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(仮)  作者: イオン水
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第45話 事実

妖精族の里に帰った妖精族の若者達から手紙が届いたと言う事で殿下に呼ばれた。

僕と姫と美女さんと妖精姉と妖精少女が殿下の執務室に向かう。

有力貴族の娘は本日は勤務中である。


執務室に入ると殿下が妖精姉に一枚の手紙を渡した。

どうやら手紙は2通あり、一通は国王宛でもう一通は妖精姉宛のようだ。

殿下と妖精姉は手紙を開封すると中身を確認した。



殿下「手紙には妖精少女の処遇について妖精族間で会議を開く為に時間が掛かりそうだと書かれておりますね」



読んでいた手紙を翁に渡しながら言う。



妖精姉「こちらも似たような事が書かれておりました。会議は妖精女王の名の下に行われるそうです」



殿下の「宜しければ見せていただいても良いですか?」と言う言葉に妖精姉は頷いて『読めないかも知れませんが」と手紙を渡す。


妖精姉の言うには手紙には、妖精女王の名の下に妖精族の会議が招集された事の他には里の近況と妖精姉と妖精少女の体調を気遣う内容が書かれているらしい。

僕も見せてもらったが読める訳が無いと思ったが、魔王が『妖精姉の言うとおりだな』と言ってたので間違いないだろう。



―というか妖精語読めるの!?


魔王『読めるぞ。話す事は殆どできんが聞き取りなら出来るしな』


―聞き取り?言語も違うの?


魔王『当たり前であろう。種族によって独自の言語を持つのは当然だ』



ただ魔族や人族が多いのでその言葉が共通語のように扱われているだけの事らしい。

魔族と人族が同じ事に驚いたけど、元々同じ種族だったのでおかしくないようだ。

それもあくまで「魔族や人族の中で長年力を持った国々が使っていた言語」という話であり、地方や特殊な地域には共通語とは若干趣の違う独自の言語が使われているらしい。

そしてあくまでも共通語となってはいるが、全ての者が話したり読み書き出来るわけじゃないそうだ。

今まではたまたまそういう者に会わなかっただけなのだそうだ。



―じゃあ妖精少女があの歳で共通語が話せるのはすごいんだね


魔王『すごいと言えばすごいが、本当にすごいのは耳だろうな』


―耳?


魔王『妖精少女は元々そんなに共通語が話せるわけじゃないのだろう』


―でも普通に話してない?


魔王『普通ではないな』



魔王が言うのは僕達の会話を聞いて覚えているようだ。

だから最初はあまり話さなかったし、話しても片言になるらしい。

てっきり幼いからそういう話方なのだと思ってた!

だからたまに周りの話を黙って聞きながらニコニコしている時は、良く分からない単語が出てきて分からないけど周りの皆が笑顔なので一緒に笑っているのだろう。



魔王『出会ってそれほど立っていないのに、日常会話を聞く事が出来るのは耳と頭が良い証拠だな』


―確かにすごいね


魔王『それを言うなら妖精姉も中々だな』


―なんで?



一緒に来ていた妖精族の若者達があまり話さなかったのは共通語をそれ程理解してなかったからだろう。

妖精姉だけ残ったのも共通語への理解が一番出来ているからと思う。

それは少しの時間では理解できるものでもないし、妖精姉の理解力を見る限りではある程度の勉強をしたと予想されるそうだ。


僕は手紙を妖精姉に渡しながら「妖精姉の言っている事は本当のようです」と伝えた。

すると妖精姉が「読めるのですか!?」と驚いた表情をし、他の面々(美女さん以外)も一様に驚いていた。



僕「え、ええ…文字の読み書きと聞く事だけで話すのは難しいですが…」



僕がそう言うと妖精姉が歌うように何かの言葉を紡いだ。



魔王『「貴方はどこで妖精語を?」と聞いている。知り合いに妖精族の出身者がいたと言ってよいぞ』



どうやらあのメロディが妖精語の言語らしい。

歌うように響く言葉は綺麗だと思う。

姫も同じように感じたのか目を閉じて聞いている。



僕「昔の知り合いに妖精族の出身者が居たのです」



するとさらに妖精姉は歌う。

以降は同時通訳が面ど…分かりにくいので会話出来ているように簡潔に。



妖精姉〔その者の名前と出身がわかりますか?〕



僕は名前と出身を伝え、その人は昔に病気で無くなったと伝えた。



妖精姉〔―――(魔王にも読解不能)なのですか?〕


僕「ごめん。その言葉の意味は分からない」



僕の言葉に何かを探る言うな感じだったが、別の言葉を紡いだ。



妖精姉〔貴方に出身を伝えた者との関係は?〕



魔王が『愛人だ』と言うのに「いえるか!」と突っ込むと「冗談だ」と笑えないことを言い出した。

もし僕がそのまま冗談を口にしたら、冗談ではすまない惨劇が待ち受けていたかもしれない。



僕「昔住んでた付近の森で怪我をして居たのを助けました。魔獣に襲われたそうです」


妖精姉「…試すような事をして済みません」


僕「構いませんよ」



そう言って会話が終わると妖精少女が僕に飛びついてきた。



妖精少女〔お兄ちゃん、話せるの?〕


僕「聞くだけなら出来るよ」


妖精少女〔すごいね!これで沢山お話できるね!〕



そう言うと妖精少女が物凄い勢いで話し出した。

〔本当はもっと皆と話したかった〕という事、〔中々言葉を覚えられなくて旨く話せずもどかしい〕事、〔ちゃんと覚えたいから共通語を教えて欲しい〕と言う事。

沢山話す妖精少女は本当に楽しそうで、歌う声は共通語より軽やかで綺麗だ。

妖精少女に「じゃあ毎日少しずつ覚えようか」と心の中で魔王に「頼むよ」と言いながら言うと、頷く妖精少女と共に姫も「私も妖精語を覚えたいです!」と言って来た。

「一緒に頑張りましょうね」という姫と妖精少女。


これ以降、毎晩一時(約2時間)程、妖精語と共通語の勉強会が開かれる事となる。

それは何故か姫の騎士団も参加となったが、それは有力貴族の娘を仲間外れにしない為の力技であった。

しかし姫の騎士団でも妖精少女は人気の様で「妖精少女と話せるなら!」と殆どの者が乗り気だった。


勉強会により僕自身や姫の騎士団の面々も妖精語をある程度理解し、姫に至っては日常会話でも妖精少女と妖精語で会話をしたりした結果、精霊語が話せるようにまでなるのはまだ先の話である。




殿下「妖精族の会議はどれくらい掛かると思いますか?」


妖精姉「手紙が書かれた時点で召集という段階ですので、まだ始まっても無いと思います。決まるのはどれくらいになるか…」


殿下「そうですか」



そう言うと考え込むように黙っていた殿下が顔を上げた。



殿下「妖精姉にお願いがあるのですか」


妖精姉「なんでしょうか?」


殿下「妖精女王宛に親書をしたためていただけませんか?」


妖精姉「私が…ですか?」


殿下「はい」


妖精姉「殿下が直接共通語で書かれても解読できますが?」


殿下「そうなんですが、妖精姉に妖精語で掻いて頂くのに意味があるんです」


妖精姉「意味…?」


殿下「まあ深く考えずに、一緒に貴方や妖精少女の近況なども書いて貰って構いませんから」


妖精姉「妖精女王にそんな事は書けません」


殿下「それはそうですね…」



そう言うと殿下は笑った。



殿下「妖精姉は妖精女王にお会いした事はありますか?」


妖精姉「…あります」


殿下「では、どの様な判断を下すと思われますか?」



その言葉に妖精姉は思案したが「特殊な状況過ぎてわかりません」と答えた。



殿下「どんな人ですか?」


妖精姉「優しく美しい方です」



誇らしげに妖精姉が言う。

それを聞いた殿下は「そうですか」と言うと笑顔で頷いた。

そして「親書の件はお願いできませんか?」と聞く。



妖精姉「内容によりますが、問題ないようなら」



そう答える妖精姉に「たいした内容ではありませんよ」とだけ答えた。


親書の内容は以下の通りである。

・妖精族と事を起こすつもりはないと言うより、出来れば仲良くしたい

・妖精少女は若達と本当に家族のように仲が良いので無理やり引き離すような事はしないで欲しい

・妖精族に迷惑が掛からないようなら若が妖精族を訪問する意思はある(僕も了承済み)

・出来れば随時、親書のやり取りで近況報告を行いたい


概ねこんな感じだ。

僕の訪問に関しては殿下に「と言う事を織り込んでもいいですか?」と聞かれたので二つ返事で答えた。

姫も「私も!」とすごい食いついていたが、取り合えず今は妖精少女が「一緒じゃなきゃ嫌だ」と言った僕だけ伝えてるだけだ、と言う事で納得してもらった。



殿下「この内容さへ書いていただければ、後は妖精姉が他に何を書いていただいてもいいですよ」



そう言うと「すぐに印璽いんじ(蝋で封筒を止めて印を押して封印する事)を押すので、こちらで書いていただいてもいいですか」と少し離れたテーブルの椅子を薦め数枚の紙とペンと封筒を渡した。

妖精姉は黙ってそれを受け取ると紙に羽ペンを走らせる。

数刻して2枚の手紙を書き終わると、インクが乾くのを待って手紙を僕に差し出した。



僕「?」


妖精姉「内容を確認しないのですか?」


僕「何で?」


妖精姉「何でって…読めるのは若だけなのですから」


僕「いや、何で内容を確認するの?」


妖精姉「は?」


僕「殿下、必要あります?」


殿下「無いですけど?」


僕「ですよね」



そう言うと僕は手紙を受け取り、内容を確認する事無く折りたたむと「2枚とも同じ封筒に入れていいですか?」と聞いて封筒に入れ殿下に手渡す。

殿下はそれに手早く印璽いんじを押す。



殿下「家族宛などの手紙も一緒に送りましょうか」



そう言うとさらに数枚の紙を妖精姉に渡す。

そして妖精少女に「文字は掛けますか?」と聞いて「少し」と答える妖精少女にも紙とペンを渡した。

姫が「私も妖精少女の家族に手紙を書きたいのですが、共通語でもいいでしょうか?」と妖精姉に確認していた。

妖精姉が「大丈夫です」と言うと姫は綺麗な共通語で手紙3枚に渡る長文を書いていた。

内容は今までの妖精少女の元気な様子を書いてたら止まらなくなって、無理やり途中で止めたそうだ。



―というかそれでもびっしり3枚か


魔王『すごいな』



妖精少女も妖精姉に聞きながら両親に手紙を書き終わったらしい。

姫が「私のも一緒に入れていい?」と妖精少女に聞いたら「うん!」と元気に返事をしていた。

妖精姉の物と妖精少女と姫の物にも殿下が印璽を押す。

「印璽ってそんなに無駄使いしていいものなのだろうか?」と思ったけど「大事な手紙には違いないので構いません」と殿下が笑った。

妖精少女の手紙は妖精少女が「押してみたい!」と言ったので押させてあげた。

「熱いから火傷しないようにね」と横で殿下と姫が見ている中で一生懸命押した印璽は歪んでいたが「できた!」と喜ぶ妖精少女が可愛いので問題なしだろう。



魔王『国王の印璽を国王以外の者が押すとは…妖精少女はやはり大物だな』


―すごい事なの?


魔王『通常は処刑物だな』


―まじですか!


魔王『それ程、国王の印璽は大切で重要なものだ』



それをさらっと「押したい」と言って押す妖精少女は本当にすごいと思う。

すぐに兵士が呼ばれて「親書を届けるように」と言うと3通の手紙を渡す。

敬礼をし受け取った兵士はすぐに部屋を出て行った。


あの手紙はあっという間に控えている伝令に渡されると、十数騎の護衛の騎兵を伴って物凄いスピードで国境まで届けられるのだろう。

そこで国境付近にいる妖精族の者に渡されて数日で親書が届く筈である。





姫「そういえば妖精少女のお母さんってどんな人?」


妖精少女「おかーさん?ん~」



そう言うと考え込んだ。

共通語が難しいのか、言葉に言い表すのが難しい母親なのだろうか?

出来れば前者であって欲しい。



妖精姉「妖精女王です」


姫・殿下・翁・爺・有力貴族「「「「「は?」」」」」



皆が呼吸を合わせて言う中で、僕は言葉も出ないほど驚いていた。

妖精姉の言っている意味がわかんない。



妖精姉「妖精少女の母は妖精女王です」



固まる僕達に妖精姉は再度言葉を紡いだ。

誤字修正

妖精姉の言うには手紙には殿下の手紙には → 「殿下の手紙には」部分不要の為削除

要請女王の → 妖精王女の

人族がおいので → 人族が多いので

掻いていただいても → 書いていただいても

余り → あまり (数箇所修正)

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