第65話 蕩(と)れ
北国の筆頭貴族の娘の一行が国境まであと数日、という所まで来ているという知らせが来た。
翌日の昼には美女さん率いる姫の騎士団第三大隊と、赤の騎士団団長率いる赤の騎士団が北国の筆頭貴族の娘を出迎えるために出発する。
その前日の夜の話。
姫の騎士団の会議の為に姫の騎士団寄宿舎で夕食を摂る。
会議終了後に少し体を動かそうと、美女さんに「軽く手合わせしませんか?」と聞いた。
しかし申し訳なさそうに「準備がありますので」と断られてしまった。
確かに翌朝には北国の筆頭貴族の娘を出迎えるために王都を出発する。
美女さんに限って未だに準備が出来ていないという事はないだろうが、それでも最終確認に余念が無いのだろう。
僕は美女さんに「手伝いますか?」と聞いたが、美女さんは少し考えて「若が必要になったらお願いします」と言われたので「美女さんのお願いなら何でも」と答えておいた。
姫の騎士団寄宿舎の広場で軽く剣を振っていると声を掛けられた。
姫の騎士団第一大隊隊長と副隊長、それに第三大隊隊長の3名だ。
第一大隊隊長「私達もご一緒しても良いですか?」
僕「僕は良いけど、第三大隊隊長は大丈夫?」
僕の言葉に「私ですか?」と第三大隊隊長が「はて?」という感じで首をかしげる。
僕「明日、出発でしょ?」
その準備は大丈夫なのか?と聞いたのだ。
それを察した第三大隊隊長は頷くと「準備は既に終わってますから」と笑った。
―美女さんは準備があるっていってたのに?
魔王『何の、とは言ってなかったしな』
―他に何の準備があると言うんだ?
魔王『…第三大隊隊長とは別の何か、ではないか?』
別に2人が同じ準備に懸かる道理も無いだろう、と魔王は言っているのだろう。
確かにその通りなので僕はその話を切り上げて3人に意識を向けた。
僕「じゃあ軽く手合わせでもしようか」
僕の言葉に3人が頷く。
そして最初は一人ずつ、途中から2人ずつを相手に半時(約1時間)程して終了した。
僕「みんな強くなったね」
第三大隊隊長「そうでしょうか?」
僕「うん。さすがに美女さんに鍛えられてるだけあるね」
第一大隊副隊長「そこは"僕が育てた"とは言わないんですか?」
第一大隊副隊長の言葉に僕は苦笑しながら「そんな大それた事が言えると思う?」と返した。
その言葉に第一大隊副隊長は「う~ん」と考える仕草をして「ノーコメントでいいですか?」と言った。
その言葉に僕も、残りの2人も笑ってしまう。
騎士団団長にこんな軽口を叩ける騎士団も他にはそうそう無いだろう。
しかしこれが姫の騎士団だ。
もちろん勤務中はちゃんとしている。
第一大隊は勤務明けで休暇に入り、第三大隊は明日の出発に向けて半日の休暇と、現在はそれぞれ勤務外となっているから構わないのだ。
それに彼女達は姫の騎士団の初期から共に行動しているのだ。
それなりの信頼関係は築けている、という事だろう。
僕「でも本当に強くなったね」
第三大隊隊長「そう、ですか?自分では良く分からないですが」
第4大隊隊長に僕は「なってるよ」としっかり頷いた。
僕「今の3人なら赤白両騎士団の騎士とも、一対一でいい勝負が出来ると思うよ」
「勝てる」とまでは言わない。
さすがにまだ言えない。
しかし「負けている」とも思えない。
それくらいには腕が上がっている。
3人も自分達の腕を過信していないのだろう。
僕の言葉に嬉しそうに「ありがとうございます」と異口同音、口にした。
「もう少し続ける?」そう口に出そうとした時に、近づく人の気配がして振り返った。
そこには姫の騎士団寄宿舎からこちらに、近寄って来る人影が見えた。
日も落ちたとは言え、姫の騎士団寄宿舎は建物や篝火の明かりでそこそこ明るい。
だからこそこんな時間でも外で剣を合わせる事が出来たのだ。
近づいてきた人物は姫の騎士団団員の一人で、僕の前に立つと敬礼をした。
僕が敬礼を返すと「姫様の侍女より伝言で、姫様が火急の用があるそうです」と言った。
「火急の要」と言うのに首をかしげながら「わかった」と言うと、彼女は敬礼をして寄宿舎に戻っていった。
僕は3人と挨拶を交わすと、姫の騎士団第一隊長が渡してくれた手ぬぐいで汗を拭いながら姫の騎士団寄宿舎へと足を向けた。
空の館に戻ると姫と有力貴族の娘、それに美女さんが寝室に居た。
―何故寝室に?
魔王『…ナゼダロウナ』
何故、カタコトなのだろうか?
魔王に理由を聞いたが『すぐに分かるだろう』と言われた。
一体何なんだ。
―美女さんは明日の準備で忙しいんじゃなかったっけ?
そもそも美女さんは半日の休暇なのでいいとしても、有力貴族の娘は勤務中じゃ?
僕のそんな疑問を感じたのか、姫が口を開いた。
姫「重要な話し合いを行う必要がある為、無理を言って有力貴族の娘を呼びました」
有力貴族の娘「勤務中でしたが休暇を申請し、姫の騎士団大隊副隊長に後を引き継ぎました」
美女さん「姫の騎士団副団長として承認しました」
3人が流れるように言う。
僕「承認しましたって…」
聞いてない…いや、別にいいんだけどね。
それじゃ他の姫の騎士団員に示しが付かないんじゃないだろうか。
魔王が『このための準備か…』と言っている。
皆で話し合う為に美女さんが有力貴族の娘の休暇を許可したのだろう。
―それだけ重要な案件、と言うことか
僕は「わかりました」と頷く。
僕「それで火急の用とは?」
姫「家族会議です」
僕「…は?」
姫「家族会議です」
僕は視線を有力貴族の娘に向けた。
有力貴族の娘は僕と視線が合うと「家族会議です」と姫と同じように言った。
さらに美女さんへと視線をずらすと、美女さんまで「家族会議です」と言うではないか。
僕は仕方なく姫に視線を戻す。
僕「家族…会議ですか」
姫「はい」
僕は息を吐くと「で、その家族会議の…議題は何ですか?」と聞いた。
姫「美女さんです」
姫の言葉を待つ。
しかし姫はそれ以上は何も言わずに僕を見つめ返してくる。
仕方なく僕は再度美女さんを見た。
僕「美女さん、ですか?」
美女さん「そのようです」
僕「で、美女さんがどうしました?」
美女さんは僕の問いに「先日のことなんですが―」と言った。
美女さん「隣国の王孫女を出迎えに行った時の話なのですが、その一行に私を知る人が居たんです」
僕「知り合い、ですか?」
美女さん「いいえ"私を知る人"です」
―「私を知る人」。というと
魔王『神の御使いを、と言うことではないか』
―なるほど。
僕は美女さんに目線だけで話の先を促す。
美女さんはそれに「それだけです」と言った。
僕「え?それだけ?」
美女さん「はい」
僕「騒ぎになった、とかそんな事は無く?」
美女さん「ありません」
隣国の王孫女の護衛の兵の中に、過去に神の御使いと共に戦った事のある者が居た。
とはいえ、神の御使いの軍勢に参加していた程度なので、遠くから姿を見たことがある程度のものだった。
その者が美女さんの事を「神の御使いに似ている」と言ったのが、隣国の王孫女の軍勢の中で広まった。
「神の御使い」は美女さんを見たら分かるように見目麗しい女性。
そしてどんな戦でも最前線に立ち、敵を倒し味方を守った。
人気が出ない訳が無い。
そんな「神の御使い」に見た目が似ている女性。というか本人だけど。
「神の御使い」を噂でしか聞いた事のない者でも、興味が出るのは当然だ。
僕「それでよく大事になりませんでしたね」
美女さん「本人とは思われてませんからね。それに有力貴族の娘と赤の騎士団団長が協力してくれましたので」
極力他の兵が近づかないようにしたり、「それほど似てない」「人妻」と言う噂を流したり。
―人妻って意味があるのかな?
魔王『無くは無かろう。まさか神の御使いが人の妻になるとは思うまい』
―ああ、確かに神官でもあるしね
それに美女さんが誰かの妻になると言うのは想像できない。
魔王『いや、お主の妻なんだろう?』
―ああ、そういえばそうだった
名目上だけなので忘れがちになる。
いや、忘れてなどは居ない。
―名目だけなので実感も何も無いけどね
僕は頷くと「美女さんの今度についてなんですね」と言った。
それに3人とも頷く。
「どうしましょうか」と言う僕に姫が口を開いた。
姫「ちゃんとしないとダメだと思うんです」
僕「ちゃんと、ですか」
その言葉に僕は考えながら美女さんに聞いた。
僕「美女さんはまだ、前に聞いたようにここにいたいですか?」
美女さん「はい」
僕の言葉にはっきりと頷く美女さん。
美女さんの気持ちがハッキリしているのなら、僕の言うべき事は唯一つだ。
僕「美女さんが望むなら、僕は出来る限りの事をします」
僕の言葉に美女さんが「はい」と頬を赤らめた。
すこしクサい事をいってしまったのは自覚している。
魔王『クサいと言うよりは…いや何でもない』
途中で言うのを止められると逆に気になるけど、今は美女さんとの話を進めなくてはいけない。
確かにクサイと思う。
しかし僕の偽らざる気持ちでもあるのだ。
僕は美女さんをしっかり見つめ「大丈夫です」と頷いた。
美女さんに、僕が美女さんの仲間である事が伝わるように。
有力貴族の娘が「んっんん」と声を出した。
よくある「自分も居ますけど」アピールのあれだ。
有力貴族の娘の方を見みると少し俯いて僕を見ていた。
上目遣いっぽく僕を見るその顔も少し赤い。
―何なんだ?
魔王『お主は…馬鹿を通り越して、凄いをさらに通り越した馬鹿だな』
―魔王が褒めるなんて珍し…それは一週回って馬鹿という事なんじゃないの!?
魔王『回ってなどいないさ』
『突き抜けてるだけだ』と良く分からない事を言われたが、馬鹿と言ったのは否定されなかった。
魔王は僕の事をよく馬鹿にする。
いや、たしかに色々気が付かない僕が悪いんだろう。
だけれども、気が付いたのなら言ってくれても良いのではないだろうか。
魔王『それだと面白くあるまい』
やはり魔王は正確が悪いようだ。
などと魔王とやり取りしてたら姫がくすくすと笑った。
姫「有力貴族の娘がやきもちを焼いてる」
有力貴族の娘「!?」
僕「!!!!」
やきもちだったのか!!
それを踏まえて、先ほどの有力貴族の娘を思い返してみる。
―っ!!!
痛恨の一撃を食らった。
いつもはあまりそういう仕草をしない有力貴族の娘の上目遣い。
こうかは ばつぐんだ!
―これが噂に聞く「萌え」を越えた「蕩れ」か!!
落ち着け自分。
レアな有力貴族の娘を見れたのは良いとして、なぜ今の会話に有力貴族の娘が嫉妬するんだ?
僕が疑問を口に出す前に姫が「若ならそう言ってくれると思ってました!」と口を開いた。
姫「そういう事なら話は早いですね」
ぱちんと目の前で両手を合わせた姫は嬉しそうに頷く。
それに美女さんは「そうでも無いと思いますよ」と言った。
美女さん「多分、若は良く分かってないと思います」
姫「そうなんですか?」
姫の問いに僕は頷いた。
姫「若があんな事を言うので私はてっきり…」
有力貴族の娘「そんなつもりが無くても、そういう事を言うのが若なんです」
―なんか、色々すみません
姫「それが分かってても、美女さんが羨ましかったんだ」
有力貴族の娘「―姫ちゃんっ!?」
慌てた有力貴族の娘に姫は「私は羨ましいわ」と言うと、僕を見つめて「今度、私にも言ってくださいね」と微笑んだ。
僕は2回目の痛恨の一撃を受けながらも何とか頷き返す。
僕「それで、一体何が―」
姫「ああ、そろそろちゃんとしないとダメですね、という話です」
僕「何が?」
魔王『ナニが』
―何か言い方が卑猥だよ!
魔王『他にどう言えと言うんだ』
姫「美女さんを本当の奥さんにする、という事です」
―そうそう、こうやってオブラートに包んでね
魔王『言ってる事は同じだろう』
―言い方ってものがあr―
そこで姫に「はい?」と返した。
姫「美女さんを若の奥さんに、です」
僕「…なんでそんな話に?」
姫「美女さんの存在が、思ったより早く知れ渡るかも知れないからです」
美女さんは明日から北国の筆頭貴族の娘の出迎えに出発する。
その後はまた、南国の第三王女も迎えに行く事になるだろう。
隣国の王孫女の一行には美女さんを遠くから見かけた程度の者しか居なかった。
しかし今後も存在が知られないとも限らない。
姫「だから今の内に、美女さんを本当の家族にするんです!」
姫はそう言うと笑顔で僕を見た。
色々あれ過ぎて頭が回らないが、何とか美女さんを見ると問いかけた。
僕「美女さんはそれでいいんですか?」
美女さん「どういう事ですか?」
僕「以前に美女さんは僕の妻になるのは嫌だ、という発言をしませんでしたっけ?」
美女さん「そんな事言ってませんよ?」
あれ?言わなかったっけ?
美女さんが勇者だとわかってから、殿下とかに話をした時にそういう事を言われた気がするんだけど。
僕がそう言うと美女さんは「ああ」と頷いて言った。
美女さん「確か、若の奥さんになるのはちょっと、というような事は言いました」
僕「ですよね」
美女さん「でもそれは嫌と言う意味ではありません」
僕「??」
美女さん「姫様や有力貴族の娘の居ないところで決めるのはどうか、と思ったので言っただけです」
美女さんはそう言うと「お二人が良いのでしたら」と言葉を切った。
姫を見る。
姫「私は構いません。他の人なら嫌ですが、有力貴族の娘と美女さんなら平気です」
「それと妖精少女も」といいう姫。
―いや、だからそこに妖精少女を入れるのは止めて。
魔王『そんな事より先に考える事があるだろうに』
現実逃避しそうな僕に魔王が言う。
わかってる、わかってるけど現実に僕が耐えれそうに無かったんだ。
僕はすがる気持ちで有力貴族の娘を見た。
―有力貴族の娘なら、有力貴族の娘なら僕の味方に―
有力貴族の娘「私も美女さんなら構いません」
―ぐはっ!
魔王『この場に居る時点で敵だと気付け』
魔王の言うとおり過ぎて、ぐうの音も出ない。
姫「若は美女さんが嫌いですか?」
僕「いえ、そんな事は…」
嫌いなわけが無い。
好きか嫌いかの2択なら好きだ。
今までどれだけ美女さんに助けられたか分からない。
好きとか嫌いを越えている。
だが話はそんな単純な問題ではない。
姫「なら問題ありませんね」
僕「いやいやいやいや」
僕が何かを言う前に有力貴族の娘が口を開いた。
有力貴族の娘「若」
僕「はい」
有力貴族の迫力につい姿勢を正す。
有力貴族の娘「若は美女さんが好きですね」
僕「は、はい」
有力貴族の娘「なら何が問題なんですか?」
有力貴族の娘の言葉に僕は考える。
僕「美女さんの気持ちが―」
美女さん「構いません」
言い終わる前に美女さんに潰される。
僕は深呼吸を一つすると、美女さんをしっかり見ていった。
僕「…美女さんがここに残る手段として、そういう方法を取るのが納得出来ない」
僕の言葉に美女さんが首をかしげた。
僕「僕は美女さんが大切です」
その言葉に美女さんが少し恥ずかしげにする。
―ダメだ、このまま美女さんを見ていると何かに負けてしまいそうだ
そこから逃げるように横を向いたら、また上目使いの有力貴族の娘と目が合った。
先ほどの「焼きもち」という姫の言葉を思い出し、有力貴族の娘を見てしっかりと言う。
僕「有力貴族の娘も、姫も、大事です」
その言葉に有力貴族の娘は顔を真っ赤に俯き、姫は「私もです」と嬉しそうに言った。
「大事」と言うのは嘘偽り無い。
だからこそ大切にしたい。
美女さんがここに居たいという気持ちは大事にしたい。
その為に僕が出来る事なら何でもしたいと思う。
しかしその為に美女さんが、嫌な目に合うのは納得いかない。
僕は何とかそれを伝えた。
伝え終わった後に「ほう」とため息を付いて「それが僕の気持ちです」と言った。
部屋に沈黙が下りる。
どれくらい時間が経ったのだろうか。
長く感じたが、実際はそれ程時間は経ってないだろう。
姫「じゃあ美女さんが求めれば問題無い、という事ですね」
姫がまた手をぱちんと合わせながら言った。
僕「―は?」
姫「だから美女さんの気持ち次第、という事ですよね」
有力貴族の娘「そういう事ですよね」
「なら問題ありませんね」と姫が言う。
姫「恋し恋しと鳴く蝉より、鳴かぬ蛍が身を焦がす、と言いますし」
うんうんと頷く姫と「そうですね」と微笑む有力貴族の娘。
それの言葉に美女さんの顔が若干、赤くなる。
―どういう意味なの?
魔王『お主は…』
『ここまで言われてもわからんとは…』と言う魔王に聞き返そうとする前に、姫が「さあどうぞ」と美女さんを急かした。
美女さんが何か言う前に有力貴族の娘が口を挟む。
有力貴族の娘「姫ちゃん、さすがに私達の前では言いにくいよ」
姫「それもそうね」
姫は有力貴族の娘に頷くと美女さんに「じゃあ後は頑張ってください」と言った。
美女さんが「はい」と頷くのを確認すると有力貴族の娘が席を立った。
姫も席を立つと、有力貴族の娘と共に扉に方へ歩き出した。
僕「え?どこに―」
姫「美女さんは明日出発なので、今日しか無いんです」
僕「それが?」
姫もそして有力貴族の娘も、それ以上は何も言わずに部屋を出て行く。
扉が閉まる前に有力貴族の娘が「優しくね」と呟いて扉が閉まる。
―何を!!!
魔王『ナニを』
―もうソレはいいよ!!
僕がキレ気味に言うと魔王は『じゃあ後は若いもの同士で』と言って消えた。
―何でそんなくだらない事だけ覚えていくんだ!!
その後、いくら呼んでも魔王は反応しなくなった。
僕の沈黙に美女さんは感づいたようで、窺うように僕を見ながら言った。
美女さん「魔王も居なくなりましたか」
美女さんの言葉に僕はぎこちなく頷く。
また沈黙が降りる。
―この空気をどうにかしないと
だが、どうしたらいいのか検討がつかない。
互いに視線を逸らしたまま、無言の時が続く。
―とりあえず何か言えば、打開できるかもしれない!
僕が口を開く前に美女さんが「若」と僕を呼んだ。
その声に反射的に美女さんの方を見てしまう。
美女さんはいつも通りの笑顔…とは若干異なる笑顔で僕を見ていた。
目が離せない。
美女さんは美人だ。
前から知っている。
しかし顔をここまで見つめた事は無い。
いやある。
あるか無いかどっちだ、という話になら美女さんの顔を見つめた事なら「ある」。
美女さんの言動に呆然となって見つめた事など何度かあった。
しかし今回はその時と何かが全然違う。
僕は美女さんを見つめたまま固まっていた。
どれくらい美女さんを見つめていたのだろうか。
はっと我に返る。
そして僕は何かを言おうとする前に、顔を真っ赤にした美女さんが口を開いた。
美女さんもとうとう、というお話。
ううぅ…美女さんが、美女さんが…
話の流れ的に「ぇ?前振りも殆ど無く?」と思う方が多いかと思います。
今まで美女さんの気持ちや動作などを、意図的に極力書かないようにしてきました。
若の毒牙に掛らないようにする為に(ぇ
…半分冗談です。
本当は、あの姫の一言に赤面する美女さん、と言うのが書きたかったからです。
…残りの説明は活動報告で。。。
誤字修正
姫派 → 姫は