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(仮)  作者: イオン水
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第70話 急展開・中編

馬を駆る。


南の大砦を数刻滞在しただけで出立しゅったつした僕達は、先に出ている南の大砦護衛旅団と領主軍の混成軍(言い難いので今後は「援軍」と言っていいよね!?)には、まだ追いついていない。

援軍も急いで小砦に向かっているようだ。

だが、今の所は援軍から脱落した兵も見かけてはいない事から、急いで進軍をしているが、僕達ほど無茶な進軍を続けている訳では無いようだ。



日入にちにゅう正刻(18時頃)、横を併走していた白の騎士団団長の「もうすぐ南の小砦です」という一言に、全軍停止を命じる。



―結局は援軍に追いつくことは出来なかった。



ここで追いつけ無かったという事は、援軍はすでに南の小砦で戦っている事だろう。

僕たちもすぐに行くべきだが、まずは状況の確認が必要なので、南の小砦の状況を確認する為に斥侯せっこうを放つ。

そして、その間に各部隊の状況の確認を行った。



白の騎士団団長「このまま行く事は可能ですが、長期戦は無理ですね」



各部隊の状況を確認した白の騎士団団長が僕に言う。

かなりの強行軍で此処まで来た。

白の騎士団団長の「このまま行く事は可能」と言うのは、「出来ない事も無い」と言う程度のものだ。

そして「長期戦は無理」と言うのは、そのままの意味である。

どの顔にも疲労の色は隠せない。

それは僕も白の騎士団団長も同じだ。

そして―



白の騎士団団長「姫の騎士団はここで退路の確保をお願いします」



僕が何かを言う前に、白の騎士団団長が言う。

姫の騎士団員の状況を鑑みて、「このまま戦場に行かせるべきではない」との判断だろう。

屈強な白の騎士団員でも疲労を隠せない程の強行軍。

女性である姫の騎士団員には相当なものである。

それでもここまで必死に付いて来てくれたのだ。

しかし、このまま戦闘、しかも対人戦闘は初めてとなると、無謀を通り越して無理だ。

「退路の確保」と言うのは、姫の騎士団員をおもんばかってのせりふだろう。

僕は白の騎士団団長の申し出に「わかりました」と頷きながら、目で感謝の意を伝える。



すぐに斥侯の情報が入った。



南の小砦は敵に完全包囲されている状態。

その数約一万。

援軍は包囲している敵と交戦中。

まだ交戦開始からさほど時間が経っていないようで、陣形は崩れていない模様。




敵の数が当初の数より多い。

敵側に増援が来たのかも知れない。



魔王『それはあるまい』


―何故?


魔王『敵側も兵力を小出しにする必要は無いはずだからだ』



敵も我々の軍勢が来る前に拠点を確保しておきたいはずだ。

侵攻を迅速に行う為に、兵力の小出しなどは行わう訳が無い。

それがたった5000増えただけ、というのはおかしい。




魔王『当初の情報が間違っていただけで、敵の増援はまだ、と見るべきだろう』


―なるほど


魔王『逆に言えば、いつ敵の増援が来てもおかしく無い状況、という事だな』



僕もそう思う。

すぐに白の騎士団団長にその事を伝えると、白の騎士団団長も「確かにそうですね」と頷いた。



僕「だから一刻も早く、南の小砦の敵を追い返さないと」



白の騎士団団長は「わかりました」と頷く。

白の騎士団団長は白の騎士団副団長に「行きますよ」と言う。

すぐに「出発!」という掛け声と共に、白の騎士団が移動を開始した。


白の騎士団団長の後姿を見ている僕に、魔王が『止めろ』と言う。

僕は魔王の言葉を聞いて、とっさに「待ってください」と、白の騎士団団長を止めた。



魔王『このまま南の小砦に行くつもりなのか聞け』


僕「このまま南の小砦に?」


白の騎士団団長「はい。一刻の猶予もありませんので」


魔王『なら迂回して西か東から攻めさせろ』


僕「このまま正面からではなく、迂回して東西どちらかからか行ってください」


白の騎士団団長「構いませんが、何故?」



回り込めばそれだけ時間が掛かってしまうのだ。

その疑問は最もだろう。



魔王『一つに援軍がすでにこちらの正面から行っているだろう為、二つに「別方面の援軍が来た」と思わせれれば、敵の動揺を誘えるやもしれん』



魔王の言葉をそのまま伝える。



白の騎士団団長「我々とは別に、王都方面からの援軍があると思わせるんですね」



白の騎士団団長の言葉に僕は頷と、白の騎士団団長は白の騎士団を率いて行動を開始した。

白の騎士団が行動を開始したのを見ながら、僕は姫の騎士団各大隊長と副大隊長を呼んだ。




白の騎士団が行動を開始して数刻。

予定ではそろそろ迂回して敵と当たる時刻だろう。

僕達姫の騎士団は強行軍により遅れていた城の騎士団の兵を組み込み、1000名程度の規模になっていた。




斥侯に出してた兵が戻ってくる。


南の小砦は辛うじて未だに健在。

白の騎士団が南の小砦を包囲している敵と交戦開始。

それにより敵軍に動揺が広がるも、援軍が戦線を支えきれずに撤退。

敵は撤退する援軍には見向きもせず、南の小砦を包囲をしながら、白の騎士団に当たる模様。



―間に合わなかった!?



援軍が撤退。

それにより白の騎士団が単独で倍近い敵と当たる羽目になった。

思った以上に援軍が持ちこたえる事が出来なかったようだ。



―どう動くか!?



白の騎士団団長のことだから、ある程度で撤退を開始するはずだ。

それを追撃する敵を今居る兵で急襲し、白の騎士団の撤退を援護して南の大砦に戻るか。

しかしそうなると南の小砦にいる姫の騎士団員や赤の騎士団団長たちを見捨てる事になる。

かといって1000程度で南の小砦に行っても何も出来ない。



―どうする!?



焦る僕に魔王が『落ち着け!』と言う。



魔王『まず、撤退する援軍がどちらに逃げてくるかを確認しろ』



魔王の言葉通りに聞く。

やはりと言うか、援軍は南の大砦方面、つまりこちらに向かって来るらしい。



魔王『それならば、そ奴らを組み込んで南の小砦に向かえばよい』


―しかし援軍は敗走してくるんだよ!?



そんな軍勢を取り込んでも戦力になるのだろうか?



魔王『それでもまったく戦えないわけでも、数が極端に少ないわけでもないだろう』



斥侯の話では、まだ2~3000近い兵は居るようだ。

こちらと合わせれば4000近い数になる。



―なったとしても、援軍の兵が戦えるか判らない


魔王『それは向こうも同じだ!』



敵も南の小砦を攻め続けており、気力も体力も限界に近いはずだ。

そして今はまだ白の騎士団も居る。

援軍を押し返した事により、相手の指揮は一時上がっているとは言え、それでも戦闘を継続するのは厳しくなってきているはずだ。

そこにさらに4000近い敵が現れるとなると、相手に与える衝撃は大きいだろう。


白の騎士団とこちらの部隊を合わせて9000近い数になる。

それに南の小砦の兵が呼応すれば、今なら相手に数で勝る事が出来る。



魔王『この機会を逃せば、チャンスはもう無いだろう』



『それに援軍の撤退が早いのも、この場合は良かったのかもしれん』と言う魔王。

それだけ兵の損害は少ないはずだからだ。

魔王の言葉に僕は決断した。

すぐに姫の騎士団各大隊長と白の騎士団連隊長にその事を告げる。

僕が決断したとしても、姫の騎士団員達が本当に「戦えるのか?」と言うのは別問題だ。

僕の話を聞いき、全員が一様に「行けます」と僕の言葉に頷いた。







全力で駆けると、すぐに敗走してくる援軍と出会った。

すぐに南の大砦護衛旅団副旅団長と領主達に会い、話をする。


南の大砦護衛旅団副旅団長は僕の考えに同意するも、一部の領主達は「このまま南の大砦に戻るべきだ」と主張した。

殿下率いる国王軍と共に兵を編成しなおして、南の小砦を取り返せば良いと言うのだ。

その物言いに僕は怒りを感じた。



僕「仲間を見殺しにするのか!!」



僕の怒声に領主達が声を無くす。



魔王『時間が無い、馬鹿は切り捨てろ』



魔王の言葉に僕は頷く。

本来なら領主達を説得して、全員で事に当たるべきだろう。

しかし今は時間が無いのだ。




僕「仲間を助けたいと思うものだけ付いて来い!」



僕はそう言うと「前進!南の小砦まで一気に行くぞ!!」と叫んだ。

その叫びに姫の騎士団員達の「ヤーッ!」と、白の騎士団員の「ヤーッ!」が入り混じった掛け声で、皆が呼応する。

僕は領主たちに一瞥をくれると、「前進!」と叫んで馬を進めた。







僕の意見に賛同して付いてきたのは、南の大砦護衛旅団副旅団長率いる南の大砦護衛旅団と、一部の領主軍合わせて約2500といったところだ。

思ったより付いて来てくれたというべきか。

こちらと合わせて約3500。

やはりほとんどの者の顔には濃い疲労が浮かんでおり、が長い戦闘には耐える事が出来そうに無い。



一撃離脱、とまでは行かないまでも、一回の戦闘が限界だ。

白の騎士団が耐えているかと、南の小砦がこちらの動きに呼応出来るかは、完全に賭けだった。







南の小砦が視界に入る。



白の騎士団が未だに頑張っているのだろうか?

こちら側に居る敵部隊の壁が、思ったより薄いような気がする。

僕は「このまま突撃するぞ!」と言うと、速度を維持したまま突っ込んだ。






雄たけびを上げながら突撃する僕たちに、敵兵が気が付く。


しかし急に現れた僕達に対応出来なかった様だ。

一部の兵が此方に向かってくるもその数は少なく、敵の背後を突く形になる。

「敵を蹴散けちらせ!!南の小砦の門を確保しろ!!」と叫びながら敵の中を突き進んでいった。



魔王『門が破られている!』



魔王の言葉に南の小砦の方を見ると、南の小砦の門が開かれているのが見えた。

遠くからは煙だらけで良く判らなかったが、南の小砦の各所から火が出ているのも見て取れた。



―間に合わなかったのか!!


魔王『まだわからん!』



可能性があるなら諦めるわけにもいかない。

僕達は南の小砦の門に向かって突き進んだ。




魔王『思ったより此方に対する敵兵が少ない』



魔王の言うとおりだ。

白の騎士団が当たっている方向は仕方ないとしても、別方面からの来る敵も少ない。

そして正面の敵も、こちらに向かってくる数が少ないのだ。



―殆どが南の小砦の中に入り込んでいるという事か!?


魔王『それにしては、ここに居る敵兵の動きが変だ』



南の小砦に入り込んでいるにしては、敵の動きが止まっているように見える、というのだ。

もし中に入っているのなら、中から出てくるなり、中に入るなりするだろう。



魔王『もしかしたら、まだそこまで南の小砦の中に入り込んでいないのやも知れん』



どうして敵兵の動きが鈍いのか。

その理由はすぐに明らかになった。



前方、南の小砦の門方面から「味方の部隊までもうすぐだ!突っ込め!!」と言う言葉が聞こえてきた。

そしてすぐに敵の垣根が崩れた。



有力貴族の娘が「赤の騎士団副団長です!」と叫ぶのが聞こえた。

そちらを見ると、てきを蹴散らしながらこちらに来る、赤の騎士団副団長が見えた。


僕と赤の騎士団副団長は敵を倒しながら短い情報交換をする。



赤の騎士団副団長「赤の騎士団団長が、西の門から白の騎士団に呼応して約4000にて出撃、現在交戦中。敵も殆どがそちらに向かってます!!!」


僕「貴殿の兵数は!?」


赤の騎士団副団長「約2000。敵兵の援軍はいまだ無し、現在の敵兵、およそ8000!!」


僕「南の小砦の状況は!?」


赤の騎士団団長「防衛は無理と判断し、南の小砦の放棄を決定。これが最後の脱出の機会とし、南の小砦に火をかけ、出撃しました!」



僕は赤の騎士団副団長に頷くと「白の騎士団と合流するぞ!!」と叫んだ。

赤の騎士団副団長も「若に続け!!」と叫ぶ。





僕達と赤の騎士団副団長の軍勢合わせて約5000は南の小砦の外壁を、西の門に向かって進む。

相手は約8000いるとしても、南の小砦を包囲しており、此方方面に居るのは単純計算でも4分の1。

そして多くが先行していた白の騎士団に向かっていた。



敵兵約8000対白の騎士団約3500。



南の小砦からも赤の騎士団団長率いる部隊、約4000が城門から打って出ている。

そこに赤の騎士団副団長と合流した僕達約5000が横から当たる、という形だ。




西の門までまだ遠い。

しかし僕達は「挟撃しろ!」「退路を絶て!」「数はこちらが勝っているぞ!!」などと叫びながら敵を倒しつつ進む。


その理由は敵兵にプレッシャーを与えると同時に、白の騎士団や南の小砦の兵に僕達が来た事を知らせるる為だ。

まだ遠い為にその声は届かないかもしれない。

しかし、声を出していないと、僕たち自身の進軍が止まりそうなくらい、体力の限界も近い。

だから少しでも声を張り上げて、自分と味方を鼓舞するのだ。





目の前の敵の一部が敗走する動きを見せる。

魔王が『敵が動揺している!敵を落とせ!力の限り鼓舞しろ!!』と叫んだ。

僕は居れず間入かんいれれず「敵が敗走しだしたぞ!!もう一押しだ!!!」と叫ぶ。

その言葉に回りからも「押し潰せ!!」だの「逃がすな!!」という怒号が飛ぶ。


その声に、未だに交戦の意思を示していた敵が動揺するのが見て取れた。

そして敵兵の一人が逃げ出す素振そぶりを見せたのを機に、その動きがあっと言う間に広がる。



僕「逃げる敵は無視しろ!向かう敵のみ倒せ!!まずは味方と合流が先決だ!!」



僕が声を張り上げる。



すぐに白の騎士団と小砦の兵と合流した。

どうやらこちらも挟撃する事により、何とか合流出来ていたようだ。

残った敵兵を排除していると、全身血だらけで憔悴した赤の騎士団団長が僕の近くに走ってきた。



赤の騎士団団長「南の小砦に火を放ちました。立て篭るのは無理です」



僕は赤の騎士団団長の言葉に頷くと「いったん後退し陣形を立て直す!」と言う。

すぐに「後退!」「追撃に備えろ!」と言う声が広がる。



僕「徒歩かちの者は別の奴と馬に乗れ、味方を誰一人を見捨てるな!敵が戻る前に後退するぞ!!」






「後退」と言うのは建前だ。

僕達にこれ以上の戦闘を行う余力など無い。

僕達は南の小砦から少し下がった位置で状況の確認などを行うと、すぐに南の大砦に向けて撤退を開始した。



出来るだけ早く戻りたいという気持ちとは裏腹に、その進行速度は遅い。

重傷者を馬車で移送しているのもあるが、馬の数が圧倒的に足りず、徒歩の者も居るからだ。



白の騎士団約4500名中、行方不明約200名

赤の騎士団約500名中、行方不明約350名

姫の騎士団員約290名中、行方不明約60名

 (迎えに出ていた姫の騎士団員約90名中、行方不明約50名、美女さんを含む)

国境警備兵約500名中、行方不明約400名

南の小砦防衛兵約3000名中、行方不明約1200名

合流した援軍約2500名中、行方不明約300名


怪我人多数。

というより、怪我をしていない者など居ない。


南の小砦に駆けつけた僕たち姫の騎士団員の行方不明者が少ないのは、合流した白の騎士団や援軍の兵達が守ってくれたからだ。



―姫の騎士団員の行方不明者が60名も…



呆然と仕掛ける僕に『今は考えるな!』と魔王が言う。

確かに今はそんな時ではない。

僕は唇をかみ締めると、頭を振るって、ただ南の大砦を目指す作業を再開した。

実は後編の予定だったのに、気が付いたら中編になってました。


「第71話 新展開後編」は22時UP予定です。(予約掲載済み)



誤字修正


待ったく → まったく

出撃ました! → 出撃しました!

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