第19話 死亡フラグ
「―3000以上はいる模様!」
その声を聞いて僕は塀の上に掛け昇った。
軍勢は遠くてよく分からないが騎兵が多いようだ。
敵の援軍だと知り兵の士気が下がるのを感じる。
魔王『このままでは崩れるぞ!』
目は振り返り大きな声で叫んだ。
僕「手を止めるな!撃て!」
僕も弓を打ちながら叫ぶ。
―このままでは
僕「たかが数千増えるだけだ!やることは一緒だ!!」
周りの兵を叱咤する。
―敵に押しつぶされる
僕「ここでやらなきゃ押し込まれるぞ!」
士気の低下が止まらない。
―そうしたら姫と妖精少女が
僕「打たなきゃ死ぬぞ!姫や妖精少女が死ぬぞ!僕はそんなのは嫌だ!!」
必死で弓を打つ僕の言葉に弾かれたように周りの兵が弓を打ち出す
―嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
僕「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!そんな目には合わせたくないんだ!!!!」
必死で弓を打つ僕を「出すぎです」と数人の兵が僕を羽交い絞めにして物陰引きずり倒す。
どうやら必死すぎて塀から身を乗り出さんばかりだったようだ。
気がつくと周りの兵が「姫を守れ!」「妖精少女の為に!!」と声を出しながら弓を射ていた。
砦の広場でも同じように叫んでいる。
魔王『何とか耐えたな』
―何か疲れた
まだ始まったばかりなのに物凄く疲れた。
隙間から先ほどの軍勢を探す。
国王軍の後方から来た軍勢はほぼ騎兵で国王軍に合流しようとしているようだった。
―どこの軍勢だろう。
そう思った瞬間にその軍勢が牙を剥いた。
ゆっくりと国王軍に接近した軍勢はいきなり鬨の声を上げると国王軍の側面に突撃した。
その光景を見ていた兵の一人が「赤と白の騎士団の旗だ!」と叫ぶ。
それを聞いた僕は塀を飛ぶように降りて騎乗すると近くの王子の所に駆け寄る。
僕「来たのは赤と白の騎士団で国王軍に攻撃してます。今がチャンスです」
「打って出ましょう」と僕が言うと王子は僕を見つめて「分かりました」というと「打って出る!開門!!」と叫んだ。
それに合わせて僕は「赤白両騎士団がこちらに付いた!今こそ国王軍を打ちのめすぞ!」と叫んだ。
門前の弓がやむ。
それを好機と見て門に突っ込もうとしていた敵集団は、開いた門から出てきた騎兵に浮き足立った。
「蹴散らせ!」と叫びながら突っ込んでいく騎士隊長。
そのまま一部の塀を連れて回り込むように塀に張り付こうとしていた敵兵に当たっていく。
僕達はそのまま真っ直ぐ国王派領主軍の正規兵集団に向かっていく。
乱戦になる。
このままでは犠牲が増えてしまう。
ふと見ると乱戦の輪の外に巻き込まれるのを避けるように退避する集団が見えた。
僕「目の前の敵だけに掛かりきりになるな!敵の指揮官が逃げるぞ!近くの者は優先的にあいつを狙え!!」
剣を突きつけて叫ぶ。
そんな事は無理なのは分かりきっている。
ただ相手の頭が逃げる事を敵に教えているだけだ。
そこからの決着は早かった。
僕に剣を突きつけられた相手は剣が届く距離でもないのに「ひっ!」と声を出すと「早く逃げるぞ!」と乱戦から離脱して行った。
それを見た兵たちが次々と後を追うように逃げていく。
その動きが連鎖的に加速してあっという間に国王軍は撤退をしていた。
僕は兵に追わない様に伝え大砦に引き返した。
3刻ほどして大砦に赤と白の両騎士団が現れた。
両騎士団から4名の人物だけが砦の門の前に進み出る。
その内の一人が自分は赤の騎士団長でもう一人が白の騎士団長、残りの2人が両騎士団の副団長である、と言った。
赤の騎士団長「反国王派への帰順を求める。王子に面会を!」
すぐに騎士団長と爺が門の上に立ち確認する。
爺の「確かに両騎士団団長ですな」という言葉に門を開いた。
広場で出迎えた王子と姫に騎士団全員が跪く。
赤の騎士団団長「赤の騎士団総勢1900名、王子に忠誠を誓います」
白の騎士団団長「白の騎士団総勢2300名、同じく王子に忠誠を誓います」
王子「感謝します」
王子が「ありがとう」と再度言うと騎士団は立ち上がる。
そんなにすぐに信じて大丈夫かなと思ったら、元々両騎士団団長は王子派らしく、それで危険視されて幽閉されてしまっていたらしい。
それに姫も小さな頃から知っているらしく、妹のように感じでいるようだ。
すぐに3800名の元両騎士団出身の騎士のことを伝えると両騎士団副団長が再編入する為に何人かの騎士を連れて走っていった。
赤の騎士団団長「遅くなって申し訳ありません」
王子「いえ、無事で何よりでした」
白の騎士団団長「王子達が騎士団員達に策を授けてくれたお陰です」
王子「その策を考えたのはこちらの若です」
急に話を振られて驚く。
僕「どうも」
両騎士団団長が僕を見る。
どちらも団長という割には若く見える。
30代後半といったところか。
両騎士団副団長の方が年上のような気がする。
赤の騎士団団長「貴殿が若殿か」
僕「はい」
赤の騎士団団長「貴殿のお陰で我々もこうして自由になれた。感謝する」
僕「いえ、そんな」
白の騎士団団長「全くその通りだよ。憎い有力貴族に一泡吹かせてやることも出来たし、本当に感謝してるよ」
白の騎士団団長が笑う。
どうやら両騎士団の団長は少し毛並みが違うようだ。
赤の騎士団団長「騎士団を再編成したらすぐに追撃に出撃します」
王子「少しは休んだ方がいいのでは?」
赤の騎士団団長「いえ、今が好機です。ここで攻め込まないと!」
白の騎士団団長「敵は削っておくに越した事も無いですしね」
翁「そうじゃな。こちらも一部の兵を出そう」
王子「全軍で向かうべきでは?」
翁「物資なども運ばなくてはなりませんからな」
すぐに大砦の兵から2000の騎兵が出兵の準備を行う。
同時に物資を運ぶ後発隊の準備も始まり、両騎士団の編成と合わせて大砦内が慌しくなる。
両騎士団団長と何かを話し合っていた翁と王子に呼ばれる。
王子「若に追撃部隊の指揮をお願いします」
僕「はい?」
王子「追撃部隊の、指揮です」
僕「僕が?」
翁「今までの事情を鑑みて適任と判断したのじゃ」
王子「お願いします」
僕「は、はい」
王子の気迫に押されて頷く。
王子「今までの事でかなり若の評価は高いですが、ここでもう一押しして置きたいんです」
いつの間にか僕の評価が高くなっているらしい。
魔王『方針の決定、敵の取り込み、投石兵器の発明…中々の戦果だろう』
―そうかな
評価されるのは単純にうれしい。
王子「姫姉さまの為にも」
―姫?
確かに敵を減らして王都に向かう事は姫の願い一歩も二歩も近づく。
爺「そうですな。チャンスがあればどんどん行かないと行けません」
翁「周りを黙らせるくらいにな」
うんうんと頷く爺と悪そうに笑う翁。
やはり相手が弱っている時にはがっつりと行かないとダメだね!
僕「分かりました」
王子「よろしくお願いします」
僕と一緒に美女さんと領主息子、兵士隊長が行く事になった。
赤白両騎士団団長にも挨拶をする。
赤の騎士団団長「よろしくお願いする」
白の騎士団団長「お手並み拝見ですね」
どちらの騎士団団長も僕が行く事には特に不満は無いようである。
気になって赤の騎士団団長に聞くと「赤の副団長から話は聞いた」と言っていた。
初めってあったときの事だろうけど、特に大した事をした記憶は無い。
白の騎士団団長は美女さんに笑顔で挨拶していた。
白の騎士団団長「初めましてお嬢さん。白の騎士団長と申します。お見知りおきを」
美女さん「若の従者をしている美女と申します」
白の騎士団団長「若殿はこんな美人を従者にしているなんてうらやましい」
僕「はあ、どうも」
白の騎士団団長「どうですか?戦が終わった後に食事でも」
美女さん「私は若の従者ですので」
白の騎士団団長「つれないですね。貴方に食事を頼むのに若殿に決闘を申し込まないとダメですかね」
―なんでそんな話に
白の騎士団団長「今のうちに約束でも取り付けておきましょうか」
そう言うと白の騎士団団長が僕の方を見て笑う。
美女さん「若に危害を加えようというのなら私がお相手しますよ?」
白の騎士団団長「ダンスのお誘いならうれしいのですが」
美女さん「それなら他を当たってください」
白の騎士団団長「ではお願いしましょうか」
そう言うと美女さんに向き直る。
剣の柄に手を当て立つ白の騎士団団長。
数歩踏み込むと一瞬で剣を抜き美女さんにせまる。
美女さんは笑顔でそれを眺めたままピクリとも動かない。
剣先を美女さんの首に当てた状態で止まる。
少しして剣をしまう白の騎士団団長。
白の騎士団団長「ご無礼をお許しください」
美女さん「もうよろしいのですか?」
白の騎士団団長「大体分かりました。ありがとうございます」
美女さん「そうですか」
白の騎士団団長は僕にも向き直り「急に申し訳ありませんでした」と笑顔で謝罪した。
僕「いえ、斬られなくて良かったです」
どちらが、とは言わなかった。
それで白の騎士団団長も分かったらしく、笑顔で「まったく」と頷いた。
あの騎士団団長も「聞きしに勝る」と言っていた。
いつどこで美女さんの噂を聞いたのか知らないが自分で噂を確かめてみたらしい。
姫と妖精少女が現れた!
普通に妖精少女の手を引いた姫が王子と翁達と来ただけだけど。
2人は激励に来てくれたようだ。
赤の騎士団長がこれまたどこで聞きつけたのか「あれが幸運の少女か」と妖精少女を見て呟いた。
「彼は迷信やまじないを信じる性質なんだよ」と白の騎士団長が小声で教えてくれる。
まじないと聞いて花占いを想像し、花占いをする赤の騎士団団長を想像して笑ってしまった。
妖精少女「おにいちゃん、気をつけてね」
僕「うん。美女さんも領主息子もいるし大丈夫だよ」
妖精少女「うん」
姫「若…」
姫が真剣な表情でこちらを見ている。
やはり戦は不安なんだろう。
僕「必ず勝ちますよ」
姫「どうか、ご無事で―」
僕「次に会うときは姫を王都へ迎える時です。僕が迎えに来ますので待っていてください」
姫「は、はい!」
そう言って自分の馬のところに戻る。
それを見ていた赤白両騎士団団長が近づいてきた。
白の騎士団長「中々いい感じですね」
―何がいい感じなんだろう?
首を傾げようとして思い立つ。
姫と妖精少女が来て兵の士気がかなり上がっている、その事だろう。
僕「そうですね」
白の騎士団団長「これは頑張って姫を早く迎えないといけませんね」
僕「ええ、最後まで気を抜かないようにしないと」
白の騎士団団長「この戦が終わったらあの子に―ですか」
―何?その死亡フラグ
魔王『死亡フラグ?なんだそれは』
魔王に手短に説明をしながら今度こそ首を傾げる。
僕「ああ、姫を迎えに行くと言う話ですか」
白の騎士団団長「そうそれです」
僕「早く姫を安心させてあげたいですからね」
白の騎士団団長「この戦が終わった後も色々あると思いますが、姫を支えてあげてください」
僕「出来る限りの事はしますが、いつまでもこの国に居る事は出来ませんので」
赤白両騎士団団長「「は?」」
今まで黙って聞いていた赤の騎士団団長も白の騎士団団長と声を合わせる。
僕「妖精少女も早く故郷に連れて行ってあげたいですし、僕もやることがありますから」
白の騎士団団長「ちょ、ちょっと待ってください」
僕「はい?」
白の騎士団団長「戦が終わったら国を出るつもりですか?」
僕「つもりも何も最初からその予定ですが?」
赤の騎士団団長「姫を支えるのではなかったのか?」
僕「ここには姫を支えるたくさんの仲間がいます。戦が終われば後は皆さんの仕事です」
僕の言う事に言葉をなくし王子達を見る両騎士団団長。
白の騎士団団長「ま、さか?」
王子・翁・美女さん「そのまさか、です(じゃ)」
3人が唱和する。
白の騎士団軟調「赤の騎士団団長を超える御仁が居たとは」
赤の騎士団団長「その物言いは納得行かないが、さすがにこれは俺でもわかる」
僕達を見つめる姫と妖精少女に手を振っていると「若殿」と赤の騎士団団長が声を掛けた。
赤の騎士団団長「用事はどれくらいかかるんだ?」
どれくらいだろうか?
想像も付かない。
僕「いつ終わるかわかりません」
赤の騎士団団長「それまで待たせると?」
僕「待たせる?」
赤の騎士団団長「もちろん―」
そういった所で翁と白の騎士団団長が赤の騎士団団長を止める。
翁「できれば戦が終わった後も姫を助けて欲しいんだがな」
僕「妖精少女を早く連れて帰ってあげたいんです」
白の騎士団団長「本人に聞いてみましょう」
そういうと姫と妖精少女を呼ぶ。
白の騎士団団長「妖精少女は戦が終わった後も姫を助けてくれるかな?」
白の騎士団団長を警戒するように姫の後ろに隠れていたがコクリと頷いた。
白の騎士団団長「でもそうすると故郷に戻るのが遅くなるよ?」
妖精少女「…姫お姉ちゃんと居たいからいい」
白の騎士団団長「だ、そうです」
僕「妖精少女、いいの?」
妖精少女「うん」
白の騎士団団長「もちろん、その間も我ら我が妖精少女の故郷と連絡を取る手配をしますよ。ねえ翁殿」
翁「もちろんじゃ」
妖精少女が良いと言うなら良いのだが、問題はもう一つある。
―魔王
魔王『なんだ』
―魔王の方はどうなの?
魔王『どうもこうも無い。我にはどうしようもないしな』
―僕は魔王の問題を放置するつもりは無い
魔王『我も無い』
―なら
魔王『だがそれほど急いでもおらん』
―いいの?
魔王『良いも悪いも無い。まだ力が足りない。今戻っても何も出来ない』
―そうか
魔王『そうだ』
―ありがとう
白の騎士団団長「どうですか?もし良ければ戦が終わっても姫を支えてもらえないでしょうか」
僕は考えて美女さんに話しかける。
僕「美女さんはどうですか?」
美女さん「ご随意に」
美女さんを見つめるもいつも通りの笑顔は変わらない。
僕は頷くと翁と白の騎士団団長の方を向いた。
僕「…いつまでも、とは行きませんが」
白の騎士団団長「それでかまいません」
僕「時期が来たら旅立ちますからね」
翁「それはかまわんよ」
僕「最後に地位も名誉も不要です。それが条件です」
翁「いらないと?」
僕「いりません。土地も何もかもいりません」
翁「じゃが姫のそばに居る為にはある程度の地位についてもらわんといかん」
僕「じゃあこの話はもう終わりですね」
白の騎士団団長「まあまって」
僕「なんですか?交渉は決裂したじゃないですか」
白の騎士団団長「まだだよ。まだお互いの意見のすり合わせの段階じゃないか」
僕「…なるほど」
白の騎士団団長「姫のそばに居ても周りから文句が出ないようにする為ににはある程度の地位を得てもらうのが一番簡単なんだけど、それでもダメかい?」
僕「なるほど」
白の騎士団団長「理解してもらえたかい?」
僕「ええ、話し合っても無駄だと判りました」
赤の騎士団団長「地位をくれると言うのに何が不満だ!?」
僕「何もかもが不満ですね」
白の騎士団団長が赤の騎士団団長に「話がややこしくなるから黙っててね」と言うと僕に「何でそう思うの?」と聞いた。
僕「話の起点から食い違ってるんですよね」
白の騎士団団長「どういう風に」
僕「僕は別に『この国に残りたい』なんていってません」
白の騎士団団長「そうだね」
僕「でもみんなが『姫を支えてあげて』と言うので条件付で条件を受け入れるつもりでした」
白の騎士団団長「そこまではお互い認識があってるね」
僕「なのに『姫と居るのに地位が居る』と言う」
白の騎士団団長「おかしいかい?」
僕「おかしくないですか?」
白の騎士団団長「どこが?」
僕「…僕は『居たい』んじゃなく『居るようにお願い』されたんです。なのに『居る為に地位が居る』というのはおかしいと思いませんか?」
白の騎士団団長「なるほど、『お願い』されているのに『押し付け』られるのは不快だと言う事だね」
僕「そうですね」
翁「じゃが姫のそば居る為には仕方ないんじゃ」
僕「だから無理を言わずに話を流そうとしてるんです」
翁「むう―」
白の騎士団団長「どういう状態なら受けてくれるんだい?」
僕「地位など不要な状態で『姫の騎士』として近くにいれるのなら」
白の騎士団団長「それは騎士団などにも所属しないと言う事かい?」
僕「そうです」
僕は正直、このやり取りに面倒くさくなってきていた。
だから働かない宣言をしてさっさと諦めてもらうことにした。
白の騎士団団長は「ちょと待ってもらえるかい」と言うと王子と翁と赤の騎士団団長とで話し出す。
―はやく出陣準備が終わらないかな
魔王『やさぐれておるな』
―正直、面倒になってきたよ
魔王『地位くらい受ければいいではないか』
―だめだよ、いずれ出て行くのにそんなのを受けると、それを理由に引きとめられる事が予想される。だから面倒事は事前に避けないと。
魔王『…そうか』
話し合いが終わったようでまたこちらに来た。
翁「話は了承した」
僕「では?」
翁「地位等無くても姫のそばに居る事ができるようにする」
僕「そうですか」
翁「『姫の騎士』という地位を新たに作る」
僕「はい?」
翁「『姫の騎士』じゃ」
僕「だから地位とかは―」
翁「安心せい。姫のそばに居れるだけで他には何も無い名誉職のようなものじゃ。姫の命のみに従えばいい地位じゃ」
僕「他の誰にも?貴族や王族にも」
翁「そうじゃな…おぬしなら王の命でも納得できん場合は従わんじゃろうしな。地位的には執政と同じ地位にしよう」
魔王『執政は国王の次に偉いな』
僕「物凄い地位じゃないですか」
翁「実権は何も無いよ。王に礼を尽くさなくて良いわけではない。それくらいはしてくれるじゃろう?」
僕「ええ。でもそんな地位を作ると後々、拡大解釈されて大変な事になるのでは?」
翁「まあそこら辺は追々詰めるとして、実権は無いが立場は執政と同じ位にしとくか」
僕「大丈夫なんですか?」
翁「大丈夫じゃろう」
本当に大丈夫か不安だ。
僕「とりあえず実権の無い『姫の騎士』という地位は受け入れます。でもそれ以外の地位も土地も何も要りません」
翁「うむ」
僕「後々、どんな理由でも押し付けられる場合は出て行きます。時期が来たら出て行きますけどね」
翁「わかった」
僕「ここにいる面々が証人です。後で証文が無いとかは聞きません。いいですね」
王子「は、はい」
僕は疲れてため息を吐く。
僕「何でまだ戦も終わってないのに終わった後の話をしてるんだろう」
翁「終わった後では話をする前に居なくなってるかも知れないではないか」
白の騎士団団長「まあまずは邪魔な敵を倒しに行きますか」
話している間も準備は刻々と進んでおり出陣の時間が迫っていた。
誤字修正
「ありあとう」 → 「ありがとう」
しているらしく → 知っているらしく
ああの騎士団団長 → あの騎士団団長
着たのか知らないが → 聞いたのか知らないが
撃って → 打って (数箇所修正)
試論騎士団長 → 白の騎士団長