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名誉のためでなく  作者: ulysses
第2章
15/19

第014話 海魔Ⅳ

 アトレウ村の浜辺では、村人たちがカヌーを見詰めていた。【ボグ=ス・タルング】が、若者たちが乗ったカヌーを破壊し暴れまわった時には、集まった者たちから悲鳴が上がり、浜は騒然となった。

 やがて魔獣が去り、カヌーが浜へと近づいて来ると、乗っているのが人族の船乗りと獣人族の娘だけと分かり、絶望の声が上がった。

 若者二人の親たちは、怨嗟の目でジェミィを見ていた。だが、カヌーが浜に着き、緊張で強張り虚ろな目を虚空に泳がせて、白い顔色で震える姿を目にすると、無言で羽織っていたショールを娘の肩にかけた。


「娘は、伝道所で寝かせるのだ。異教の司祭よ、任せた。ジリヤ、エフセイ。リンマ、レフ。息子たちは勇敢であった。天上にて、しゅいさおしを言上しておるであろう。今宵、永眠祭を行うで、準備をするがよい。皆も、若き二人の旅立ちに祈りを添えるのだ。明日、埋葬式を行う」

 

      ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 ジェミィは、伝導所の奥にあるベッドで目を覚ました。毛布にくるまり、両手はシーツを握りしめていた。頭の芯は痺れたようで、何も考えられなかった。ただ横たわったまま、虚ろな視線を石の壁へ向けていた。静寂につつまれて、彼女はまた眠りに落ちた。


 目の前に【海の魔物】が迫り、破壊された人体が漂う。声のない悲鳴が、頭蓋の中に響き渡る。思うように動かない体でもがいていると、魔獣の退化し白く濁った見えないまなこが、自分をじっと見詰めているのに気づいた。

 虫の羽音のような微かな雑音に思考を絡めとられ、ただその眼から視線を外すことができなかった。突然ブラックアウトした視界は、魔獣が、ジョン・カドガンが、義父のゴードンが、櫂が、割れたコップが、揺れる草原が、滴る雨だれが、甲高く鳴く海鳥が、揺れる廃屋の扉が、黒く破り去られるように次々と視界に渦巻いた。耐えきれなくなったところで唐突に視界が開けた。

 ジェミィは、夢の世界と現実の境界線もあやふやなまま、再び目を覚ました。

 

「目が覚めましたね。水を呑みますか?」と、ベルナール司祭が静かに尋ねた。しばらく前から、ベッドの横の椅子にかけて様子を見にきていた。

 のろのろと上半身を起こすジェミィに、水差しから冷たい水をコップに注ぎ、手渡した。

 明かり取りの天窓の向こうは、夜の闇に覆われていた。


「私、全然分かってなかった……。魔獣と戦うってこと……、殺されるって……、喰われるってこと……。あの時、ジョンのことも、一緒にいた二人のことも……、何も考えられなかった。自分のことだけで……、死にたくなかった」

 虚ろな眼差しで、泣くこともできず、ジェミィはぼつりぽつりと呟いた。ベルナールに話しているのか、自分自身に話しているのか、その目は何も見ていないようだった。


 ベルナールはジェミィの冷たい手を、両手で包み込んだ。

「ミス・ジェミィ、貴女は愛ゆえに、止むにやまれず行動したのです。その心は、尊いものです。しかし、やり方を間違えました。他者を巻き込み、その命を奪うことなってしまいましたが、そのことは、しっかりと受け止めねばなりません」

「はい……。私は、なんて浅はかだったんでしょう。あんなに……、皆からも反対されてたのに……」

「今は、そのことは考えなくてよいですよ。まずは、心身の加護を願うのです。そして勇敢だった二人の若者を讃えましょう。祭壇にぬかずかなくとも、かまいません。横になり、ただ心の中で一心に祈ればよいのです。しばらくしたら、スープを温めてきますので、食べたくなくてもお上がりなさい」

「はい……、司祭様」


 静かな抑揚で深い陰影に富んだベルナールの声は、ジェミィの心のなかに沁み入って、その心をわずかに落ち着かせた。従順にベッドに身を横たえ、胸前で両手を組み合わせ、目を閉じた。


 ベルナールは、静かに部屋から出て行った。

 

      ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 獣人族は、彼ら独自の宗教観により、死を『天国へと至りそこで修行したのち、新たに生まれ変わるための通過儀礼』と捉えており、死を避けはするが死んでしまった場合は天国への旅が安らかであるよう祈る。このスケラグス諸島の獣人族は、古代から周囲とは隔絶した生活を送ってきたため、獣人族の古い宗教が土着化して伝わっていた。


 この夜、埋葬式の前夜に行われる永眠祭が、村の前に広がる浜辺で行われた。

 車座に座った村民の中央で火が焚かれ、神官を兼ねるグエンコ村長により、永眠者の武勇の賞賛と魂の安息、神による永遠の記憶が与えられるように願う祈祷の連祷が行われ、親族や友人が聖詠詩篇を唱え、夜通し祈った。明け方に、村民による詠歌が詠われ、永眠祭は終わった。


 シアーズは村長の家で疲れた体を休めた後、村民たちから離れた岩に座り、陰ながら永眠祭に参加し祈りを捧げた。読書家であった少年時代に獣人族の宗教──古代ズィーヴァ教──について読み、故郷の村での獣人族の葬儀に参列もしたことがあるので、現代的な進行次第は知っていた。要所は現代ズィーヴァ教とも共通点があった。村民が詠歌を詠う時には、一緒に詠歌を呟き詠った。


 シアーズは朝日の指す海面を眺めながら、パイプを吸い付けた。

 浜辺の村民が解散した後、村長がシアーズの隣へ来て岩に座った。ポケットから、この辺りの島に自生するブリオール草の葉を発酵させて巻いた自家製葉巻を取り出し、火をつけた。二人はしばらく、黙って海を見ていた。


「チムルとユーリの魂に祈りを捧げてくれたこと、礼を言う。だが、自分の命を祖末にするのは、感心せぬぞ」

「……、気をつけよう」

 グエンコは呆れたように首を振った。

「お主、漁船の船長にしては肝が据わりすぎとるの。シアラーというのも、おおかた偽名じゃろう。向こう見ずな若い者が先に逝くのを見るのは、儂は好かぬわい」

「……、多くの若者が?」グエンコの言葉の意味は読み取ったが、敢えてそれには触れず、聞いた。

「……。うむ、儂らの漁具では、【海の魔物】には太刀打ちできぬ。触らずにおくのが、一番よいのじゃ。だが、【あれ】が出現してこの十数年、血気にはやり挑む者は数年おきに出よる。墓場には、主のいない墓石が、これでとおになったわい」

 皺が刻まれた厳しい顔は、感情を伺わせなかった。嘆きは、深く沈潜しているようだ。

 

      ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 ベルナール司祭は朝の陽を浴びて、伝導所の裏にある小さな畑に水をやっていた。

 昨夜からジェミィの義父ちちであるゴードンとその部下二名が伝導所に泊まり込んでおり、早く義娘むすめに会わせろと騒いでいたが、ベルナールは厳しく面会を断っていた。ジェミィの精神が、不安定だったからだ。

 朝になって彼女が落ち着いた先ほど、やっとベルナールは面会の許可を出した。

 ベルナールが一晩中、彼女の枕元で祈りを捧げながら告解こくかいを行っていたおかげか、ジェミィはすっかり憑き物が落ちたように穏やかな風貌になっていた。

 畑の水やりを終えて、朝食の準備をしようときびすめぐらしたとき、頭部に衝撃を感じて、ベルナールは昏倒した。

 

      ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 ジェミィの様子をみようと伝導所を訪ねたシアーズは、祭壇の前に三人の男が倒れているのを見た。駆け寄ると、ゴードン・リーソーと、その部下二人だった。

 散らかった周囲の様子から数人に暴行を受けたようだが、幸いにも骨が折れているようではなく、気絶しているだけだった。


「しっかりしろ、何があった」

「うう……。あぁ、あんた……、船長さんか。あの悪ガキ共が、いきなり襲ってきやがって……」

 真珠穫りの二人も気がついたようで、もぞもぞと動きはじめた。

かしら、お嬢が危ねぇ! あいつら、目的はお嬢だと言ってやがった!」

「何だと!?」

 ゴードンは寝室へよろよろと入って行ったが、すぐにそこから悲痛な叫びがした。


 寝室は荒らされて、シーツや毛布が床にまき散らされていた。ここには、ジェミィの姿はなかった。

 手分けをして、伝導所の中や周囲を探した。シアーズは伝導所の裏の畑で、裏口から続く数人分の足跡と転がった桶、踏み荒らされた形跡を発見した。

 伝導所からは、ジェミィとベルナール司祭が消えていた。


 相手は集団だということもあり、四人で足跡を追跡することにした。先日会ったテルースの言動から見て、連れ去られた二人の身が案じられる。

 

      ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 太陽は中天にかかり、先頭のグエンコ村長の連祷が続くなか、村民が聖歌を謡い、丘の陰の墓地へと行列が進む。列の中央の二組の親に抱えられた二つの壷棺は、空であった。

 連祷には、二人の永眠者の罪の赦免や天国に入る許可、復活への祈願と、永眠者たちをズィーヴァ神と参列者が記憶することへの祈りが織り込まれている。祈祷のなかで永眠者の名を呼ぶ際には、俗名ではなく聖名が用いられた。


 村の裏にある丘を越えると、草原を切り開いた墓地が見えてきた。

 

      ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 シアーズたちは足跡を追って、村を回り込んだ山裾へと着いた。土は草で覆われ、足跡を辿ることはできないが、人に踏み分けられた道を見つけることができた。

 休む間を惜しんで、一行は山を登って行く。切り立った岩場が多い山道は歩きにくく、真珠穫りたちは何度もつまずき、足を滑らせて苦しげに喘いだ。

 手作りの山小屋が見えてきたところで、シアーズは小休止を指示して息を整えさせた。


「戸に石を投げて、様子を見よう。出てきた者が一人なら、捕まえて情報を聞き出す。中の者が怪しんでも、いきなり人質に暴力は振るうまい。様子が分かれば、一気に踏み込むこともできるだろう」

 真珠穫りたちが頷くと、シアーズは彼らに身構えさせ、小さな石を戸に投げた。

 出てきたのは、先日山道で襲いかかってきて、ミスタ・グリーンに胸を殴られた狸獣人の若者だった。左右を見回し、何もないと見ると「気のせいか」と、呟きほっと息を吐いた。


 シアーズは、左手の茂みに小石を投げ、その音に気を取られてそちらを向いた若者に駆け寄った。あわてて振り返る脇腹に拳を撃ち込み、体をくの字に曲げた首を脇に抱え込み、手で口を塞いだ。

「抵抗すれば、痛い目にあうことになる。おとなしくするか?」

 痛みからか、涙をにじませる若者の目を覗き込み、シアーズは感情が感じられない低い声で聞いた。若者は何度も、首を縦に振る。ゴードンたちの潜む茂みに、彼を引きずって行く。

 ゴードンに身柄を引き渡すと、シアーズはため息を吐いた。冷徹な人間の演技は、とても疲れる。何だか自分が、ならず者になったような気分だった。やはり、訓練と実践は違うようだ。


「おい、小僧。俺の義娘と司祭は、無事なんだろうな。傷ひとつでも付けやがったときには……」指をぼきぼきと鳴らすと、真珠穫り二人に押さえつけられた若者は真っ青になり、首を横に振った。

「小屋には、何人いる? 武装しているのか?」シアーズが聞くと、若者は目をぎゅっとつぶり、歯を食いしばった。

「肩入れする相手を間違えると、いらん苦労をするぜ?」ゴードンは若者の上衣の首前を握り、力を込め絞り上げて行く。その顔は厳しく、こめかみには青筋が立っている。若者は目をきつく瞑り、絞まる喉に呻きを漏らしている。


「ミスタ、私に任せてくれないか?」

 シアーズは、ゴードンを制して手を離させた。ゴードンは不満そうだったが、一瞬で若者を無力化した手腕を思い出し、手を引いた。ただの漁船の船長とは、思えない。抗議の声を上げようとした部下二人を、目顔で黙らせた。


 シアーズは黙って、咳き込む若者の上衣をシャツごとまくった。素肌には、打撲の痣が無数に散っていた。ゴードンたちは、それを見て絶句した。肌色の方が少なかったからだ。シアーズは、若者が外に出てきた時から、体の動かし方で察していたが、良い気分ではなかった。

「君、名前は何というのかな?」

「……、ヤルミ」

「ヤルミ君、私はディランという、よろしく。この痣はテルースに?」

「そうだ……、そうです」

「敬語は使わなくていい。それで何故、テルースは君に暴力を振るったのかな?」

「……、こないだ、あんたたちに返り討ちにされた後、一発でのされた俺が役立たずだって、毎日殴られて蹴られて……、やられたのは、俺だけじゃないのにっ!」最後は泣き声になった。シアーズはなだめながら、背中をとんとんと叩いた。同情する気はなかったが、悪い仲間から手を切らせることは出来るかも知れないと思った。


「どうかな、村に帰って皆に謝るというのは。新しくやり直すのなら、受け売れてくれると思うが」

「……、でも、今まで散々悪いことやって……、今さら……」

「いや、反省してやり直すのに、早いも遅いもない。思い切るかどうかだ。私も口をきこう」

「お、お願いします。もう、こんな生活は嫌です。何でも、言う通りにしますから……」一瞬、シアーズは眉をしかめたが、村長が鍛え直すだろうと思い直した。ゴードンはシアーズに対して、ずいぶんと青臭いことを言う、と思ったが口には出さなかった。シアーズは、それを納得させる雰囲気を持っていた。


「では、 ヤルミ君、小屋には何人いるか教えてくれるかな?」 

「……、誰もいません、俺だけです」

「何だと、義娘と司祭は!?」ゴードンが叫ぶ。それを制して、シアーズは聞いた。


「どういうことかな? 説明してくれないか」

 

      ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「司祭様よ、あんたらは他人の為に尽くすのが義務だってな。せいぜい、俺の役に立ってくれよ。」テルースは、猿ぐつわをされ両手両足を縛られたベルナールに言った。テルースの目は興奮に濁り、鼻息を荒くしている。


 島の裏側の入り江から出発した、八人乗りの大型カヌーは帆を張り、滑るように進んでいる。

 テルースは、ナイフでベルナールの両腕、両ふくらはぎを少々深めに切った。傷口からは、早い勢いで血が溢れてくる。ベルナールは静かな眼差しで、テルースを見ていた。

「あんた、細すぎだ。こんな体じゃあ、すぐ血が無くなるぜ。まあ、それまでに【海の魔物】が来てくれるだろうがよ」そう笑い、ベルナールの両手を縛ったロープに、別のロープを結びつけた。


「ボジェクが窓から覗いてたんぜ。司祭様、一晩中俺のジェミィの手を握って、イチャイチャしてたんだってな」テルースの言葉に手下の一人、すばしこそうな鼠獣人が笑った。

「仲良さそうだったさ。見詰め合っちゃったりしてさ。けひひ」

「と言う訳で、司祭様には俺の手柄に協力してもらうということで、よろしく。あんたを餌に【海の魔物】を呼び寄せて、俺様が退治してやる。【あいつ】を倒せば、ここいらで最強! だもんな。村の奴らも、俺の言いなりだ。それでジェミィ、【あいつ】を倒せば、お前も気の迷いなんか起こさず、喜んで俺のものになれるって寸法さ」

 手下に合図すると、三人の獣人の若者たちはベルナールを抱え上げ、船尾から海に放り込んだ。ベルナールは何とか顔を上げ、溺れるのを防ぎながらカヌーに曵かれている。彼の体から流れ出る血は、航跡を赤く染め始めた。

 両の拳を腰に当て、胸をそらして高笑いするテルースに、ジェミィは静かに言った。


「私は、【海の魔物】を憎むのを止めたの。今さら【あいつ】を倒しても、私をどうこうは出来ないわよ」

「ふん、そんなの知ったことじゃあない。お前の体を手に入れてから、皆に宣言すればいいのさ。それに、今まで【あいつ】と戦わなかったのは、これが手に入るのを待ってたからだ」

 テルースと手下の手には、ポケットから取り出した5インチ程の黒い金属の球体が、片手に三個ずつ、四人で合計二十四個乗っていた。


「こいつは、ガリアス軍で使ってる『爆裂丸』だ。一個でも強力なのに、二十四個もある。ガリアスの密猟者が、あんまり村の内情や漁場のことを知りたがるからよ、こいつと交換で教えてやったのよ。【海の魔物】に全部使わなくても、逆らう奴らにも使えるからな。これで俺が、この辺の支配者だぜ!」テルースの目は、どこか遠くを見ていた。


「あなたは、可哀想な人ね」

 ジェミィは、欠片も動揺を見せず、何の感情も伺わせずに呟いた。

 テルースと手下たちは、ようやく何かがおかしいと気づき、背筋にかすかな寒気を感じた。


      ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 墓地の一郭、チムルの家系であるビェハル家と、ユーリの家系であるツレグ家のそれぞれの墓石の手前、平石が敷き詰められていた部分が剥がされて脇に寄せられ、地下納棺棚が口を開けている。一抱えもある壷棺が、それぞれの棚に並んでいるのが見える。


 グエンコ村長による連祷が墓地に響き渡り、両親と村民はこうべを垂れ、若者二人の天国への旅の安全を願った。チムルとユーリと仲が良かった若者たちが地下へ降り、からの壷棺を受け取り棚へ並べた。


 村民全員による詠歌が詠われ、その声は丘を越えて、村を越えて海へと響いて行った。


      ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 シアーズはヤルミの話を聞き、テルースを追いかけるために船に連絡をとることにした。ゴードンに言付けをし、アトレウ村の沖に船を回してもらうようにするためだった。


「伝言は、一等航海士のウセディグに頼む。内容は、『BS。かねての指示通り。投げ手は確保予定。アトレウ村沖で待機』だ」

「何の意味だか分からんが、奇妙な伝言だな。任せてくれ、急いで伝える。俺も乗せてもらうからな」

「あなただけにしてくれ」不満を言い立てようとする真珠穫りたちに、「それが、絶対条件だ」と厳しく言った。

 しぶしぶ了承したゴードンたちは、山を下りて行った。


「我々も急ごう」シアーズはヤルミを伴い、アトレウ村を目指した。

 なん……だと……。今回も、魔法の出番がない……。で・でも、次回はね、戦闘あるよ。


 そこに至る経過が、どうしても疎かに出来ない性分なのです。

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