん、未だに我が脳はハテナマークを量産している。

 ソフトのダウンロード&インストールも無事完了し、それに関係しているであろう設定をいじくる伸吾。その動作を後ろから俺はただただ呆然と眺め、さらにその隣では黒須の奴は今から冒険へと旅立つ勇者のような輝きを放つ瞳で伸吾の行動を見つめていた。

 チャットソフトの設定を全てやり終えたであろう伸吾は、そのままマウスからキーボードへと両手を移し、滑らかな動きでタイピング動作を始めた。


SINGO>いるか〜?


 と、打った文字が画面へと映しだされる。さすがの俺にも想像がついてきたぞ。つまりあれか、紹介すると言っていた人物はお前のチャット友達と言うことか。


「そういうこと♪」


 まだ見ぬ伸吾の知り合いはすぐには応答をせず、待つこと約2分後にようやく画面上に文字が現れた。


アキラ>ああ、いるよ。


 と、文字が現れた瞬間に、すでにタイピングをする動作を準備していた伸吾が即ざま返事の文章を打ち込む。


SINGO>すまん!また悪いが宿題教えてくだされ!

アキラ>またかい?

SINGO>そう言わないでたのんますよー(涙

アキラ>君・・・少しは自分でやろうとは思わないのかな?w    ※『w』とは『(笑)』の略

SINGO>脳みそにシワが微塵も感じられない俺に出来るとでも思って?w

アキラ>いや。思わないよw

SINGO>でしょー?

アキラ>仕方ないな。何がわからないんだい?


 ここでようやく伸吾が後ろで突っ立っている俺達二人の方向へと顔を向け、口を動かして来た。


「拓!今日出た課題貸しなさい。」


 その言葉に慌てて鞄から課題プリントを取り出す俺。それを引ったくるように受け取った伸吾は、そこに書かれた一番初めの問題と一番最後の問題をタイピングで画面へと映し出した。今思うと何で伸吾に命令されないといかんのだ。

 そしてそれから約3分後。


アキラ>それだと○○○出版の○○○という本の問題だね。多分45〜55ページの問題だよ。


 …まて。何処でそんなことがわかったんだ?偉大なる竹田教師が提出してくる課題は一般には出回っていない書物から出題されると聞いているが…しかもページ数までピタリと当てて来やがった。

これにはさすがの黒須も驚いた表情を作り、腕を組み固まったまま画面を凝視している。


 それから1分後、アキラと呼ばれる相手から俺のパソコンへと送信ファイル受信了承の問が出され、迷い無くOKボタンへとマウスを滑らす伸吾。そのファイルには課題の答え、そして数学特有の途中式まで全て書かれたものだった。

 が、その途中式が何故そうなるのかわかれば馬鹿二人も苦労はしないわけで…。黒須の奴はわかっているらしいがそれを教えてくれる仏の心は持ち合わせておらず、ニヤニヤと腹の立つ表情で馬鹿二人を見つめていた。まぁ、途中式さえあれば俺でもわかる部分が多い。

 なんとか俺の力でほぼ問題を解明したが、どうしてもわからないものが何問か有った。言うまでもなく伸吾は一問もわからなかったがな。使えん奴だ。


SINGO>34問目と38問目と52問目がわかんないよアキラの兄貴(涙


 と、伸吾が画面へと文字を打ち込み、その10分後に新たなファイルが我がパソコンへと届けられる。そのファイルからは、アキラと画面上に書かれている人物が自作したであろう解説文章と図形がわかりやすくまとまった一つのページだった。

 それを見ても理解出来ていない伸吾に代わり、なんとか理解完了を果たした俺が伸吾へと教えてやる。


SINGO>おほ〜。なるほど。理解できたぜ。いつもすまんのぉ〜(涙

アキラ>少しは自分で解決できるよう心がけてくれよw


 と、ここまで時間にして約30分。なんとも早く課題が終了した。うーむ…このアキラって奴…すげー。


アキラ>こちらからも聞きたいことがあるのだが、そちらには君を含め何人が僕達の会話を見ているのかな?


 唐突に画面内の相手からSINGOへと問が出された。ちょっと待て。なんで伸吾以外の人物が居るってことまでわかるんだ?

伸吾もそれを疑問に思ったのか少し間を開け、カタカタとタイピングを再開する。


SINGO>へ?

アキラ>失礼だけど、君がこんなにすんなりと問題を理解出来ることは無いと思うんだ。助言者がいるのならば話は別だけどねw


 正解。こいつ極上の馬鹿だからな。




 とまぁ、これがアキラと呼ばれる人物と俺が知り合ったきっかけだったわけだ。もちろんその後に伸吾に俺専用IDを作らされたが…。

 ん?黒須の反応はどうだったかって?こいつはアキラの何処から仕入れたかわからない情報や洞察力に関心してたな。その後に浮かべたいやらしい笑みが気になるが…。

 ちなみに課題のほうは俺と伸吾二人の途中式を少しばかり変え、類似しないよう提出させてもらった。

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