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(仮)  作者: イオン水
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第25話 世界

有力貴族の娘「国王軍は現在、2つの勢力にわれています」


僕「2つ―」


有力貴族の娘「交戦を続けるべきだという一派と降伏するべきだという一派です」



「私は降伏派です」と有力貴族の娘は言う。



有力貴族の娘「降伏派はこれ以上の内乱は他国を引きいれかねないとし、反国王軍の要求を呑むつもりでした」


僕「……」


有力貴族の娘「しかし交戦派は自分達の利権が無くなる事を良しとせず、徹底抗戦を唱えております」


僕「それなのに良く特使が出せましたね」


有力貴族の娘「そこは折衷案で条件に『土地・財産・命の保障』と『戦後の権力』を折込み納得させました」


姫「貴方のお父様は―?」


有力貴族の娘「父は―有力領主は交戦派です」



その言葉に姫が息を呑む。



有力貴族の娘「ですが実情は降伏派です」


僕「そうなると―」


有力貴族の娘「この度の戦の責任を取らされるでしょう」



責任というのは処刑の事だろう。



姫「!!」


有力貴族の娘「父も、もちろん私もそれは納得しております」


姫「そんな―」


僕「では何故、交戦派と言っているのですか?」


有力貴族の娘「有力貴族の身の安全を守るためです」


僕「どういう事でしょう」


有力貴族の娘「もし今の状態で降伏派と言うと、交戦派に暗殺されかねません」


僕「……」


有力貴族の娘「交戦派と同じく愚かな発言をする事により身を守ってます。戦後に責を負う為に」


姫「―っ!」



有力貴族は戦後に責任を取る為に嘘をついてまで生き延びていると言う。



姫「なぜそこまで―」


有力貴族の娘「それが有力貴族の誇りです」



毅然と言い放つ有力貴族の娘は美しかった。



有力貴族の娘「先程の王宮からの手紙に『王子と有力貴族の娘の婚姻』と言うのがありました」


僕「ええ」


有力貴族の娘「あれも嘘です」


姫「は?」


有力貴族の娘「正確に言うと私が王都から脱出する為の嘘です」


僕「王都を出る為?」


有力貴族の娘「はい。今の王都はかなり危険な状況です。隙を見せると仲間であるはずの国王派から殺害されかねません。それを回避しつつ王子に真意を伝える為には私が出向くように仕向ける理由が必要でした」


僕「それが王子との婚姻だと?」


有力貴族の娘「ええ。そういう条件を載せた後に『直接会った方が王子を落としやすい』と言いくるめました」



中々したたかな女性である。



有力貴族の娘「私の本当の目的は内通です」


僕「内通?」


有力貴族の娘「はい。父である有力貴族が率いる一部の兵による決起と王都の開城です」


僕「それは―!」


有力貴族の娘「反国王軍が王都に来た晩に行う予定です」



有力貴族の娘の言葉が真実なのかを見抜こうとした。

それを察した有力貴族の娘が笑顔で答える。



有力貴族の娘「嘘は申しておりません。拷問をして頂いても結構です。元より、こちらに来た時点で無事に帰れるとは思ってません」



そう言うと「この場で直接体に聞きますか?」と言う有力貴族の娘に僕は首を振った。



僕「冗談でもそういう事は言わないで下さい」


有力貴族の娘「冗談ではありませんが?」


僕「なおさらたちが悪い」


有力貴族の娘「姫が気になるのでしたら別の部屋で行いましょう。ただの拷問です」


魔王『丁度いい、練習がてら試せばよいではないか』


―黙れ


僕「そんな事はしません」


有力貴族の娘「では別のものにさせますか?」


僕「それもさせません。拷問は一切しません」


有力貴族の娘「…信じると?」


僕「はい」


有力貴族の娘「何故?」


僕「貴方が姫の親友だからです」


有力貴族の娘「―そのような振りをしているだけの可能性は?」


僕「姫がそう信じてます。だから僕も信じます」



そう言うと姫が「若―」と嬉しそうに呟いた。



僕「それに僕は試されるのが気に入りません」


姫「試される?」


僕「ああ言って僕が心を動かされるか…有力貴族の娘に惑わされるかを見てたんです」


姫「何故?」


僕「姫にふさわしいか見る為でしょう」


有力貴族の娘「分かりましたか」


僕「分かりますよ。貴方の目を見れば」



挑発的にこちらを見る目を見つめる。



僕「貴方はそこまで安い人じゃない」


有力貴族の娘「私の覚悟を嘘だと?」


僕「いえ、本物でしょう」


有力貴族の娘「でしたら―」


僕「気を抜いた時に僕を殺して自害するぐらいの覚悟を持った女性を相手にする勇気はありません」


有力貴族の娘「何故そう思うのですか?」


僕「姫と似ているからです」



その言葉に息を呑む2人を見やり「似てますよ」と再度言った。



僕「見た目はもちろん性格も似てません」


有力貴族の娘「では―」


僕「でも根っこの部分、芯を持っている感じは同じだと感じました。さすが親友同士ですね」



そう言うと姫は嬉しそうに、有力貴族の娘は顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。



有力貴族の娘「こ、婚姻は国王軍を騙す嘘ではありますが、本当にしない訳ではありません」


姫「有力貴族の娘?」


有力貴族の娘「王子は無理でも我が一族の存亡の為に誰でもいいから有力な人物に取り入ろうと考えてまいりました」


姫「―っ!」



その言葉に姫が僕を仰ぎ見る。

「どうにかできないか?」という事だろう。

必死で頭を回転させる。



僕「一族の存亡とは、どこまで助かればと考えてますか?」


有力貴族の娘「成人男子は仕方ないとしても、女性と成人前の子供の命と、生活の保障」


僕「財産、ではなく生活の保障?」


有力貴族の娘「そこまで高望みは出来ません」



女子供は助命と決めてはいる。

ただ有力貴族の一門となると状況によっては成人前でも男児は全て処刑の対象になる可能性が高い。

それを成人前の男児まで確実に助けるほどの力を持った人物となると誰だろう。



僕「王子、翁、爺の3人か?現領主では少し弱いし領主息子は無理だ。両騎士団団長はダメだな。他の領主達は…出来そうな人物は少ない上に、口約束だけで付け入ろうとするかもしれない―」



ぶつぶつ言う僕に有力貴族の娘が頷く。



有力貴族の娘「やはり王子と翁と爺くらいですか」


僕「そう…ですね」


有力貴族の娘「王子なら―いえ、今の時期に私が近づけそうにもありません」


僕「確かに。でもそれだけの事をするとなると王族か余程の権力者でないと難しいので、そうなると後は姫ですが」


有力貴族の娘「姫なら私に手を貸して下さると信じておりますが―」


姫「私が出来る事ならどんな手助けも!!」



姫の言葉に「ありがとうございます」と言い首を振る。



有力貴族の娘「それでも姫だと押しが弱いのです」


姫「何故―」


僕「政治に介入できないからです」


有力貴族の娘「そうですね。他に王族などの候補が要ればよかったのですが」



「王族―」と呟く姫。

僕と有力貴族の娘はあでもない、こうでもないと位置を探るもループしてしまい答えが出ない。

応酬される言葉の合間に姫の呟きが通る。



姫「若も王族になるのですよね?」



僕と有力貴族の娘が姫を見る。



姫「私と、その、け、結婚するなら―」


有力貴族の娘「―確かに」



有力貴族の娘が僕を見る。

いやいやいやと首と手を振る僕の手を掴み



有力貴族の娘「若の妾になればいけます!」


僕「ちょっとまって!」


有力貴族の娘「待てません。これしか手はありません!」



姫に助けを求めようとしたが姫は僕達をじっと見つめている。

「姫~」と情け無い僕を見て姫は頷くときっぱり言った。



姫「有力貴族の娘なら」


僕「ええええええ」


有力貴族の娘「本当ですか!」


姫「えっと、本当は嫌だけど…有力貴族の娘を助ける為なら、が、が、がまんしゅる」



目に涙を浮かべる姫。

それを見た有力貴族の娘が僕の手を離し落ち着いた声を出した。



有力貴族の娘「やはりこの話は無かった事に」


姫「え!?」


有力貴族の娘「私は姫ちゃんを泣かしてまで無理を通そうとは思いません」


姫「だめ、だめだよ」


有力貴族の娘「姫ちゃんが泣く方がダメです」



有力貴族の娘が姫に手を添えると優しく微笑んだ。

それを見た姫が「だって、だって」とぐずる。



姫「有力貴族の娘は、綺麗だから、若が取られちゃうと思って―」



それを聞いた有力貴族の娘が「そんな事ありませんよ」と優しい言葉を掛けながら僕に合い図を送る。

どうやら「お前も何か言え」という事らしい。



僕「姫、僕は姫の騎士です。姫が何より大切です」



それを聞くと姫が泣き出してしまった。

有力貴族の娘は僕を睨みながら姫をあやす。


少しして落ち着いた姫は鼻声で「有力貴族の娘も若の―」と言った。

有力貴族の娘が何か言いそうになるのを制して姫は「それしか方法は無いから」と言う。

それでもなお否定しようとした有力貴族の娘に「これでいつでも一緒に居られるね」という姫の一言で有力貴族の娘は反撃する気力を奪われた。。



―僕の気持ちは?


魔王『考慮された事が今まで幾度あった?』


―ですよねー





「よろしくお願いします」という有力貴族の娘に「こちらこそ」と頭を下げる僕。

お互い偽装だと分かっている。



姫「若は優しくてかっこいいから、すぐに有力貴族の娘も好きになるよ」



笑顔で姫が言う。偽装だと分かってるよね?

先程取られると泣いていたくせに、決まればこういう事を言うのは、姫が変なのか王族が変なのか一度確認した方がいい気がする。

誰に確認すればいいんだ?



有力貴族の娘「姫ちゃんあのね―」


姫「これからは一緒に居られるなんて、嬉しいな」


有力貴族の娘「うん。嬉しい―じゃなくてね」


姫「嬉しくないの?」


有力貴族の娘「嬉しいに決まってるじゃない!」


姫「良かった」


有力貴族の娘「でね―」


姫「有力貴族の娘は第4王妃だね」



世界!(日本語訳)

時が止まる。


ぎぎぎ、と音がしそうな感じでこちらを見た有力貴族の娘は「第…4?」呟いた。



僕の長い戦いが、今始まる!!




―ご声援ありがt(ry





結局説明に時間が掛かった。

第2と第3の名前が出ると「さっきの美人!」と有力貴族の娘が噛み付く。

妖精少女が本当に少女だと聞くと魂まで凍りつきそうな目で見られた後に「本当に可愛いんだ」という姫の笑顔にとろける有力貴族の娘。

「そういう事になってるけど実際は違う」という事を有力貴族の娘が受け入れられそうになった瞬間に「でもみんな有力貴族の娘と同じで納得してるよ」という姫の一言で燃料投下され、再度火が燃え上がる。


説明して理解してもらう頃には僕は精神的疲労で燃え尽きそうになっていた。



僕「…とりあえず、決まった内容は食事の後に話をしましょう」



そう言って姫に食事中に言わないように伝える。

食事には特使も呼ばれるはずで、そこで計画がバレルのはまずい。

食事後に王子や翁、爺を呼んで話を詰めないといけない。


部屋を出て廊下を歩きながら有力貴族の娘と話をする。



僕「そういえば王子がもし婚姻を受け入れると言ったらどうするんですか?」


有力貴族の娘「その場合は諦めるよう説得します」


僕「王子のほうが確実では?」


有力貴族の娘「王位を継ぐ人間が私のような立場の人間を引き入れたらダメですよ。王妃で無ければまだ分かりますが」


僕「では妾としてならいいと?」


有力貴族の娘「王妃が正式に居ない状態では無理ですね―いえ、居てもやはり無理でしょう」


僕「何故?」


有力貴族の娘「あの子に囲われるのは想像できません」


僕「はあ」


有力貴族の娘「それに丁度いいのを見つけましたしね」


僕「はぁ…」


有力貴族の娘「何でそこでため息つくんですか」


僕「出来るだけ早く解消できるよう尽力します」


有力貴族の娘「あら?別にいいですよ?」


僕「は?」


有力貴族の娘「若がお求めならいつもでお呼び下さい」


僕「何を―」


有力貴族の娘「それくらいの覚悟はここに来る時には出来ております」


僕「……」


有力貴族の娘「ではまた後ほど」



そう言うと有力貴族の娘は会釈をして部屋に入っていった。



魔王『違う意味で怖い女だな』


―そうだね



有力貴族の娘の扉を何時までも見つめていても意味が無い。

先程王子に相談受けた後にこんな事が決まってしまったので、王子に事前に話をしようと王子の部屋に向かった。

誤字修正

責を追う為に → 責を負う為に

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