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(仮)  作者: イオン水
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第8話 少年

僕を斬りつけようとしていた男が何かに弾かれたように転ぶ。



妖精少女「お兄ちゃんを助ける!」



仲間が急に転んだことに意識が行った相手の剣を押し戻しそちらをみると

妖精少女が馬車から身を乗り出し指を突き出していた。



僕「隠れてるんだ!」


魔王『もう遅い!』



妖精少女に走り寄ろうとした所、別の男に妨害されてしまう。



―このままでは妖精少女が!


姫「私が守ります!」



妖精少女の前に庇うように立ち懸命に剣を掲げる姫。

2匹の子狼も健気に2人の前に立ち威嚇をする。



―だめだ!



この集団は普通の野盗なんか足元に及ばないほどの使い手だ!

姫では手も足も出ないうちに殺されてしまう!!


揺れる剣先を懸命に敵に向ける姫。



―だめだだめだ!



目の前の敵に阻まれ2人に届かない。

姫ににじり寄る男達。



―このままでは守れない。どうすれば!


魔王『後ろから来るぞ』



自分の身すら守れない。



姫「私が相手になります!」



懸命に震える声で叫ぶ姫の声がより一層僕を焦らす。



―何か手は!


魔王『後ろからもくるぞ!』


姫に斬りかかろうとする男が見える。

僕は無我夢中で鍔迫り合いをしている相手を力任せに押した。

すっるとバターでも切るような感触で相手の剣が2つに切れる。

あまりの事に驚く相手の男をそのまま押し倒し姫に向かって走る。



―間に合わない!!


謎の男「待て!!」



その一言に全ての男が動きを止める。

良く分からないがその隙に姫の前に躍り出た僕は剣を突き出した。



謎の男「もしかしてその声は第2王女様では!?」



黙っている僕達を無視して謎の男は剣をしまうと跪く。

すると周りの男達も剣を収め跪いた。

根元から折れた剣を突きつけた僕は何がなんだか分からずにキョトンとする。



姫「貴方達は?」


謎の男「私は第4王子直属の騎士隊長です」



信用して大丈夫かな?と姫を見ると頷いた。



姫「確かにあの顔は第4王子と一緒にいる所を何回か見たことがあります」


騎士隊長「姫とは知らずご無礼を働いた事をお許しください」


姫「このような暗闇の中では仕方ありません。誰も―」



と周りを見渡して負傷者が居ないことを確認し



姫「誰も怪我をしなくて幸いでした」



しっかりと話す姫を見てさっき僕と話していた普通の女の子が遠くへ行ってしまったように感じた。



―ちょっと寂しいな



と思ってたら姫が震える手で僕の手をそっと握ってきた。

見知った顔だったとしても先ほどの恐怖は中々消えないのかも知れない。

僕も何も言わずに姫の手を握り返した。







魔王『いい所すまんが、何時まで折れた剣を突き出してるのだ?』


―べ、別に忘れていた訳じゃないんだからね!



無意識に込めた魔力により刃が折れてしまったようだ。

僕は出来るだけ何でも無いように装いつつも、どうしようか一瞬だけ迷って折れた剣を鞘に納めた。






――――――――――





謎の集団は第4王子直属の騎士団らしい。



騎士団長「爺はどちらに?」


姫「翁の所へ支援を要請に行きました」


騎士団長「お一人でですか?」


姫「いえ手馴れたものが一人、一緒に向かいました」


騎士団長「そうですか。ああそうだ、まずは我々の陣営へお越しください」



その申し出に僕を握る姫の掌に力が入る。



魔王『用心しろ』


―どういうこと?


魔王『顔見知りだとしても敵である可能性はぬぐえない』


―第4王子付きの騎士団長なのに。


魔王『脅されたり敵に降ったりしているかもしれない』


―そんな事が。


魔王『ありえない事ではない。相手の話に乗らず様子をみろ』



力が入る姫の手を優しく「大丈夫だよ」と伝える為に優しく握る。

伝わったかは分からないけど。



僕「いいでしょうか?」


騎士団長「何か?」



僕は騎士団長に自己紹介をする。

とある地方の貴族の三男で見聞を広める為に旅をしている。

妖精少女の正体は羽が隠されておらず精霊魔法を使ったのを目撃されているので隠しようが無く、旅の途中で出会って一緒に旅をするようになった僕の妹のような存在と説明。

そして爺と共に向かったのは僕の従者であることを伝えた。



僕「僕達は爺達が戻るまでここを離れる訳にはいきません」


騎士団長「それは何時頃戻られる予定なんでしょう?」


僕「一昨日の夜に出ましたので早ければそろそろ戻ってくるかと」



僕の嘘に姫の掌が震える。

もし相手が敵に通じている場合はこの事を聞いたときに何かの反応が見られるだろう。

出来るだけ警戒していない風を装いつつ周りの騎士も注意深く観察する。



騎士団長「分かりました。では我々も合流して待ちましょう」



騎士団長は少し考えるそぶりを見せるもすぐに頷いて周りの騎士達に指示を出す。



魔王『まだ安全と決まったわけじゃない。油断はするな』


―わかった。



慌しく一人の騎士が森の奥へ走って行く。

周りに注意を払いながら姫に小声で話しかけ「知り合いでも敵になっている可能性もあるので気を抜かないように」と伝えるとすぐに小さく頷き返してきた。

その可能性を姫も考えていたようだ。頭がいいなぁ。

僕は折れた剣を鞘に戻し姫の剣と交換してもらう。

そうしていると騎士団長が近づいてきたのを感じた2人は僕の近くに寄ってくる。

妖精少女は服のすそを、姫は剣の交換に離していた手を握ってくる。



騎士団長「すぐに我々の仲間が参ります」


―相手は友好的な感じだがもし敵ならこれ以上増える前に逃げたほうがいいのかな?



警戒心を露にした僕達を見て騎士団長が肩をすくめる。



騎士団長「安心してください。私達は味方です」


魔王『まだ信用は出来ない』


騎士団長「といっても今のような敵の多い状況では難しいかもしれませんが、これからこられる方にお会いになれば信頼していただけると信じております」


―この流れからしたら第4王子か。それとも別の信頼できる人物か?


魔王『捕まえた美女と爺を目の前にして降伏を強制してきたりな』


―なんでそんな怖いことばかり思いつくの。


魔王『魔王だからな』


―確かに!


魔王『ただ、そういう最悪の状況も想像できないと様々な対処法は思いつかない』


―魔王がまじめなことを言ってる。


魔王『我はいつも真剣だ』






――――――――――






少しすると数人の人物が僕達の馬車に近づいてきた。

その人物をみた姫はハッと息を呑む。



姫「第4王子!」



大人に囲まれた相手は少年だった。



魔王『ほう、あれが』


―僕と同じくらいの年だね


魔王『だが威厳は奴のほうが数段上だな』


―悪かったね。



第4王子と僕は互いに自己紹介をする。

どうやら先ほど走っていった騎士にある程度話は聞いていたようで、妖精少女を見ても驚くことなく微笑んでいた。

その笑みはどこと無く姫に似ている。



王子「姫姉さまを助けて下さったそうで、お礼を申し上げます」


僕「い、いえ」しどろもどろ


王子「君もありがとうね」



妖精少女にもも礼を言う。

王女の後ろから王子を眺め「うん」と呟く妖精少女。

どっちが守られてるのか分からない。



姫「よくご無事で―」


王子「姫姉さまこそ」



お互いに今までの状況を話す。


王子は裏切りの事実を知り姫の救出へ向かうも間に合わず、逆に敵の前面におびき寄せられ追い詰められて逃げ落ちる結果となったらしい。

何とか騎士団長を含む20名ほどの騎士と逃げ切ることが出来き身を隠しながらか信頼出来そうな領主の館を極秘裏に回っていたらしく、翁の所に向かう途中だったようだ。


姫は急な裏切りで背後から攻撃を受け動揺している所を敵に攻撃され挟撃の形となり軍は瓦解。

逃げ延びて山の麓に拠点を構え仲間達と時期を探っていた所、居場所がばれてしまい攻撃を受けた。

みんなは姫の脱出の時間を稼ぐ為に敵と奮闘をし、その間に爺と2人で脱出した。

その後は一時撒いたと思った敵兵に見つかり追いかけられている所で僕達に出会ったらしい。



お互いの話が終わった後に爺がもうすぐ戻ると言うのは嘘で、早くても明日の夜けぐらいだと説明する。

それを聞いた騎士団長は「あの場合は当然でしょうな」と僕の嘘に頷いてくれた。


戻ってくるまで丸1日あるということで騎士達は野営の準備を始めた。

とはいえ天幕などがある訳でもない。

人数も居ることだし見張りも十分つけると言うことで火が2つほど焚かれた。



小さな光を見た姫がほっと息を吐く。



王子「見張りは騎士達が交代で行いますので今日はゆっくりお休みください」


姫「ありがとう」


王子「ただ我々より信頼のおける人物が居るようですが」



王子は未だに繋いだままの僕と姫の手を見て笑顔で言う。

それを聞いて繋いだままだったのに気が付いたのかぱっと手を話で俯く姫。ちょっと残念。

僕は気が付いていたけど手を離すのが惜しくて黙ってただけなんだけどね。

と、あいた僕と姫の手を掴み「私も繋ぐ」と言う妖精少女(可愛い!)



王子「暖かい飲み物を用意させますのでどうぞ火のそばへ」



笑顔の王子に促され焚き火へと歩みを進めた。







――――――――――






姫と妖精少女は女性と言うことで馬車で寝る事になった。

僕は馬車の横で剣を振りながら一人考える。



―まさか第4王子と出会うとはね。


魔王『確かに低い確率ではあったが同じ相手を目指しているなら必然と言えよう』


―でもこんな幸運があるなってまるで物語みたい


魔王『だがそういう幸運にも恵まれているからこそ何かを成し遂げることが出来るんだ。だからこそ後に語り継がれるのだろうがな』


―確かに



剣を振ってると騎士団長が近づいてきた。



騎士団長「鍛錬ですか」


僕「はい」


騎士団長「剣は誰に教わったのですか?」


僕「従者です。今、爺と共に行っている」


騎士団長「さぞお強い男性なのでしょうね」


―あれ?美人さんは女性だって言わなかったっけ?


魔王『言ってないな。面白いし黙っておこう』


騎士団長「よければお相手いただけませんか?」


僕「あ、はい」



別の事に気を取られていた僕はつい返事をしてしまった。

さすがに妖精少女と姫が寝ている横で剣をぶつけるわけにも行かず少し離れた場所で向かい合う。



騎士団長「闇夜の戦闘経験は?」


僕「少しだけ」


騎士団長「そうですか。では軽く流しましょうか」



騎士団長は軽く剣を構えると僕に笑いかけた。



魔王『いきなり来るぞ。下がるなよ』


―え?



魔王のつまらなそうな一言に聞き返そうとした瞬間に騎士団長は一気に距離を詰める。

僕は魔王の「下がるな」という一言を信じてすぐに前に出る。

前に出た僕に軽く眉を動かした騎士団長は剣を振り下ろしてくれる。

それに剣を合わせながら押しつぶそうとする騎士団長の力に負けないように押し返す。

ふと「力押しだけでは引かれたときに体が泳いで危ないですよ」という笑顔の美女さんの言葉が浮かび力を少し緩める。

急に僕が力を緩めた事に体が流れそうになりながらも力の方向を変えて僕を突き飛ばそうとする騎士団長。

その力を流しつつ互いの体の位置を入れ替える。

彼我の距離はどちらかが一歩踏み出せば剣が届く。



―待つ必要は無い!



僕は一歩踏み出し剣を振るう。

僕の剣を弾いて斬りかかかりそれを剣で受け流し再度剣を振い、弾かれ、流され、避け、受けられる。

互いの剣が何度も何度も重なり合う。

互いの剣が弾かれた瞬間に距離をとる。

気合を溜め再度飛び込もうとした時―



王子「そこまで!」



声に動きが止まる。

見ると王子と姫と妖精少女がそばまで来て見ていた。



―あれ?寝ていたんじゃ?


魔王『近くであれだけ騒がしければ冬眠中の獣でも飛び起きるだろう』


―そんなに煩かった?



一歩引いて剣を収める騎士団長を見て僕も剣を収める。



王子「素晴らしい剣術ですね」


僕「いえ、ありがとうございます」テレ


騎士団長「いえ、騎士団にもそこまで使えるのは中々いません」


王子「これほどの使い手がいたとは」


騎士団長「彼に剣を教えている従者殿はさらにお強いらしい」


王子「なんと!」



僕を囲んで褒め称える王子と騎士団長。



―誉められ慣れてないのでもう勘弁してください。


魔王『これぐらいでいい気になるな』


―その毒舌の所為だからだからね!




周りで見ていた騎士にも解散が告げられる。

どうやら見張り以外の者は僕達の仕合を見ていたらしい。

ものすごく恥ずかしい。



騎士団長「騎士の剣を押すだけで2つにしましたが、あれは?」


―魔力の事は言っても大丈夫かな?


魔王『それくらいならかまわんだろう。珍しいとはいえ人族でも出来る奴はいる』


僕「剣に魔力を通して切れ味を増やしました」


騎士団団長「魔法剣士なのですか!」


僕「いえ、そんなすごいものではありません」



持ち上げられるのが照れくさくて頭をかく。

妖精少女が「お兄ちゃん強かったね」と膝に抱きついてきた(可愛い!)

姫は少し離れたところで見ていたが僕と目が合うと「そろそろ寝ましょう」と妖精少女を呼んで手を引いて行ってしまった。



―嫌われてしまったかな


魔王『…なぜそう思う?』


―目を合わされるとそらされるし、近くに行くと身を強張らせるし


魔王『そう思うならそうなのではないのか』


―そっか。。。



凹んでる僕に魔王の「やれやれ」という雰囲気が伝わってくる。

呆れなくてもいいじゃないか。



―少しくらい仲良く出来たらいいな


魔王『ソウカ。ガンバレ』


―ありがとう魔王



滅多に無いあまりにも優しい言葉に勇気付けられる。

激しい運動で乱れた呼吸は戻りつつある。

目を瞑って馬車に寄りかかる。火照った体に夜風が涼しい。



―美女さんと爺は無事かな。



そう思ったときに騒然とした音が聞こえた。

すぐに駆け寄ってくる王子と騎士隊長。



騎士団長「見張りをしていた兵が人影を見たようです」


僕「敵ですか?」


騎士団長「分かりません。ただ用心は必要です」



緊張した瞬間、周りの兵が剣を抜いた。

一人の人物が歩いてくる。



美女さん「ただいま戻りました」


僕「美女さん!」



周りの兵は緊張を解かないものの笑顔で悠然と歩く美女さんに困惑している。



騎士団長「お知り合いですか?」


僕「爺さんと一緒に行った人です。こんなに早く何かありましたか?」


美女さん「無事戻ってきました。爺様と他の兵も居ます」


僕「もう行って返ってきたの!?」



明日の夜になるんじゃなかったの?とい疑問に笑顔で返す。

手短に王子と騎士隊長に挨拶をすると「とりあえず皆さんを呼びますね」と言い騎士隊長と数名の騎士を連れて森の奥へ消えていった。

誤字修正

魔王「後ろから来るぞ」 → 魔王『後ろから来るぞ』

話しかけ知り「合いでも → 話しかけ「知り合いでも

恵まれているからそこ → 恵まれているからこそ

だからそこ後に → だからこそ後に

繭を → 眉を

気合を貯め → 気合を溜め

そんなすごいものではなりません → そんなすごいものではありません



追加

僕が折れた剣を構えているという状態を魔王につっこまてるシーンで「何故折れたのか」などを追加。

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