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(仮)  作者: イオン水
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第9話 溜息

合流した爺は王子を見るとすぐに腰を折り「よくぞご無事で」と涙を流さんばかりに喜んだ。

一緒に来た領主息子という人と2人の兵も膝を折る。

姫も起きたらしく、半分寝ぼけた妖精少女の手を引いて現れた。


首輪が無い事と羽を隠していない事をみた美女さんは何も言わなかったがある程度察したようだ。

姫にも長い礼を尽くそうとしていた領主息子は「時間はあまりありませんよ」という美女さんの一言に短い礼をして共に後ろに下がった。

すぐに情報交換をする。


とりあえず翁の方は話がついて何人かの信頼できる人物に連絡を取ってくれているらしい。

街道には歩哨が居る為に兵を待機させ一部の兵で来たらしい。

王子の方も幾人かの領主と話は付けており翁を頼ろうとしていた矢先に僕達に出会ったという事を伝える。



王子「姫姉さまと爺はこのまま翁の元に向かってもらった方がいいと思う」


姫「王子はどうするのですか?」


王子「僕は話を取り付けている領主の下へ行き、姫と翁が立ち上がるのに呼応して兵を挙げます」


姫「一緒に翁の所へは?」


騎士団長「兵が集まらないうちに一箇所に集まるのは危険です」


爺「王子が話を付けている領主というのはどこですか?」


騎士団長「こことここと―」



地図に丸と三角を付けていく指揮団長。



騎士団長「丸が協力を必ず得れる領主。三角が兵は出せないが国王側には付かないと約束を取り付けれた領主です」


王子「三角は状況によっては兵を出すでしょう」


爺「丸の兵を集めると1500と言ったところですか」


騎士団長「2000近くはいくかと。三角は1000を越えないといった所ですね」


領主息子「翁も2000は集めると申しておりました」


爺「合わせて4000集まるかどうかという所か。後はどれだけ味方に付くかだが」


僕「敵はどれくらいの数が居るんですか?」


王子「近衛騎士団1000名、白の騎士団2500名、赤の騎士団2000名、黒の騎士団4000名、それに国政を掌握している有力貴族の一門とその取り巻きが10000名で合計20000といった所ですか」


魔王『ものすごい物量差だな』


騎士団長「それに王宮に頭を垂れる者達が数千といったところですね」


美女さん「多いですね」


騎士団長「そうですね。周りの領主を取り込んで増強しないと厳しいですね」


僕「一つ質問があるんですがいいですか?」



手を上げた僕にみんなが注目する。



王子「どうぞ」


僕「何で3つの騎士団で兵数に差があるんですか?」


王子「黒の騎士団は先のクーデター後に新設されました」


騎士団長「我らを裏切った褒美でのし上がったヤツが騎士団長に任命されてたんです」



騎士団長が苦々しく言う。

美女さんは僕を笑顔で見つめてる。


僕「人物像は?」


王子「有力貴族達に迎合する小物ですね」


姫「私も何回か合ったことがありますが、纏わり付くような嫌な視線を送る人でした」


騎士団長「大事な場面で自分の出世の為に王子と姫を裏切った忠義の欠片も無い屑です」


僕「嫌な奴なんだね。ごめん。話を逸らしましたね」



本当におぞましい事を思い出すように言う姫に「嫌な事を思い出させてごめんね」と言うと姫は少し微笑んで「たいしたことはありません」と言った。

それに安心して僕は騎士団長に先を促す。



騎士団長「ヤツは有力貴族に取り入り有力貴族と反発気味だった白赤両騎士団長を幽閉して両騎士団の兵を自分の騎士団に組み込んだのです」


僕「それで黒だけ数が多いんですね。今の白赤の騎士団はそれで誰がまとめているの?」


爺「白赤両騎士団の団長に自分の子飼いの者を置いているそうです」


僕「不満が多いだろうね」


騎士団長「素晴らしい両騎士団長を幽閉して、あのような能力が無いヤツラが上に立ってるという状況に怒りを感じている者は多いでしょう」


僕「じゃぁ何で誰も不満を言わないの?」


騎士団長「言えば自分は投獄されるのが目に見えてますからね」


僕「なるほどね」


―これは案外いけるかもしれない?


僕「兵を挙げるとしてすぐに騎士団が来ると思う?」


騎士団長「私ならここ(王都までの間にある大砦を指差す)に騎士団を配置しますね。ここは王都へ行く兵を止める事が出来ます」


僕「なるほど」


騎士団長「そうして周りの領主に呼びかけて兵を集めながら敵が来るのを待ち受けます。


爺「定石じゃな」


魔王『つまらん手だ』


―なら魔王ならどうするんだ?


魔王『大砦まで行きまわりの領主から兵を徴収する』


―一緒じゃないか


魔王『その後は大砦の防衛兵を残して全力で敵を蹂躙する!待つなど好かぬ!!』


―なるほどね


僕「黒の騎士団長の人間性を考慮に入れてどう動くと思う?」



王子と騎士団長と爺が考え込む。



爺「いくらあ奴が愚かでもこの大砦の重要性は理解できるだろうから大砦までは来るな」


王子「小心者なので3つの騎士団全部を全部連れてくるでしょうね」


僕「小心者なんですね。じゃあ8500を連れて来たとして、半分以下の約4000の兵に対して篭ってしまうかな?」


騎士団長「小心者ですからね。その大人数でも篭って出てこないでしょう」


王子「多分出てこないでしょうね」


僕「本当にそうかな?」


王子「といいますと?」


僕「4000と半分の上にその軍隊には王子と姫がいるんだよ?」



僕の言葉に王子と爺と騎士団長の三人が思案する顔になる。



僕「2人を捕らえるなり仕留めるなりしたらものすごい武勲だよね。そんな武勲を虚栄心の塊の人が放って置くかな?半分以下の兵数だよ?」


爺「確かにそれは出て来ざるを得ないですな」


王子「それでも自分を危険にさらすような真似はしないんじゃないかな?」


騎士団「白赤合わせて4500、近隣の領主を合わせてこれを使って来るでしょうね」


僕「自分の5500は出さない」


騎士団長「出しません。自分の騎士団は傷つけないようにし、両騎士団で取った武勲を自分の手柄にしようとします」


爺「いっそ両騎士団の数を減らして、いずれ自分の騎士団に吸収して1つにしようとか考えるじゃろうな」


僕「なら都合がいいね」



笑う僕に「どういう事だ?」とみんなが首を傾げる。



僕「相手が両騎士団を出してくれるんだから取り込もう」



ぽかんとする一同。

美女さんだけ相変わらずの笑顔だけど。



僕「両騎士団は騎士団長を幽閉されて怒りを覚えているからね」


騎士団長「その騎士団長の命を盾にされているので、こちらになびくく事はありませんよ」


僕「別に僕らと共に戦ってもらう必要は無いですよ」


王子「どういう事でしょう?」


僕「両騎士団の今のトップは騎士団に受け入れられていないと思います」


王子「そうですね」


僕「なのでその2人を倒して残りの騎士団には傍観に徹してもらいましょう」


王子「は?」


僕「王宮は騎士団長の命を盾に取っていますよね」


爺「そうですな」


僕「実際に処刑すると思いますか?」


騎士団長「もし両騎士団が裏切ればするでしょう」


僕「今のままだと出来ませんよ」


爺「どういうことですかな?」


僕「今は両騎士団で4500、黒の騎士団の一部もあわせると5000以上の兵が両騎士団を慕ってます。その状況で処刑すれば、それだけの兵を敵に回すということです」



僕の台詞に感心する王子と爺と騎士団長。

姫がじっとこっちを見ている事に緊張する。

美女さんが微笑んで見ているのは僕を査定しているようでもっと落ち着かない。



魔王『美女は確実にそうだな』


―だよね!



僕「ですので敵に回れば処刑されますが、戦闘放棄なら処刑しようが無いんです」


王子「なるほど!黒の騎士団も奴の子飼いは100程度で他は元々両騎士団の騎士。それが傍観を決めたら勝機はあります!」


―それだけしか子飼いが居ないの!?


魔王『張子の虎だな』


僕「とりあえず当面は2つの騎士団をおびき出す方法を考えましょう。あまり大砦に近ければこちらが危ういのですが、適度の距離でいい場所はありますか?」


騎士団長「大砦から馬で半日ほどの距離に小砦があります。大砦を取れない状況では拠点にするに適した場所はここですね」


僕「爺、翁の場所から小砦までかかる時間は?」


爺「そうですな。朝から向かって1日といった所ですか。翌日には小砦につくでしょう。ただ翁もまだ兵を集めて居ないと思いますので集めるのに2日見て3日ですかな」


僕「王子が兵を集めて着く時間は?」


騎士団長「今から向かって兵を集めるのに3日。小砦まで2日で5日目には付けるかと」


僕「小砦の兵数は?」


騎士団長「200という所でしょう」


僕「近隣領主が小砦を守る可能性は?」


爺「あっても500には届かないでしょうから、全体で700といった所ですね」


僕「王宮から騎士団が小砦に来るまでの時間は?」


王子「翁が兵を集めているのが伝わるのに1日。出陣の準備などがあるので先発隊で数百ほどが飛ばして到着に半日。本陣が大砦に来るのは3日後くらいですね」


僕「爺。一日で落とせますか?」


爺「厳しいですが出来るでしょう」


僕「翁の兵力でどうにか先に小砦を落としておくので、ここで合流しましょう」


王子「はい」


僕「ではその後の方針はあった時にきめましょう」



そう言うとみんな慌しく動き出した。

「ほう」と息を吐くと姫と目が合った。

調子に乗って話していた事に恥ずかしくなって照れ笑いを浮かべると「そんなことはありません」と言ってくれた。



姫「本来なら関係ないのに一生懸命考えて下さってありがとうございます」


僕「いえ、気にしないで下さい」


姫「何もお返しできませんが、この国が平和になった時は出来る限りの事をします」



深々と頭を下げる姫に困惑する。

そこまで大した事を考えてるわけじゃないのに!

一生懸命な姫を少しでも助けたいと思っただけなのにそういう事を言われてあせった僕はつい口を滑らせた。


僕「じゃぁ僕は姫と仲良くなりたいです」


姫「え?」


―何をいってるんだ、僕は!


僕「えっと、一国の姫に対して大それた事ですが、僕は姫と仲良くなりたいんです」


魔王『一応、我も一国の王子ではあるんだがな』


―確かにそうだった!


姫「えっと、あの―」


僕「妖精少女とかとは笑っているのに僕とは目を合わせてくれないのが悲しくて。こういう形で言うのはどうかなとも思うんですが、出来れば仲良くできたらなぁ…とか思ってみたりして」



あせって取り繕うとして口を滑らせまくった僕の台詞は尻窄しりつぼみになる。



―何を口走ってるんだ~~~~


姫「嫌ってなど、その、あの、私も緊張してしまって…」


僕「え?」


姫「あの、よ、よろしくお願いします、」


僕「本当ですか?やった~」


魔王『まさに、大 逆 転 !』


―なにそれ?


魔王『わからん。何となく言わねばいかぬ雰囲気だったのだ』



うれしさに姫の手を掴んで握手をすると姫は「あ、あの、準備がありますので」と顔を真っ赤にして走っていってしまった。

恥ずかしいといってたし、手を繋ぐのはいきなりだったかな?



魔王『まさかあそこでああ来るとは。鈍いと思っていたがやるな』


―まさか僕もあんな事を言ってしまうとは思わなかったよ


魔王『まぁ結果的には良かったのではないか』


―そうだね。友達になりたいとずっと思ってたし


魔王『は?』


―出来れば仲良く話せる位に友達になりたいよね


魔王『…姫の気持ちを確かめたのではないのか?』


―そんなつもりは無かったけどね。結果的に僕の事を嫌ってないって分かってよかった。


魔王『やはりお前はダメだ』


―え?何で?


魔王『いや、逆にすごいよお主は』


―まぁ僕自信も姫と旨く仲良くなれてすごいと思うし信じられないよ。



魔王がため息をつく。

最近増えてない?


心配事でもあるのかと思ってよくよく考えたら、魔王の国も後継者争いで大変だったのを思い出した。



―早くここの問題を片付けて妖精少女を送ったら魔王の国の事も考えようね


魔王『そうだな』



そういうと僕も急いで準備を始めた。

誤字修正

案外しけるかも → 案外いけるかも

塊の人が頬って → 塊の人が放って

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