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(仮)  作者: イオン水
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第26話 王宮ハーレム物語

王子「姫がそんな事を―?」



頷く僕と呆然とする王子。

そうだよな。

自分の好きな人が偽装とはいえ妾扱いされるんだ。



僕「本当は王子と婚姻できたらいいのかもしれないんだけど―」



「あの子に囲われるのは想像できません」とい言った有力貴族の娘の顔が浮かぶ。



王子「―いえ、それは無理でしょう」



考え込んでた王子が口を開いた。



王子「王位を継ぐ予定の僕が、現政府の貴族との結びつきを強くするのは絶対あってはならない事です。それに―」



「もしそうなっても有力貴族の娘が断るでしょう―」と。

そういう王子は無表情ではないものの、嬉しいのか悲しいのか苦しいのか楽しいのか分からない表情をしている。



僕「あくまで偽装だから安心してね」


王子「え?そうなんですか?」


僕「もちろんだよ!」


王子「何故?」


僕「何故って―王子は好きなんでしょ?有力貴族の娘の事」



僕が言うと「はい?」と王子が聞き返した。



僕「え?好きだから助けたかったんじゃないの??」


王子「まあ大まかに分類すれば好きですが、恋愛感情はありませんよ」


僕「本気で?強がりとかじゃなく?正直に?」


王子「嘘でも強がりでもなく本気です」


僕「じゃあ何で―」


王子「幼馴染が危ないんです。どうにか助けたいと思うのは当然ではないですか」


僕「そうかもしれないけど―」


王子「それに有力貴族の娘は姉のような存在ですからね」


僕「その気持ちを突き詰めたら恋愛感情だったりとか!」


王子「無いですね」



笑顔の王子。



王子「だって、子供の頃に色々酷い目に合わされましたから。将来結婚するならおしとやかな女性がいいと何度思ったか」


僕「そう…なの?」


王子「そうです。もし僕の后にという話が出たら全力で拒否しますね」


―そんなになんだ…


僕「…でも僕は引きうける件についてはどうなんですか?有力貴族の娘に恋愛感情は無くても友情はあるんでしょう?」


王子「そうですね―若ならいいと思います」


僕「偽装だから?」


王子「偽装じゃなくてもいいんじゃないですか?」


僕「は?」


王子「普通に有力貴族の娘を囲えばいいじゃないですか」



また王族の理解できない部分が出た!

何なの?囲うとか囲わないとか!

王子がそういう事は言わないで欲しい!

…何となく。



僕「何を―」


王子「姫姉さまも納得しているのでしょう?問題ないじゃないですか」


僕「…そこら辺が良く分からないんだけど」


王子「そうですか?」



「ふむ…」と考える王子に僕の思っている事を言う。

なぜ姫も有力貴族の娘も王子も妾の存在を普通に受け入れるのか。

もしかしてこの国は一夫多妻制なのか?

それとも王族だからなのか?



王子「この国は一夫一妻制です。王族だからというのはありますね。子を為す義務がありますし」


僕「―でも僕はこの国の王位継承権は無い」


王子「ありますよ?」


僕「は?」


王子「王位継承権で言うと第2位あたりです。僕に子供が出来たら話は変わりますが、今の段階では第2位です」


僕「なん―で」


王子「正確には王位継承権第2位は姫姉さまなのですが、姫姉さまが女王として付いたら自動的に王配です」



もしかしなくても謀られた!

王子が笑顔で「そう考えるとすぐに退位するのもアリかもしれません」と言う。



僕「そんな事をしたら国を出奔して二度と戻りません」


王子「冗談です」



その冗談は笑えません。

王子を凝視していると「本当に冗談です」と苦笑した。



王子「まあそういう事で若も王族の一員なんです」


僕「……」


王子「まあそんなことは関係なく当人同士が良ければ問題ないのでは?」


僕「―友人が妾などにされるのは問題ないんですか?」


王子「普通の妾なら考え直すように言ったかも―いえ、僕の言葉で考えを改めるような人ではないですけどね」


僕「では何故」


王子「若だから、ですかね」


僕「はい?」


王子「僕は若を高く買ってます。その若なら姫姉さまも有力貴族の娘を任せて安心だと考えてます」



何だろう。

言ってる意味は分かるけど、考え方が理解できない。



魔王『なら考えずに受け入れればよかろう』


―そう、なのか?


魔王『別に受け入れても不具合があるわけではあるまい』


―まだわからない



王子「それに姫姉さまも納得し、有力貴族の娘は受け入れたのでしょう?」


僕「え、ええ―」


王子「なら問題ないでしょう。有力貴族の娘を本当に妾にすればいいと思います」


僕「何を―」


王子「有力貴族の娘がこの件を了承したのであるなら、受けれるでしょう」


僕「―それは、できません」



王子は首をかしげ「なぜ?」と言う。



王子「姫姉さまを思っての事なら、姫姉さまも有力貴族の娘ならと納得したので問題ないでしょう?」


僕「そういう問題じゃないんです!」


王子「ではどのような問題で?」


僕「―政治の道具のように女性を扱うのは好きじゃない」



その言葉に王子は目を細め「そんなあなただからこそ―」と呟く。



王子「何度も言いますが有力貴族の娘も了承してますよ?」


僕「それは一族の女子供を守るため、にです」


王子「それがいけないと?」


僕「そうは言いません。でも僕は嫌なんです」


王子「では純粋に愛情から有力貴族の娘が本当の妾にしてくれと言ってきたら受け入れますか?」


僕「それもその時にならないとわからない」


王子「そうですか―」



王子は少し考えた振りををして「では」と切り出す。



王子「今の関係は回避できないので、今後の有力貴族の娘との付き合いで人となりを見て判断すればいいじゃないですか」


僕「そう、ですね。別に無理やり手篭めにしろといってる訳じゃないんですからね」


王子「でも姫と婚約した後は月の満ち欠け毎(約半月)に2~3回は寝所に呼ばないとダメですよ?」


僕「は?」



王子がまた良く分からない事を言い出す。

何時からここは異世界空間になったのだ?



魔王『お主からしたら最初から異世界だな』


―冷静なツッコミありがとう!それよりまた王子が変なことを言い出した!!


魔王『何処が変だ?』


王子「最低でもそれくらいの頻度で寝所に呼ばないと有力貴族の娘の立場が悪くなりますね」


魔王『そうだな。妾の意義は夜伽が世継ぎを作ることだ。それが寝所にも呼ばれないとなると肩身は狭かろう』


王子「場合によっては追放という事になり、一族の女性と子供を守る後ろ盾を無くす事になります」


魔王『そうだな。主に見向きもされない妾など価値も無いからな』


王子「逆に言うと有力貴族の娘を寝所に呼ぶ回数が多ければ多いほど、身の安全は守られます」


魔王『だが正室より多いとそれはそれで問題が発生するがな』


―もう訳が分からないよ!


魔王『とりあえず、有力貴族の娘の意思を守りたいなら寝所に呼ぶしか無い訳だ』



脱力する僕に王子が呼びかける。



王子「最初は呼ぶだけでいいと思います。一晩を過ごしたという事実が必要で別に本当の妾にする必要もありません」



その言葉に僕は顔を上げる。


王子「後は一緒にいる中で若が納得する判断を下せばよろしいかと」



結局は現状は受け入れるしか仕方が無いという事だけはわかった。

王子が納得してくれたのは良かったが釈然としないものを感じる。





―――――――――――





夕食は静かなものだった。

いつものメンバーに加え有力貴族の娘とお付のうちの一人が同席している。

本来なら騒がしくない程度に世間話などを話しながら食事を取るのに、今日に限っては誰もが無言である。

たまに王子が「お口に合いますか?」「戦場なので大したものが用意できず申し訳ありません」等と言い、それに有力貴族の娘が如才なく答える程度である。


食事が終了した後に有力貴族の娘が口を開く。



有力貴族の娘「王子様、宜しければ食後のお茶でもご一緒いたいませんか?」



食後に2人でお茶を飲みましょう、と言うのだ。

王子は「それは素晴らしいですね。姫もご一緒しましょう」と申し出を受ける。

これで有力貴族の娘は王子と密談する場を設ける事が出来た。

有力貴族の娘を王子の后にと考える他の特使は心の中で順調に事が運んでいるとほそく笑んでいるのだろうか。



特使が自室に下がるとお茶会の部屋に皆が集まる。

王子、姫、有力貴族の娘の他に、僕、爺、翁、両騎士団団長、美女さん、妖精少女である。


妖精少女を初めて目にした有力貴族の娘は「姫に聞いてます。有力貴族の娘というの、よろしくね」と優しく微笑みかけ手を差し出した。

日頃は人見知りの妖精少女も有力貴族の娘に対しては何故か物怖じしない。

とはいえ、やはり美女さんの後ろに隠れているのだが、それでも差し出された手にちょんと触ると言うのは初対面に対しては快挙である。



有力貴族の娘「―想像以上の可愛さ!」


姫「でしょう。もう可愛くて困ってるの」


有力貴族の娘「今後は妖精少女と一緒に居られると思うと、何も苦にならないですね」


姫「子狼2匹も可愛いの。私は妖精少女と子狼と毎晩一緒に寝ているのよ」


有力貴族の娘「なんと!うらやましい―姫も妖精少女もうらやましい」



異様な盛り上がりである。

翁が咳払いすると2人は首をすくめると少し笑った。



爺「お話いただけますかな」



有力貴族の娘はそれに頷くと状況を説明した。

今の国王軍の現状、有力貴族の立場と気構え、書状の内容の意味。

そして最後に自分がここに来た理由と僕の妾になる事をいい終わるとだまった。

「妾」の部分で姫が「第4王妃です」と言ったが黙殺された。



爺「なるほど―」


翁「先程の姫の物言いから察するに、姫はこの件は納得されてると?」


姫「はい」


翁「王子は」


王子「言う事はありません」


翁「若は―納得していないが受け入れる、という顔ですね」



僕の表情から読み取ってくれたようだ。



翁「爺はどう思う」


爺「有力貴族の娘の人と成りという部分では高く評価しておる」


翁「ほう」


爺「小さな頃から知っておるでな。知識と教養は申し分無く、姫への敬意や好意は過分にある娘じゃな」



爺の言葉に有力貴族の娘は「ありがとうございます」と頭を下げた。



翁「それが国王派にいたと?」


爺「家の都合じゃな」


王子「そもそも前の戦で裏切りを知らせてくれたのは有力貴族の娘の手のものです。…残念ながら間に合いませんでしたが」


有力貴族の娘「私が知った頃にはもう遅かったんです」


翁「なるほど―」



考え込んだ翁に「お願い!」と懇願する姫。



翁「いえ、色々問題はあるのが困ったものですが、それをどうにか出来るなら良いとは思います」


王子「問題とは?」


翁「まず有力貴族の娘を受け入れて一族の女子供を助けた場合の周りの影響」


姫「元々、女性と子供は助ける予定ではないですか」


翁「命を助けるのと保護をするのとは違います」



助命は唯の助命、地位も財産も保証はされず、保護となると今まで通りとは行かなくても保護者の裁量である程度の地位は保証される。

この違いは大きい。



翁「いざ蓋を開けたら芋蔓式に助ける人間が増えても困りますしな」


有力貴族の娘「人数としては成人女性が5名、成人前の男子が4名、女子が7名、乳飲み子が3名です」


翁「それ以上は増えない?」


有力貴族の娘「はい。これは有力貴族である父の一門の者だけです。他の有力貴族の一門は含まれておりません」


翁「成人前の男子の年齢は?」


有力貴族の娘「10歳、7歳、6歳、4歳、乳飲み子が生後1年ちょっと、という所です」


翁「その者達に望む地位は?」


有力貴族の娘「お任せいたします」


翁「僅かながらの土地と財産のみで農民として、という事もありえるが?」


有力貴族の娘「そこは若の慈悲に願う他ありません」


翁「若はどう思う?」


僕「どう、と言われましても―」


魔王『通常は保護となると自分の領地の館にでも住まわす、といった所だ」


―そうなの?



黙り込んだ僕に翁が言う。



爺「大体は自分の土地に住居を与えるといった所か」


―魔王と同じ意見だ!


魔王『当たり前だ』


爺「金を与えるだけや農奴にするのも良いが」



2人(実際は3人だけど)の言葉に考える。



僕「僕には土地も財産もないしなぁ―」


翁「では土地と財産を与えましょうか」


僕「…短い付き合いでしたね」


翁「冗談じゃよ―」



油断も隙も無い老人である。



僕「そういえば住む家も無い」



僕の言葉に皆が僕を見る。



姫「…王宮ではダメなのですか?」


僕「え?王宮に住んでいいの?」


赤の騎士団団長「逆になんで王宮に住んではダメだと思うんだ」


僕「だって、王宮だよ?王様の住む場所じゃないですか」


白の騎士団団長「王族も住みますけどね。そして貴方は王族と同じ立場の人になるんです」



言われてみればそうかもしれない。

未だに姫と婚姻するというのが現実味を帯びない。



王子「王族は基本的に王宮に住みますが、中には自分の領地にお城を建てて住む人や、王宮内に自分の館を建てて住む人も居ますよ」


僕「王宮と王宮内の館は同じものでは?」


爺「王宮というのはそのまま城を指します。王宮内の館は一の郭に居を構えて住むという事です」


翁「まあ安全性で言えば王宮の方が格段に高いので王宮に館を構えるのはよっぽどの事じゃな」


僕「姫の住まいは王宮ですか?」


姫「私は王宮にある離れのような場所に住んでます」


爺「王宮の最上階近くに作られた離れがありましてな。元々は何代か前の国王が後宮として作った場所なんですが、そこを姫と第一王女が使っておりました」


姫「お姉さまが嫁いで出て行かれてからは殆どの部屋が無人ですが」


僕「後宮かぁ。そこが使えたら」


姫「別に今は後宮ではないので若と私のし、し、新居とするのは問題ないと思いますけど?」


僕「そうなんですか?でも王子が後宮を作る時に困りません?」



その言葉に王子が笑いながら「後宮を造るかどうかも分かりませんけど」と言った後に「場所は他にもありますよ」と言った。



僕「結構広いんですか?」


爺「そうですね。一番多いときで20名ほどの姫君が後宮に入ったとありますので、使用人を合わせると100名近くは住めたのでは無いでしょうか」


僕「使用人も一緒に住むんですね」


爺「女性何かと手が必要になる事が多いですから」


僕「となると―いけるかも知れませんね」


翁「いけるとは?」


僕「そこに有力貴族の娘の言う助命する人たちを入れましょう」


翁「何と?」


僕「貴族の立場は守れませんが、姫、もしくは有力貴族の娘付きの侍女としておけば問題は無いと思います」


爺「なるほど」


翁「しかしいくら子供と言え男子は入れるわけには行かんぞ」


僕「そうですね。男子は近くの部屋に住まわせて会えるようにしましょう。まさか乳飲み子までダメとは言わないでしょう」


翁「ふむ…」



翁が考え込んだ。

僕は有力貴族の娘に尋ねる。



僕「侍女という扱いはダメでしょうか」


有力貴族の娘「私には決める権利はございません」


僕「それでも意見を下さい」



僕の言葉に探るような視線をした有力貴族の娘は思案するように言葉を紡ぐ。



有力貴族の娘「―王族の侍女というのはかなりの地位のある者しかなる事が適いません。通常は貴族の娘なら、問題は無いかと思います」


僕「有力貴族の一門の女性でも?」


有力貴族の娘「中には自分を王族と同等かそれ以上と勘違いしている愚か者も居ます。しかし今回私が助命を願い出ている者たちはそんな愚か者ではございません」


僕「侍女になるのは問題ない?」


有力貴族の娘「ありません。それどころか破格の待遇です」



「本当に農奴なりにされてもおかしく無い立場ですから―」と静かに言う。



翁「そう―じゃな。若の住まいとしても、妾を囲うのにも侍女として受け入れるにも申し分ないかも知れん。警備もしやすいしな」


僕「え?僕も住むんですか?」


翁「当たり前じゃろう」



皆が「何を言ってるんだ」という顔をする。



―あれ?僕がおかしいの?


魔王『お主がおかしい』



―いきなり異世界に飛ばされて気がついたら剣と魔法の国だった。


魔王『?』


―スリル満点の冒険物だと思ったら国取り物だった。


魔王『何をいってる?』


―このまま興国物語が始まると思ったら勝利を目前に「次は後宮ハーレムもの」だと言われた。


魔王『……』


―そんな話、誰も求めてないよ!!


魔王『誰に言ってる!誰に』


―展開の速さに僕はついて行けそうにないよ


魔王『そんなに早いとは思わんが、気がつくのは遅かったな』



何処から間違ったのだろう。



魔王『最初からではないか?』

誤字修正

相違継承権 → 王位継承権

女帝 → 女王

自動的に国王です → 自動的に王配です

相違継承権 → 王位継承権

女王として着いたら → 女王として付いたら

評価しておりる → 評価しておる

着いて行けそうに → ついて行けそうに

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