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(仮)  作者: イオン水
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第34話 家族

目を覚ますと知らない部屋で寝ており、有力貴族の娘が傍らに居た。




どこかで使った言い回しである。

魔王が未だに歌っているのがうざいが、今の僕は魔王の事より現状把握で必死だった。



僕「え…?」


有力貴族の娘「しっ―」



驚きの声を上げようとした僕に有力貴族の娘が「静かに」と挙動で示して「姫が起きてしまうわ」と言った。

そして目線を下に向けると有力貴族の娘の胸に顔を埋める様に抱きついた姫が寝ていた。



―余計に意味が分からない!



混乱で何がなんだか分からないのでとりあえず逃げよう。

そんな混乱の極みにあった僕は二人から離れようとした所を有力貴族の娘に肩を捕まれる。



有力貴族の娘「そっちも危ないわ。妖精少女を潰してしまう」



僕が後ろを振り返ると妖精少女が丸まって寝ていた(かわいい!)



―じゃなくて!魔王!!歌ってないで説明して!


魔王『…何をだ?』


―どういう事なの?


魔王『どうも何も…見たままだが?』


―なんでこんな事に!?


魔王『お主が自分でした事だぞ?』


―そんな訳は―


魔王『無いと言い切れるのか?』



昨日の記憶が無い僕は魔王の言葉に反論できずに黙り込む。

黙った僕に何を思ったのか有力貴族の娘が小声で話しかけてきた。



有力貴族の娘「…何も無かったから安心して」



その言葉に僕は有力貴族の娘を見る。



有力貴族の娘「妖精少女もいるのに何かある訳無いでしょう」


僕「た、確かに…」


有力貴族の娘「それに私達はもう貴方のもの。何があってもおかしくは無いけど」



そう言うと昨日、僕の杯にお酒を注いだ時と同じ顔をした。



有力貴族の娘「それにしても…昨日の事覚えてないの?」


僕「え?」


有力貴族の娘「この状況には貴方がしたのよ?」


僕「えぇモガ!」



あまりの事に声を上げそうにあった僕の口を急いで塞ぐ有力貴族の娘。

「大きな声はダメ!」と小声で言う。

そして昨日の僕の行動を説明しだした。





――――――――――





姫と有力貴族のお代わりコンボはもう何杯目になるか分からない。

やっとボトルが空になって杯に次が注がれる前に姫からボトルを奪い自分で杯に満たす。



僕「姫、返杯です。受けてください」



僕の差し出した杯を嬉しそうな恥ずかしそうな顔で受け取った姫は有力貴族の娘が「姫ちゃん!」と止めようとする前にぐいっと煽る。

そして僕に杯を笑顔で返すと崩れるように意識を飛ばした。



僕「姫にはちょっときつかったようですね」


有力貴族の娘「当たり前です!どうするつもりですか!!」



眠っている姫を抱きかかえなおした僕に美女さんが「寝所までお連れしてください」と言うので歩き出す。

有力貴族の娘は「え、ちょ、まって」そう言うと僕達を追いかける。

半分眠りかけながら椅子に座ってた妖精少女に美女さんが「寝所に行きましょうか」と言って抱きかかえると爺に「お先に失礼します」と言うと僕達の後に付いていった。


有力貴族の娘は何か言いたそうだったが黙って姫の寝所まで着いてきた。

そこで何か言ってやろうと口を開く前に僕が「扉を開けてください」と言言うと仕方なく扉を開ける。

僕は開いた扉を潜り寝台に姫をそっと下ろす。



有力貴族の娘「…ありがとうございました。後は私がしますので、殿方は退室してください」



そう言われても姫ががっちり僕の服を掴んでいるので動けない。

無理にでも指をはがそうかと考えてやめた。



僕「姫が掴んで離れません」


有力貴族の娘「え?」


僕「仕方ないので僕もこのまま寝ましょう」


有力貴族の娘「何を言って…」



僕は姫の横に転がる。

それを見た有力貴族の娘が「ちょっと!」と近づいてきた。



僕「何ですか?」


有力貴族の娘「婚姻するとは言え、発表前にこのような事はまずいわよ!」


僕「そうですか?」


有力貴族の娘「もちろんです!」



そう言うと僕の横に妖精少女を寝かしている美女さんに「そう思いますよね!」と言う。

美女さんは「そうですねぇ…」と呟いて



美女さん「明日、起きられる頃にお食事をお持ちしましょうか?」


有力貴族の娘「明日の食事の心配じゃないの!」


美女さん「若は酔った女性に何もしませんよ。そのような度胸もありません」


僕「酷い言われようだ」


魔王『だが事実だ』



美女さんの物言いに僕は笑う。



僕「何もしませんよ。度胸も無いですからね」


有力貴族の娘「そういう問題じゃないです!」


美女さん「心配なら有力貴族の娘様も一緒にお休みになればいいじゃないですか」



その言葉を聴いた僕は「それはそうだ」と言うと有力貴族の娘の腕を引いて寝台に誘う。

不意をつかれた有力貴族の娘は酔っていた所為もあるのかバランスを崩し寝台に倒れこむ。

姫を押しつぶすまいと必死で体をそらした結果、寝台に旨く横になる。



有力貴族の娘「一体何を―」


僕「姫も有力貴族の娘が一緒のほうがいいですよね」



そう話しかけると姫は「ふに」と目を薄く開けて「ひゃい?」と言った。

もう一度僕が言うと横になっている有力貴族の娘を見ると「一緒がいい~」と有力貴族の娘に抱きついた。

それに嬉しいような怒ったような有力貴族の娘は、しかし姫を無下に扱う事も出来ずにされるがままにしていた結果、がっちりと姫にホールドされ動けなくなった。

それを見て僕は「うんうん」と頷く。



美女さん「では明日、食事をお持ちしますね」


有力貴族の娘「ちょっと待てください!このまま良くつもりですか?」


美女さん「はい。何か問題でも?」


有力貴族の娘「大有りです!着替えても無いのに」



俺を聞いた美女さんは「確かに寝苦しいですね」と言う。

姫も有力貴族の娘もそれ程過度の装飾のある服を着てはいないが、それでもちょっとしたドレスを着ている。

それでは確かに窮屈で眠りにくいだろう。

美女さんは「わかりました」と言うと有力貴族の娘の裏に回った。



有力貴族の娘「え、ちょ、ええ、な、何を…」


美女さん「後ろのボタンを外しました」


有力貴族の娘「そうじゃなくて、何で!!」


美女さん「このままでは苦しくて寝にくいと申されたので」


湯力貴族の娘「そうじゃなくて『着替えてもいない』と言ったの!」


美女さん「でもこの状態では着替えるのは不可能かと」



がっちり抱きついた姫を見て「姫のボタンは有力貴族の娘様が外してあげてください」と言う。



美女さん「若が外しても問題ないですけど」


有力貴族の娘「問題ありまりです!それに殿方の前で肌を晒すなんて!!」


美女さん「殿方の前で晒すのは問題ですが、若の前でなら問題ないでしょう」


有力貴族の娘「何故!?」


美女さん「お二人とも事実上はもう若の奥様なんですよ?」



「何処に問題が?」と首を傾げる美女さんに有力貴族の娘が言葉を無くす。



美女さん「それに若はもう眠ってます」



驚いて見ると僕はもう寝ていたらしい。

それを見て気が抜けた有力貴族の娘に美女さんが



美女さん「姫様も窮屈だと思いますので、服を楽にしてあげてください」



そう言うと部屋の明かりを消して美女さんが退出して行った。







――――――――――






そうして朝を迎えたらしい。



―何も無くてよかった



そう心から思う僕に魔王が笑うのが伝わる。



―知ってたなら歌ってないで説明してよ!


魔王『見たままだ、と言ったであろう』


―確かにそうだけど!



説明してくれた有力貴族の娘を眺めていると居心地悪そうに僕を見つめ返しながら



有力貴族の娘「その所為で着替える間もなく眠らされたんですけどね」


僕「ご、ごめん」


有力貴族の娘「別に構いませんけど」



そういう有力貴族の娘の疲れた感じの雰囲気に引っかかりを覚える。



僕「もしかして休めてない?」


有力貴族の娘「そ、そんなこと無いわ」


僕「姫がずっと抱きついていたので眠りにくかったのかな。ごめんね」


有力貴族の娘「それはいつもなので問題無いです」


僕「そ、そうなの?じゃあ何で…」


有力貴族の娘「――で」


僕「何か言った?」


有力貴族の娘「緊張で」


僕「え?」


有力貴族の娘「殿方が一緒に寝ていると言う状況が初めてで緊張であまり寝れなかったのです!」



「悪い事をしたな」と思いつつも顔を真っ赤に言う有力貴族の娘に可愛いなと微笑んでしまう。

それを見咎めて「何ですか!」と言う有力貴族に僕は言った。



僕「思ってたんだけどさ」


有力貴族の娘「何か?」


僕「僕にそこまで改まった言葉を使う必要は無いよ」


有力貴族の娘「でも王族になられる方にぞんざいな言葉を使う事など出来ませんし、周りも許しません」


僕「そっか…対外的には無理なのか」


有力貴族の娘「当たり前です。王族なのですよ。貴方をぞんざいに扱う事は姫をぞんざいに扱う事と同意義です」


僕「なるほど…じゃあ僕達だけの時だけ、普通に話そうよ」


有力貴族の娘「何を…」


僕「僕達だけしかいなければ問題ないよ。姫も気にしないはず」


有力貴族の娘「しかし―」


僕「人が居る時と使い分け出来ないなら仕方ないけど」


有力貴族の娘「それくらい出来ますが―」


僕「ならいいじゃない」


有力貴族の娘「わかりました―わかったわ」



そう言った有力貴族の娘に僕は満足げに頷く。

それを見た有力貴族の娘も笑顔を浮かべた。




そうして二人で笑っていると後ろで「ふえっ」と声が上がった。

どうやら妖精少女が起きたらしい。

寝ぼけ眼で目を擦っていた妖精少女は僕を見ると「おにいちゃん!」と嬉しそうに抱きついてきた。

僕は妖精少女を受け止めながら頭を撫でてあげると目を細めて笑いながら「一緒だったなんて気がつかなかった!」と言った後に「有力貴族のお姉ちゃんもおはよう!」と元気に言う。

有力貴族の娘が「おはよう」と微笑むのを見ながら「妖精少女は疲れて寝ちゃってたからね」と言うと「今日も一緒に寝ようね!」と気の早い事を言い出す。

それに「今日は無理かな」と言うと「え~」とベッドで跳ねる。

横にいた子狼がバウンドしているが2匹は意地でも起きないつもりなのか丸まったまま動かない。



僕「妖精少女、まだ姫が寝てるから跳ねちゃだめだよ」



そう言うと寝ている姫に気がついて「ごめんなさい」と言う。

それに「怒っては無いよ」と言って優しく頭を撫でる。


だが時既に遅し、姫は周りの騒がしさに目を開けた。



姫「っ頭が、痛い…です」


有力貴族の娘「姫ちゃん、おはよう」


姫「おはよう」


有力貴族の娘「「姫ちゃん、落ち着いて聞いてね」


姫「どうしたの?」


妖精少女「姫お姉ちゃん、おはよう!」



その言葉に振り返りながら妖精少女に挨拶をしようとして僕を認めると固まった。



僕「おおはよう」


姫「え、あ、おはよう、ございます?」



混乱で疑問系になった姫は僕と同じ布団で寝ている事に気がつくと声にならない悲鳴を上げてパニックになった。





僕と有力貴族の娘で「何も無かった」「酔ってすぐ寝た」という話をし続けて姫を何とか宥める。

そして落ち着いてから有力貴族の娘が昨日の状況を説明する。

最後まで説明を聞くと「ご迷惑をおかけしました」と姫が小声で謝罪した。



僕「姫が謝る必要は無いよ!僕も酔っ払って寝てしまってごめんね」


姫「いえ…」


有力貴族の娘「全くよ!まだ婚姻していない娘の寝所に一緒に寝ようだなんて」



僕にぽんぽんと悪態をつく有力貴族の娘を見て姫が「あれ?」と言う。



有力貴族の娘「どうしたのですか?」


姫「ううん、有力貴族の娘が若に対して普通に話していたのでビックリしただけ」


有力貴族の娘「―っ!」


僕「僕がせめて僕らしかいない時位普通に話して欲しいとお願いしたんだ」


姫「そうだったんですか」


僕「うん」


姫「二人が仲良くなった感じがしてすごい嬉しい」


有力貴族の娘「姫ちゃん!」


姫「そうだ!私にも私達のときは昔のように話して」


有力貴族の娘「それは…」


姫「だめ?」


有力貴族の娘「だめ、です」


姫「どうしても」


有力貴族の娘「どうしても、です」


姫「お願い」


有力貴族の娘「―っ!!」



有力貴族の娘は姫のお願い攻撃にノックダウンする。

僕もあのお願い攻撃は耐え切れまい。

こくこくと頷く有力貴族に「ありがとう」と姫が微笑む。



―ダウーン…ワン、ツー、スリー


魔王『何だそれは?』


―独り言、意味は無いから気にはしないで



仲良く笑う二人に「私も~」と妖精少女が突貫する。

その姿を見ていた僕はふと思って口に出す。



僕「姫も僕達だけの時は普通に話そうか」


姫「え?」


僕「ほら、僕達は普通なのに姫だけ違うっておかしいでしょ?」


姫「でも私はこの話し方が普通で」


僕「じゃあ気を抜いて話してみようか。僕たちだけ硬く話す必要は無いよ」


有力貴族の娘「そうね」


姫「でもどう話せばいいのか」


僕「有力貴族の話し方を思い出してみたら?」



姫は考え込むと「わか…たわ」と頷いた。



僕「まあ無理にいう必要は無いよ。少しずつ使えるようになればいいから」


姫「はい、ええ」



その言い方に僕と有力貴族の娘が笑い、それを見て妖精少女が笑う。

姫はそれを見ていたが自分の言い方が笑われていると分かると拗ねてしまった。

姫を宥めていると美女さんが食事を持って部屋を訪れた。

美女さんが食事の用意をしている間に「後ろを向いて」と有力貴族の娘に言われ二人は服の乱れを直した。


食事を並べる美女さんを見ながらふと思う。



僕「美女さんはもう食事は取ったの?」


美女さん「まだですよ」


僕「でも4人分しかないよ?」


美女さん「私は後で頂きます」


僕「一緒に食べようよ」


姫「そうですよ」


僕「美女さんの分を持ってくるのに時間掛かる?」


美女さん「それ程時間はかかりませんが」


僕「じゃあここは僕たちがやって置くから、美女さんの分も持ってきてよ」


有力貴族の娘「そうね。皆で食べたほうがおいしいわ」


姫「それにここに居るのは若の奥さんだけですし、気にする必要は―無いわ。それに―」



「家族は一緒に食事を取ると聞いたわ」と姫が嬉しそうに言う。

どうやら王族は違うらしく、家族で食卓を囲むのは夢らしい。

その一言に僕は何も言えなくなる。

それを見た美女さんは「わかりました」と微笑むと自分の分を取りに行き、すぐに戻ってくる。

そして皿を並べるとみんなで食事を取った。

誤字修正

歌ているのが → 歌っているのが

竜力貴族の娘 → 有力貴族の娘

子の話し方 → この話し方

笑顔で帰す → 笑顔で返す

誤る必要 → 謝る必要

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