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(仮)  作者: イオン水
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第66話 閑話

北国の筆頭貴族の娘は、当初の予定日より1日程遅れて王都に着いた。

国境を越えた北国の筆頭貴族の娘が体調を崩したのである。

軽い発熱だったと言う事だが、大事を取って滞在していた大砦に一日、滞在する事となった為に王都への到着も1日ずれたのだ。



北国の筆頭貴族の娘が王城に入場した。

隣国の王孫女の時と同じく、城下では熱狂的に迎え入れられた。

というか、隣国の王孫女が王都に入る数日前から、今までお祭りが続いているだけなのだが。

このお祭りはもう一人の后候補、南国の第三王女が到着するまでは続くそうだ。


こんなに浮かれてて大丈夫なのか?とも思わないでもないが、こうやって騒げるのはそれ程、悪い事でも

無いらしい。

翁も「裏返せば殿下の人気の表れじゃしな」と言っていた。

国民がお祭り騒ぎで息抜きが出来るという状況は、国がいい方に向かっているからだとも言える。





本来なら隣国の王孫女の時と同じ様に、謁見の間で殿下への挨拶兼、顔見せが行われる予定であった。

しかし、北国の筆頭貴族の娘の体調をおもんばかって、殿下との顔見せのみとした。

正確には殿下だけではなく僕も姫も居たりしたけど、大勢の前での顔見せを延期した、という意味だ。

簡単な顔見せをした後は、すぐに用意された部屋で休んでもらう事となった。


僕のから見た北国の筆頭貴族の娘の第一印象は「はかない」。

体調を崩していた、というのを聞いているのもある。

実際に先ほど会った感じでは、まだ顔色が良くないようだった。

だからだろうか、線が細く感じる。

殿下と姫も似たような印象を持ったようだ。

体調が戻ればまた印象は変わってくるかもしれないが。

そういえば、最近は初対面の相手でも僕達が一緒なら、ニコニコと笑顔を浮かべている妖精少女が、来た国の筆頭貴族の娘の顔を、まじまじと見ていたのが少し印象に残った。



魔王『伏線、というやつだな』


―いや、そんなつもりは無いけど…


魔王『ああ、すまんな。伏線だと言ってしまうと、後々の楽しみが減ってしまうからな』


―別にそんな事は思ってないよ!


魔王『なら良いではないか』



良いとか悪いとかではなく、別にそんなつもりも無いのに「伏線だ」とか言ってたら、「伏線詐欺」とか「投げっぱなし」とか言われかねないじゃないか。

いや、そもそもが僕の頭の中だけの話なので、誰に何を言われる、という事は考えなくてもいいんだけどさ。



魔王『今まで黙っていたが、実はこの物語はお主の妄想だったのだ』


―ナンダッテ!



まさかの新事実。



―いやいや、色々とおかしいから



そんな重要な事を、何で今、このタイミングで言ったのさ。

そもそもこれが全て僕の妄想だとしたら、僕は脳内で嫁を3人持ってニヤけているような奴と言う事になる。



―どれだけ痛い奴なんだ!!


魔王『しかも短期間で大抵の者に勝てるくらい強くなる設定とか、物凄く痛すぎるな』



確かにそれはキツイ…いや実際には僕がこの世界に来て、半年くらいの時間は美女さんに鍛えてもらったんだけどね。

それに、そこまで強くないし。



魔王『たった半年でか…』


―そう言われると、本当に脳内設定だけに思えてくるから怖い



いや、こんな無駄話をしている時ではなかった。

魔王の戯言ざれごとに付き合っていたら話が進まない。



魔王『戯言―か』



北国の筆頭貴族の話である。

結局、彼女はこの国に来て3日ほど寝込ん―



魔王『本当に我の戯言だと、まだ思っているのか?』


―え?


魔王『おかしいとは思わないのか。精神だけが異世界に来て、その世界の人物の中に入る?戦では勝利に貢献?仲間は誰も死なない?多くの異性が自分に好意的?全て、自分の都合の都合のいい展開ではないか』



―いや、確かにそうだけど―



これが物語だったら「主人公補正」とか言われてしまうのだろう。

物語なら仕方ない。

主人公が居てこその物語なのだから、その主人公が1ページ目で死ぬとかありえないだろう。

いや、無い事も無いけど、それは主人公が死ぬ事により物語が始まったりするのだ。

結局、主人公を軸に話が進んで行くことには間違いない。

途中で主人公が死ぬのは何かの形での復活フラグであり、最終的に主人公が死ぬのは、そういう話の終わり方なのだ。


だが、この世界で起こっている事は、そんな物語などではないはずだ。

偶然、うまく行っているだけの事で―



魔王『偶然か。都合のいい言葉だな』


―……


魔王『「実際その通りだから仕方ないだろう」等と思っているのだろうな』


―…その通りだけど


魔王『これだけの幸運を"偶然"の一言で片付けるとは、めでたい奴だな』



魔王は僕を馬鹿にしたように鼻で笑う。



―じゃなければ何だと言うんだよ


魔王『何だと思う?』



問いに対して問いに返す奴ほど、嫌な奴は居ないと思う。



―僕の妄想の世界や夢の世界だと言いたいのか?


魔王『他にどう証明できるのだ?』


―だってそうだろう!?これだけリアルな世界なんだよ!!



味も匂いも感じるし、痛みもある。



魔王『それが偽りじゃないと、何故言える?』


―夢で味や匂い、痛みを感じるはずが無い


魔王『本当にそうか?』


―常識的に考えたら、ありえない



僕の答えに魔王は『常識、か―』と呟いた。



魔王『この世界は、お主の言う"常識"通りの世界なのか?』


―…っ


魔王『この世界での常識は、お主の知る"常識"とどれだけ差異があるのだ?』



黙り込む僕に魔王がさらに言う。



魔王『逆に、お主の知識を越えた事象がどれだけあった?』


―それは―



僕は、元の世界とこの世界の違う点を幾つか上げた。

それは魔法だったり、別の種族だったり、魔物だったり。

しかし魔王は『そんな事では無い』と一笑した。



魔王『そのような事は、お主の居た世界でも知られているだろう』


―そんな、事は無い。魔法など無いし、人間…ここで言う人族以外の種族なんか居なかった


魔王『"実際には無い"だけだろう』


―実際には無い、だけ…?


魔王『実際に無いだけで、物語などでは出てきており、それはお主の知るところでもあるだろう』


―そう、だけど


魔王『そして、この世界は全て、お主がどこかで見たり聞いたりした内容と、それ程の違いはあるまい』



魔王の言葉に僕は何も言えなくなる。

本当に、本当にこの世界はただの僕の妄想でしか無いのだろうか。

姫は、有力貴族の娘は、美女さんは、妖精少女は、その他の人たちも、ただの妄想の世界の住人で、本当には存在し無いのだろうか?

今まであった出来事は、僕が望んだだけの妄想の世界なのだろうか。


そんな、筈は無い。



―僕が知るモノと、この世界では少し違う


魔王『ほう』


―魔力の容量の事とか、失われた魔法があるとか、えっと―いきなりは思いつかないけど、他にも色々ある


魔王『ふむ―』



魔王はそう言うと『それだけでは、妄想じゃないと言う事の証明にはならないな』と言った。



―何故!?


魔王『想像の範囲内だからだ』



元々に魔法や陣族以外の種族、魔物などの知識がある。

その知識を少しひねれば出る程度の内容でしかない。

それを持って「僕の知識を越えた事象」とは言えないと言うのだ。



―だ、だったら、魔王自身はどうなんだ


魔王『我か?我がどうした』


―僕の妄想の産物なら、もう少し都合の良い性格のはずだ!


魔王『言外げんがいにですら無く、直接「お前は性格が悪い」と言うのは、どうかと思うぞ』



魔王の言葉に「ごめん。そんな心算つもりでは無かったんだ」と、しどろもどろに言い訳をする。



魔王『まあその事はどうでもよい。そうだな、こうは考えられないか?我はお主の無意識の良心だと』


―無意識の、良心?


魔王『そうだ』



この世界は僕の生み出した妄想である。

その為に、僕の都合の良い展開ばかり起こる。

そこに疑問を投げかけるのが、僕の良心だ。

心のどこかで「こんな都合の良い事はありえない」という無意識に思う。

その事を魔王という存在が代わって僕に言うというのだ。

だから魔王だけは僕の思い通りに…いや、都合の良い様に動いていない。



辻褄つじつまはあっている…のか?



いきなりの展開過ぎて、思考が付いていけない。

きっと、じっくり考えたら「そんな事は無い!」と、はっきり言えるくらいの矛盾点が、沢山見つかるはずだ。

しかし、今の僕はそこまで頭が回っていない。



―もしこの世界が僕の妄想の世界だとしたら―



姫も有力貴族の娘も、美女さんも、妖精少女も、そのほかの人達も、皆、本当は存在しないと言う事になる。



魔王『一番に来るはずの我が抜けているぞ』



魔王はこの際どうでもいい。



―何で…



何で、今なんだ。

何で今更になってそんな事を言うのだ。

この…この世界に来た時に言えば、こんな気持ちにならなかっただろう。



魔王『それでは面白くあるまい』



魔王の言葉に絶句する。

「面白い」だと。

僕は心の奥底で、そんな事を思っているのか?



―…面白さと言うなら、もっと、話が進んでから言うべきじゃないのか…?



言うべきタイミング、と言うのがあるだろう。

何で今なんだ!!

今、このタイミングで言う事に、何の意味があるのだ。


僕が搾り出すように言った言葉に魔王は『深い意味など無いな』と言う。



魔王『だが、今言おうが、後に言おうが「この世界が本当ではない」という結果は変わるまい』



結果は変わらない。

でも気持ちは変わる。


知りたくなかった。



―知りたくなかった!



僕の叫びに、魔王が一言『すまんな』と言う。

謝る事に何の意味があると言うんだ。



魔王『お主がそこまで―』



魔王はそこで一旦、言葉を止める。

しかし僕は、魔王の言葉を聞いていない。

いや、耳のは届いているが、脳まで達していないというべきか。



―この世界が僕の妄想の世界だなんて―


魔王『お主が、そこまで信じるとは思わなんだからな』


―姫も有力貴族の娘も、美女さんも、妖精少女―ぇ?


魔王『いや、まさか、そこまで真剣に落ち込むとは思わなかったのでな』



『冗談のつもりだったのだが、本当にすまなかったな』と笑う魔王。



―…は?


魔王『全て冗談だ』


―僕の妄想の世界という事が?


魔王『嘘だ』


―姫も有力貴族の娘も、美女さんも、妖精少女も?


魔王『ちゃんと生きた人間だ』



あまりの事に、再度、頭が真っ白になる。



魔王『少し冗談が過ぎたか?』


―少し所じゃない!!!



馬鹿なんじゃないか!?

馬鹿なんじゃないか!?

馬鹿なんじゃないか!?


これでも言い足りないくらいだ。

1話分丸々使って、魔王を罵倒し続けたい。

というか、1話分だけでは足りないだろう。

それだけで数話に渡る話が出来てしまうくらいの勢いだ。



―なんだってそんな嘘をつくんだ!


魔王『嘘じゃなく、冗談なのだが』


―どっちでもいいよ!!


魔王『まあ一つは伏線だ』


―はぁ?



伏線?

何を言ってるんだ?



魔王『ここでこういう話をしていれば、後に繋がるだろう』


―意味が分からない。



先にこの世界についての謎を「こういう理由だったのだ!」と提示する。

そうする事により、人々は「じゃあこの理由は無いな」と思うに違いない。

こんな所で語られる内容が正解などとは、通常は思わないからだ。



魔王『だが、それこそミスリードを誘う罠なのだ』



そう思わせておいて、実はここで語った内容が事実だった。

そうして、人々の裏の裏を書くと言うわけだ。

魔王が『どうだ!』とでも言わんばかりに、自信満々に僕に説明をしていた。

それを聞いた僕は、深いため息をついた。



―…そんな浅い内容で騙される人はほとんど居ないし、ミスリードも誘えるか!




馬鹿なんじゃないか!?

馬鹿なんじゃないか!?


魔王への罵倒で長編シリーズの物語が出来そうだ…


そもそも、ミスリードを誘った上での事実なら、やっぱりこの世界は僕の妄想の世界となってしまうではないか!

姫も有力貴族の娘も、美女さんも妖精少女も存在しない事になる。



魔王『そもそも「存在」とは何だと思っているのだ?』


―は?


魔王『認識して初めて存在するのだ。だから、逆に言えば認識していないものは存在しないし、認識すれば存在―』


―いあ、その手の話はもういいから!?



そもそも、何故、今、このタイミングでそんな冗談を始めたんだ。



魔王『最近、出番が少なかったので』


―は?


魔王『我もたまには、沢山話したい』



馬鹿なんじゃないか!?

馬鹿なんじゃないか!?

馬鹿なんじゃないか!?

馬鹿なんじゃないか!?

馬鹿なんじゃないか!?



―そんな事で、この無駄な時間を使ったというのか?


魔王『まあ、そうなるな』


―そんな事のために、北国の筆頭貴族の娘の話が進まなかったのか!?


魔王『残念ながら』


―残念なのは、魔王の頭だ!!



北国の筆頭貴族の娘について、どれだけ語った??

というか、少しでも語れたっけ!?

はかないイメージ」という事しか、説明できてない…



―こんな無駄な事の為に…


魔王『しかし僕はその時、この話がああいう事を引き起こすなんて、思っても居なかっ―』


―もういいから黙ってくれ…いや、下さい…



モノローグ調に話し出した魔王の言葉を遮って、懇願する。

本来なら、北国の筆頭貴族の娘の話をする予定だったのだが、魔王の所為でこんな事になってしまった。



―無駄に、疲れた

北国の筆頭貴族の娘の話が出来ませんでした。

…不憫な子。

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