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(仮)  作者: イオン水
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第72話 欲しい人材

僕がその知らせを聞いたのは、2日前の日鉄にってつ初刻しょこく(13時頃)の事だった。

姫の寄宿舎にて、姫の騎士団員達と共に訓練をしていた僕は―



―あれ?このくだりを何処かで聞いた事があるような…



姫の寄宿舎で訓練を行っていると、騎乗した人物が5名程、姫の騎士団寄宿舎に入ってきた。

全員の服装から、姫の騎士団員で、そしてその先頭にいるのは美女さんのようだ。



―何で美女さんが?



現在、美女さんは南国の第三王女を迎えに国境まで出向いている―はずだ。

数日前に出立したので、すでに南国の第三王女と合流して此方に向かっているはずだとしても、まだ王都に戻ってくるような時間では無い。

無いはずなのに、その美女さんが僕の方に馬を進めてくるのだ。



僕の近くまで来た美女さんは、馬を下りると「ただ今、戻りました」と言った。

「お帰りなさい」と返して、僕は疑問を口にした。



僕「お迎えに行ってたのでは?」


美女さん「それは―」



美女さんが説明をしようとした所で、「それはボクが説明しよう」という声が割り込んだ。

声の主は美女さんの後ろに立つ、一人の姫の騎士団員―の格好をした、見慣れない人物だった。

その人物は胸を張り「ハジメマシテ。ボクは南国の第三王女って言うんだ」と挨拶すると、右手を差し出した。


「え?」と戸惑う僕に、南国の第三王女は「あれ?言い方が悪かった?」と首を傾げると、「ボクの名前は南国の第三王女。ヨロシクね!」と言い直した。

その間も右手は差し出したままである。



―いや、挨拶の仕方じゃないから!!


魔王『これはこれは―




僕が戸惑ったのは、目の前の女性が南国の第三王女だったからではない。

その事も驚きではあったのだが、それとは違う事に驚いていたのだ。



”話し方”と”見た目”のギャップに戸惑ったのだ。


ここに来て”ボクっ”登場と言うのは、まあ良しとしよう。

そろそろ一人くらい欲しい所だった。

妖精少女辺りが”ボクっ娘”だったら、それはそれでとてもハマリ役の様な気もするが、妖精少女の可愛らしさはそんな事では揺るがないので、「一人称がどうこう」というのは問題ではない。

逆に今更、妖精少女が「ボク」とか言い出したら、違和感が拭えないだろう。

いや、それはそれで良いと思うので、結局はどうであれ「妖精少女は可愛い」という事で、この議題を満場一致で終了しても、どこからも異議は出ないと確信している。



さて、では南国の第三王女の何がどうなのだ、と言う話である。


南国の第三王女の「ボク」は、なかなか良い。

元気に話す感じも「ボク」と言うのにとても似合っている。


話は少しれるが、クールなキャラが「僕」と言うのも捨てがたい。

元気な”ボクっ娘”とクールな”僕っ娘”、それぞれに良い所があって甲乙付け難いのは仕方ないとして、それでもどちらかを選択するという場面が来たらどうするのか?


人は選ばなくてはいけない時を必ず迎える。

「そうなった場合は、どちらを選ぶのか?」という話である。



個人的にはクールな”僕っ娘”だろうか。



何度も言っている様に、どちらも甲乙付けがたい。

あえて選択するなら、という場合である。

なぜ”僕っ娘”なのか。

”ボクっ娘”は、それはそれで王道ですばらしい。

元気な女の子が「ボク」と言うのは、とてもしっくり来る。

その確立された様式美は、ただただ感嘆の声しか出ないだろう。


しかし僕はここではあえて、”僕っ娘”を選ばせてもらう。

なぜなら「クールな女の子」という、それだけでもキャラ付けとして十分どころか十二分だというのに、その上で”僕っ娘”というのがプラスされるのである。

その『クール+「僕」』というギャップを持って、”僕っ娘”を今回は選ばせてもらった。



で、南国の第三王女なのだが、彼女は”ボクっ娘”だ。

それは問題ない。

僕は先ほど”僕っ娘”を選んだが、それはあくまで「個人的な趣味」の話であり、”ボクっ娘”が良いのも事実なので、南国の第三王女が”ボクっ娘”というのも問題は無い。


だがあえて言わせていただこう。



「その容姿でボクっ娘は無いだろう!」と。



南国の第三王女は僕たちと同じくらいの年頃だ。

少し日焼けした肌も、南国の第三王女の元気さを物語っていて、とても魅力的だ。

日焼けし過ぎて無いあたりにも、好感が持てる。

黒く長い髪というのも、良いと思う。

南国に住む女性は、何となく「金髪」のイメージだったのだが。

黒髪というのも素晴らしい。

その黒髪が日に焼けて痛んだりしていない所など、「さすが王族の姫君」と言わざるを得ない。

長い髪で”ボクっ娘”というのも、この場合は問題では無いだろう。

髪という女性らしさの象徴の一つである部分を延ばしている事により、元気な”ボクっ娘”という素晴らしいファクターに、自分自身でも意識していない「女性らしさ」というのが加味されるのだ。


さらに考えてもらいたい。

先ほど「自分でも意識していない」と言わせてもらったが、実は「意識している」としたらどうなると思う?


「ボクは女の子なんだよ!」という自己主張をする”ボクっ娘”。

元気な”ボクっ娘”が「女の子らしくなりたい」とか「女の子扱いされたい」と髪を伸ばしている。


それが自分の為だったりしたら、どうする?



言葉に出来ないだろう。



それだけでもわかるように、髪の長い”ボクっ娘”というのは、プラスになりこそあれ、マイナス要素などどこにも見当たらないのだ。

もちろん髪の短い”ボクっ娘”が素晴らしい事は、ここであえて言う必要は無いだろう。



皆さんに「僕が思う”ボクっ娘”」について、認識を統一してもらえたと思う。

もちろん”ボクっ娘”はいろいろな組み合わせがありその可能性は無限大なのだから、色々な考えがあってしかるべきでだ。


だが、今は僕が語る物語で、僕視点で話が進んでいるので、ここは僕の認識をあえて理解してもらったのだ。



さて、そろそろ南国の第三王女の問題点を上げよう。


美少女―いいよね。

日焼けした肌―健康的だね。

長い黒髪―素晴らしい。


ものすごく大きな胸…



いやいやいやいや、大きさにも限度があるだろう!



背格好せかっこうからすると、南国の第三王女の着ているのは、美女さんの予備の制服なのだろうか。

美女さんもなかなかなモノを持っている。

大きさで言うと「美女さん>有力貴族の娘>姫」と言う感じだ。

正確には「美女さん>>>有力貴族の娘>姫」だ。

姫の胸が無いという訳ではない。

どちらかと言えば平均的といえるだろう。


今までは女性の胸について、あえて触れてこなかった。

何故なら女性の胸は、大きさではない。

というか、僕は別に胸にそこまで思い入れは無い。

では何故、こんな話をしたかというと、美女さんが素晴らしいモノを持っているということを分かって貰うためである。


その美女さんと南国の第三王女が並んでいると余計に分かるのだが、「南国の第三王女>>>美女さん」なのだ。


大きすぎる。


美女さんに借りただろうその服に胸が入りきらず、結構な部分のボタンが空けられているのだ。

中に別の服―同じように黒い衣服を着ているために、胸が直接見えている、という事は無い。

馬に乗ってここまで来たのだから、その速度では町で見かけた人などは「制服のボタンが閉じられていない」事など気が付かなかっただろう。

僕もしっかりと南国の第三王女を見るまでは、見てもその胸に注目するまでは気が付かなかったくらいだ。


いや、そんな事はどうでも良い。

今はそんな事をいている場合ではないのだ。


「何でその胸で”ボクっ娘”なんだ!」という話である。


別に「胸が無い子しか”ボクっ娘”は認めない」とか、そんな器量の狭い事を言うつもりは無い。

逆に言わせて貰うと「こう見えても女の子なんだから、実は僕は胸があるんだ!」と「普段は気が付かないけど、アピールされて良く見たら意外と豊かな胸が!」みたいな状況は「どんとこい!」なのである。


しかしモノには限度がある!


その大きさで”ボクっ娘”と言うのは、どうなのだろうか。

色々間違っているのではないのだろうか?




いや、逆に考えろ。


南国の第三王女は小さな頃から「ボク」と言い続けて来たのだろう。

まさか生まれた頃から胸が大きい訳は無いのだし、成長するにあたって、ここ数年で発達してしまった、と予想する。

そこから導かれる回答として「自分の中の”ボクっ娘”と、日々、発達していく体との葛藤かっとう」と「しかしそれを回りに悟らせないように普段通りに振舞う姿」というのを考えると―






―それはそれでぐっと来るものがあるのである。』


―うん。魔王、自重しろ!



何、僕の言葉っぽく長々と語ってるのさ!?

言っておくけど、僕はそんな事考えてないからね。

確かに、一瞬胸の大きさに驚いた感は否めないけどね。



―前回と前々回に、散々暴走したばかりでしょ!?


魔王『うむ、あれが中々楽しかったのでな』


―自重しろ!



魔王の暴走とキャラ崩壊が半端無はんぱない。

このキャラ崩壊の原因の一端が、僕との影響と言われるのは納得できない物がある。

少なくとも僕は、人生の中でここまで”ボクっ娘”について考えたことなど無い。


そろそろ、本編をちゃんと進めないと、本気で怒られる。

いや、誰に怒られると言う訳でもないのだが、何となく心苦しすぎて仕方ない。

「あれ?こんなに脱線するつもりは無かったんだけど、思ったより酷かった」と言う感じである。


とりあえず、もう魔王の事は本当に「当面は無視する方向」で進めよう。



僕はとりあえず南国の第三王女の挨拶に「若と言います」と言いながら、相手の手を握る。

それに南国の第三王女の眉がピクッと動くのが見えた。

手を握ったままの僕がそれに気が付いたことに、南国の第三王女も気が付いたのだろう。



南国の第三王女「ああ、まさかこんなにすぐに握手をしてもらえるとは思わなかったから」



視線をそらして握手した手を見ながら言った。



僕「?」


美女さん「王族の方から差し伸べられた手を、おいそれと触れることなど出来ませんから」



美女さんの言葉に「ああ」と思い至る。

確かにそれはそうだ。

あまりにも南国の第三王女がフレンドリーだったので、何も考えずに握り返してしまった。



僕「それは…すみません」


南国の第三王女「いや、気にしないで」



かしこまられるのは、それでそれで悲しいものだしね」と南国の第三王女が笑った。

魔王が『本当にそれだけなのか?』と言うのに「ん?」と反応してしまう。

無視しようと決めていたのに、やはり完全には無理のようだ。



魔王『本当に握手されたことに対してだったのか、と思ってな』


―どういう事?


魔王『握手と言うより、お主の名前に反応したように見えたのでな』



魔王の言葉に思い返して見たが、南国の第三王女が反応したのは、僕が南国の第三王女の手を握る前だったと言われたら、その様な気がしない事も無い。



―でも、僕が南国の第三王女の手を握ろうとする動きに反応したんじゃないの?


魔王『…かもしれんな』



『気にしすぎか』と言って黙り込む魔王。

そのあまりのまじめな雰囲気に「魔王、自重しろ」とは言えず、僕も黙り込む。



南国の第三王女との挨拶は終了したが、なぜ南国の第三王女がここに居るのか、というのが分からない。



南国の第三王女「それはボクが望んだからだよ」


僕「南国の第三王女が?」



「そうだよ」と頷く南国の第三王女。



南国の第三王女「一日でも早く、姫の騎士団を見てみたかったんだ!」


僕「姫の騎士団を、ですか?」


南国の第三王女「うん。女性だけの騎士団なんて聴いた事も見たことも無かったからね」


僕「だからと言って、別に他の人たちと来ても、2日程しか違わないでしょう」


南国の第三王女「その2日が重要なんだよ!」



もし普通に来たらどうなるのか。

もちろん、国を挙げて歓迎する。

今もいたる所でその準備に追われているだろう。

しかも南国の第三王女は、后候補の最後の一人なのだ。

后候補が三人とも揃えば、それはもう大々的な歓迎式典等がもようされる。



南国の第三王女「そうなると立場上、姫の騎士団をゆっくり見ることなんて出来ないだろうからね」


僕「なるほど」



だからお忍び状態で2日も早く王都入りしたのだ。



南国の第三王女「だから2日間はボクが来た事は秘密にして欲しいんだ」


僕「それは、難しいですね」



他の大貴族たちに黙っておくのは問題ない。

でも殿下に黙っておくことは出来ない。



南国の第三王女「ああ、それは構わないよ。殿下にも挨拶するつもりだったしね」



大事おおごとにならずに、2日間自由に動けたらいいんだ」と南国の第三王女は言った。



僕「では殿下への連絡と、すぐに部屋を用意させましょう」



僕の言葉に南国の第三王女は「それについてお願いがあるんだけど」と言った。



南国の第三王女「できれば2日間は姫の騎士団のこの館に滞在したいんだけど」


僕「えっと、ここは王族の泊まるような設備は無いですよ?」


南国の第三王女「ああ、姫の騎士団員と同じ扱いでいいよ」



僕は困って美女さんを見た。

美女さんも南国の第三王女の後ろで、僕に「それは出来ません」と言うようにかぶりを振った。



僕「さすがにそれは無理です」



僕の言葉に南国の第三王女が「ええぇ!」と残念そうな声を上げた。



僕「姫の騎士団員と同じ扱いが無理、と言っているんです」



「希望にえるかどうかは、殿下と相談してからです」という僕に、南国の第三王女が「是非、お願い!」と言った。



僕「出来れば殿下とすぐに話をしたいのですが、急ぐと不審に思う者も出てくるかもしれませんので」



南国の第三王女に、殿下には「急ぎと伝えない」旨と「少し時間がかかるかも知れない」と言う事を説明する。

それに「わかったよ」と南国の第三王女は頷いた。



南国の第三王女「僕の希望を伝えてくれるだけで感謝だよ」



南国の第三王女がそう言ってさらに「うんうん」と頷いた。


僕は姫の騎士団員の一人に、殿下へ「時間が出来たら姫の騎士団寄宿舎まで来て欲しい」と連絡するように伝える。

その際に「内密に」と言い含め、殿下には「時間が空いたらで構わない」と伝えるように言った。

僕の言葉に姫の騎士団員は頷くと、敬礼をしてすぐに駆け出した。

それを見て「へぇ、ちゃんとしてるんだ」と南国の第三王女が感心したように呟く。



本来なら、南国の第三王女を連れて、直接、殿下の執務室へ行くべきなのだろう。

しかし南国の第三王女は出来るだけ、自身の存在を隠したいと希望している。

姫の騎士団寄宿舎が王城に直接連絡しているからといっても、誰に目撃されるか分からない。

それなら殿下をこっちに呼んだほうが、まだマシだろう。



魔王『一国の王を呼びだすというのも、本来なら有り得ない話だがな』


―そうだね



でも殿下なら、それくらいは許してくれるだろう。

僕は南国の第三王女をチラリと見やると、小さく嘆息した。


「姫の騎士団を見たい」というその一つだけで、御付の者をおいて自分だけで来るというその行動力はすごい。

すごいが、同時に困ったものだ。



―2日間の間、何事も無くすごすことが出来るのだろうか



何が、という事は無いが、どうも楽観視できる気分にはなれなかった。

最初に、本文中の【魔王『これはこれは―】の後ろの「』」が抜けているのと、【―それはそれでぐっと来るものがあるのである。』】の前で「魔王『」が抜けているのは仕様です。

その間の文章全てが魔王の言葉である、という表現の為にそうしました。


今回、物語は少しだけ進み、ました?


こんな感じの話になりました。

カッとなってやった、後悔しかしてない。


何故か南国の第三王女が登場しただけで終わってしまいました。

世界は不思議で満ち溢れています。


次回からは通常営業で進行する予定です。

…通常営業って何だっけ??



最後になりますが、「私自身は"ボクッ娘"も"僕っ娘"も、特に思い入れはありません」と言うことだけを伝えて、今回は終わりたいと思います。

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