表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(仮)  作者: イオン水
4/87

第4話 出会い

子狼が来て数日がたった。


順調に妖精少女に懐いているようで周りでじゃれあってる。

食事も妖精少女の手からなら食べるようだ。

最近の妖精少女はよく笑うようになったと思う。(可愛い!)

元々は良く笑う子だったのだろうけど怖い目にあって心を閉ざしてしまっていた。

子狼を助けて本当によかった。


ただその笑顔をまだ僕には向けてもらえてないけどね。





―さ、寂しくなんかないんだからね!







魔力の訓練はある程度の成果を見せつつある。

手当たり次第にそこらにある石や木の枝に魔力を通しているが、勝率は7割と言うところまで来た。



魔王『石程度で100%じゃないというのはマダマダだな』



厳しいなぁとも思わないでもないけど妖精少女を危険な目に合わせる訳には行かない。











僕達は国境を越え新しい国に入った。

国境は兵士が多く物々しい感じだったが、特に何も言われなかった。






僕達の旅は特に問題は無く進んでいる。

たまにある野獣とのエンカウントは問題に含まれない。食糧補給になるしね。




2日目の晩に美女さんが「他の旅人などと会わなくなりました」と呟いていたのが印象に残った。

確かにここ数日、旅人も商人ともすれ違っていない。

ただそういう事もあるかな、という程度のものだった。






3日目の昼前に村を発見したので寄る。


近づくと至るところが壊れており廃村だとわかった。

村に入ると黒焦げた家などが見受けられる。

炭になった部分を見る限り燃えてある程度の日にちがたっているようだ。

壊されたり焼けたりしている家を見る限り野盗の仕業かもしれない。

野盗の5人や10人程度なら美女さん一人で大丈夫だと思うけど村が一つ潰れるような状況というのを鑑み、この場を離れたほうがいいという事になり廃村を後にする。






5日目の夕刻




争う声が聞こえて馬車を止める。


街道脇の森のほうから複数の人間が飛び出してきた。


どうやら大柄な人物に手を引かれた小柄な人物が複数人の人間に追われているようだ。

追われているほうはどちらもフードを被っている為にどういう人物かは分からない。

相手はこちらに気がついたようで僕らと違うほうへ行こうとして小柄な人物が躓き転んでしまった為に後から追ってきた集団に追いつかれる。



「逃がすな!」「取り囲め!!」



大柄な人物は小柄な人物を庇う様に敵に剣を向ける。





―なんなんだ?


状況が良く分からない僕。



美女さん「いつでもいける準備をしてください。妖精少女は馬車に隠れていてくださいね」



美女さんが小声で言ってくる。


追いかけ来たのは同じデザインの鎧をきた男が9人。

そのうちの一人が顎で合図を送ると2人が馬車に向けて走ってきた。

その様子を見た大柄な男がこちらへ「逃げろ!」と声を張り上げる




美女さん「2人こちらに来るようです。どうやら私達を害するつもりのようです。状況はわかりませんが仕方ありません。あの2人を助けます。タイミングを見計らって馬車から出て注意をひきつけてください」



馬車に近づいた男に美女さんが「い、一体なんでしょう?」と怯えたような声を出す。



魔王『いつも笑顔の美女の怯えた声の顔ってどんなんだ?』



馬車で息を殺して隠れている僕に魔王の呟きが聞こえる。



―うわ~、どんな顔だろう?



緊張感溢れるシーンなのにもう僕は好奇心が一杯で仕方ない。

もう敵に発見されてもいいから見に行っちゃおうかな。

というものすごい誘惑に駆られながら我慢する。



鎧男「旅人か?」


美女さん「は、はい」


鎧男「女か・・・悪く思うな」




その声を聴いた瞬間に僕は馬車から飛び出す。

鎧2人はこちらを振り返り警戒をしようとしたがその隙に美女さんが2人を斬り伏せていた。



―くそ!



魔王『残念ながら美女の顔は見えなかったな』



―本当に!じゃなくて!!



美女さん「行きます」



笑顔で僕に告げて走り出す美女さんに僕も続く。

囲まれていた人物は7人のうち1人を斬り伏せていたが人を一人を庇って戦って居るために至る所から流血していた。

だがいまだ倒れることは無く6人を威嚇しながら隙をうかがっているようだ。

小柄な人物も剣を構えてはいるがあまり使えそうな感じではない。


周りを囲んでいる鎧のうち何人かがこちらに気がつき仲間に警告の声を発する。



美女さん「助太刀します」



短く発した美女さんと僕は近くの鎧男にそれぞれ斬りかかる。



大柄な男「・・・感謝する」



そういうと僕と剣を合わせている鎧男を後ろから斬り伏せ小柄な人物の手を無理やり引き、僕と美女さんの間を抜けると小柄な人物を隠すように反転して鎧男に対峙した。

先ほど大柄な男が斬った1人と、一瞬で美女さんが1人を斬り伏せていたので残りは4人。

4対3では劣勢と見たより男達のリーダーらしき人物が「引くぞ」というと全員背を向けて走り出した。


背を向ける一瞬の隙に美女さんが距離を詰めリーダーらしき鎧男の背中をばっさり。

その行動にぎょっとして1人の動きが止まった瞬間を見逃すことなくあっさりと斬り伏せる美女さん。



―容赦ない。



残り2人は気がつかなかったのかどうか分からないがそのまま走って逃げていった。








「ふぅ」と一息ついて剣の血のりを払う美女さん。

ただ鞘に収めることは無く剣を半身で隠すように立つ。



美女さん「状況が良く分からないのですが説明いただけますか?」ニコニコ


大柄な男「あ、ああ・・・」


美女さんの笑顔に若干押され気味の大柄な男。

僕と美女さんがまだ抜き身なのを確認し自分の剣を収める。

それを見た美女さんが剣を収めるのを横目で見ながら僕も剣を収めた。

大柄な男はフードから顔を出すと若くきこえる声よりナイスなミドルだった。



大柄な男「まずは助け立ちして頂き感謝の念に耐えない」


美女さん「いえ、成り行きですから」


大柄な男「詳しい説明をしたいが時間が惜しい」


美女さん「戻ってきます?」


大柄な男「来る」



「ふむ」と笑顔で首を傾げる美女さん



美女さん「野盗じゃないですよね」死体をチラリ


大柄な男「うむ。この国の騎士だ」


美女さん「巻き込まれました?」


大柄な男「すまない」


美女さん「ではまずはここを離れましょう。当てはありますか?」


大柄な男「距離はあるが・・・」


美女さん「説明してくださいね?」



あれ?

僕の良く分からないうちに話が進んでる。



魔王『脇役だから仕方あるまい』



何!その衝撃の事実!?






――――――――――






馬車に戻って妖精少女に大丈夫という事を伝える。

妖精少女を見た大柄な男は「こんな幼子が大事無くてよかった・・・」と呟いていたので案外いい人なのかも知れない。


自己紹介での僕達の関係は僕は貴族の3男で見聞を広げる旅をしている。

美女さんはその従者で妖精少女は旅の途中で出会った孤児で分け合って一緒に旅をしているという説明をした。

どちらかと言えば美女さんの従者が僕という感じだけど黙っておいた。

相手は大柄な男と子供と名乗のる。

御者は僕と大柄な男が勤め馬車の中に美女さんと妖精少女と子供が乗り込んみ大柄な男の指示により移動した。





馬車の中と外だが布一枚なので話す分にはあまり問題は無い。


妖精少女は少し子供のことに興味を引きながらも美女さんに引っ付いており子狼をひざの上に乗せている。

子供はフードを目深く被りひざを抱えているが妖精少女の手元の子狼を見ているようだ。



大柄な男「この国の現状はどこまでご存知で?」


美女さん「殆ど知りませんね」






どうやらこの国は前王が崩御して第一王子が後を継ぐ予定だったが

戴冠直前に暗殺されてしまったそうだ。

その後、病弱な第2王子と第3王子のどちらが王になるかで取り巻きに寄る争いが起こったが第2王子が病死(というが本当は不明)の為に第3王子が帝位についた。

しかし政は自分を支持した貴族に任せ贅の限りを尽くし、貴族も自分達の富と権力の為だけに政を行うようになり国が荒れていった。


第3王子即位1年後、今から約4ヶ月ほど前に密かに準備を進めていた第4王子と第2王女は、共に民衆の為に立ち上がるべくクーデターを起こすも裏切りに合い負けてしまう。

第4王子も第2王女も何とか逃げ出す事が出来たようが今は行方が知れず大柄な男と小柄な人物はクーデター加担者として追われている状況らしい。



大柄な男「我々は各地に隠れ力を貯めながら時期を待っている状況です」



なるほどね~。物語によくあるパターンだ。



僕「じゃぁもしかしてそっちの小柄な人物が第2王女だったり」



まぁ子供と名乗ってたので明らかに違うけど。



何気ない気持ちで言った僕の冗談に大柄な男と子供がピクリと動く。



魔王『ほう』


美女さん「そうだと面白いですね。なんでそう思うんです?」



ん~僕の昔読んだ本ではどうだったかな?



僕「だってたった二人に正規の国の騎士が追っかけて来るんだよ。大げさな」


美女さん「でもクーデターの主要メンバーならありえるのでは?」


僕「うん。でも捕まえず殺そうとしたり目撃者を消そうとしたりするのは生きていて欲しくないけど騎士が殺害した事が噂になるのはまずい人物という事になる」


美女さん「なるほど」


僕「大柄な男さんも自分の身を盾にしてでも子供を守っていた。屈強の戦士である大柄な男さんが明らかに弱いであろう子供をそこまでして守るとしたら、よほどの重要人物なんだろうしね」


美女さん「もしかしたら自分が巻き込んだ相手をたとえそれが誰であっても見殺しに出来ない性格なだけなのかもしれませんが?」


僕「そうなんだけどね。でももし途中で出会った見知らぬ子供だとしたら騎士がそこまで執拗に狙うかな?」


大柄な男「というと?」



馬車の空気が少し変わったことに気がつかずに僕は自分が読んだ物語の内容を話していた。



僕「だってもしただの子供なら大柄な男さんを殺した後に口封じでも何でもすればいいのに、騎士達は大柄な男さんではなく子供を優先的に執拗に狙っていたように見えたよ」


大柄な男「もし仮にこの子供が重要人物だとして、何故王子ではなく王女なのだ?その理由は?」


僕「ん~あるにはあるけど・・・」


大柄な男「ぜひ聞いてみたいな」


僕「国の王子ともなると少しは剣術位は習っているはず。それにも関わらず剣を扱うのが不慣れな感じがした」


大柄な男「ふむ」


僕「それと手を引かれていて自分の走りが出来ないとはいえ走りなれていない感じがもう一つ」


大柄な男「・・・」


僕「でも一番の理由は・・・」



そこまで言ってちょっと馬鹿らしい理由過ぎるかな?と思い口を濁す



大柄な男「理由は?」


僕「え~っと・・・」



今まで自分が読んでた物語と照らし合わせてしたり顔で話していたことが急に恥ずかしくなる。

振り返って馬車のほうを見ると全員が僕を見つめていた。

子供ですらフードの奥から鋭い目を向けている。



ううぅ・・・女の子呼ばわりした事に怒っているのかな。



子供の目を見つめ「冗談だよ」という感じで笑いながら



僕「だって王子様もいいけど、どうせ助けるなら可憐な王女様のほうがうれしいから」








場の空気が死んだ。








見つめていた子供の目が大きく見開かれる。



―ああ、呆れられた・・・



馬車のガラガラという音だけが大きく聞こえる。



大柄な男「っぶわっははははははっははは」



大柄な男が大笑いをしてくれる。

止まっていた空気が動き出す。

笑っていてくれてありがとうございます。助かりました。



魔王『鈍いのかそうでないのか・・・』



いつもは「うるさい」で片付けるけど空気を読めずしたり顔で読んだ物語と照らし合わせて妄想をしゃべってたのは自分なので今日は甘んじで受け取る。



魔王『やはり鈍いだけか』



―やっぱりうるさいよ。



何回も言わなくてもいいじゃないか。



魔王『やれやれ』


大柄な男「素晴らしい推理でした」



それだけ大笑いしていただければ幸いです。



大柄な男「どうでしょう?彼らなら信用できると私は思いますが」



と大柄な男が馬車の中の子供に話しかける。



子供「爺に任せる」



子供は僕を見つめた後に大柄な子供に向かって囁いた。



大柄な男 改め 爺「真にすばらしい推理でした」



クエスチョンマークで一杯の僕に爺が言う。



大柄な男「私はこの国で騎士団団長を勤め上げた後に第2王女付きの近衛騎士隊長をしておりました。そしてあちらにいらっしゃるお方が・・・」


子供「自分で自己紹介をします」



そういいながら取り払ったフードの中から10代の綺麗な少女が出ていた。

僕より少し上かな?



子供「あなたの仰るとおり、私はこの国の第2王女です」



あまりの超展開に思考が尽いていけずにただ第2王女の目を見つめてしまう。



魔王『お前が予想した通りじゃないか』



―そうだけど!



美女さん「あらら。あまりの美しさに目を奪われているんですか?」



ただ見つめ続ける僕に美女さんの楽しそうな声がし第2王女が恥ずかしそうにつっと目線をそらす。




―違いますから!あまりの展開にフリーズしただけですから!!



無駄にあわあわする僕。

美女さんはもっと早くに気がついていたのかな?

もしかしたら最初からかも知れないと思ってしまう所が謎だよね。



魔王『最初からだろうな』



妖精少女は「当たった~すごい」と目を丸くして手をたたき僕を賞賛していた(可愛い!)

ちょっとほっこりした。



魔王『そればっかりだな』



―妖精少女故、致し方なし!



第2王女と爺は別の拠点にいる所を襲撃され逃げてきたて隠れながら落ち延びているたところ発見されてしまい、これまでかと思った時に僕たちに出会った。

これからの方針を聞くと



爺「出来れば姫にはこのまま一度国外に出たほうが安全なのだが・・・」


子供 改め 姫「民を見捨てることは出来ません!」



という姫の強い希望によりとりあえず信頼できる者の所へ向かう予定らしい。



爺「勝手で申し訳ありませんがその者の場所まで行って頂けないでしょうか?」




爺曰く、このまま国境へ向かっても先ほど逃げていった者たちが戻ってきて捕まるかもしれない。

もし関所に着いたとしても馬車の形などの手配書が回っている可能性が高いので信頼の置ける者の所まで行って頂いたら新たな馬車を用意させる。



悪くない申し出だけど問題はその人が本当に信頼できるのか?とう問題。

行ってみたのの敵が待ち伏せしていて捕まるというのは勘弁して欲しい。



爺「それは大丈夫です。奴は昔に私と一緒に騎士団にいた者ですが領地に戻った後も登城の度に姫に会いに来られてました。間違いなく姫の味方をしてくれる男です」


姫「幼い頃は会うたびにお願いをして騎士の話をしてもらいました」



懐かしそうに目を細める姫。



爺「あやつは頑固者です。上が変わった程度で姫への忠誠は変わらない男です」



爺にも翁にも姫は孫のような存在なのかな?

チラリと見ると美人さんがいつも通り微笑んでいた。



僕「分かりました。その方の領地へ向かいましょう」



頷く僕に爺は腕を掴んで振り回しながら「ありがとう」と何度も言った。

美人さんは相変わらずの笑顔で、妖精少女はいつの間にか美人さんの膝枕で寝ている(可愛い!)

姫を見るとつっとすぐに目線をそらされてしまう。



―嫌われてしまったかな・・・







―そう言えば魔王自身も自分の国では王位を争っているのにはずなのに他の国の内乱に巻き込まれるなんてちょっと笑えるね。







魔王『そうだな・・・』遠い目







―なんか色々ごめん!

誤字修正

鎧男に退治した → 鎧男に対峙した

充てはありますか → 当てはありますか

体感直前 → 戴冠直前

第4王女 → 第2王女 (数箇所修正)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ