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(仮)  作者: イオン水
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第12話 小砦攻防戦

翌朝から続々と兵が集まってる。

姫と爺は翁と現領主・領主息子と共にに挨拶に来る領主に面会で大忙しだ。


僕は美女さんの指導の下、馬上剣術の訓練と言う名のしごきを受ける。

その後ろでは美女さんの言葉に過剰反応する兵士隊長と翁の兵士達。

本当に意味が分からない。

僕に声援を送る妖精少女に注目が集まっている気がする。


昼は姫や翁達と新たに来た領主と昼食を行う。

挨拶をすると意外とすんなり受け入れられた。

どうやら姫を助けた事や騎士団の無力化などを考え事で評価されているらしい。

ちょっと照れる。

妖精少女に関しては翁が言ってた「妖精族を見ると幸運が訪れる」という話を理解しているらしく「出会えて幸運です」と言っていた。

どうやら他の領主にも早馬で話は通していたらしい。

それで兵士達は妖精少女を見に来ていたようで一安心。



夕方には館を発つ為に昼は訓練を行わず集まった領主や各兵士隊長達と作戦を話し合う。

僕と美女さんは姫と一緒に本隊にと言われたが美女さんの一言で翁の兵を100名程預かり遊撃部隊となった。

妖精少女は姫の移動用馬車に乗る事になった。

姫は移動の際は馬車を使うが戦場では馬に乗り兵士を鼓舞するそうだ。

目標の小砦攻略の作戦を話し合い解散となる。




――――――――――




日入正刻にちにゅうせいこく(18時頃)翁の館を出発する。

集まった兵は約1700名。

間に合わなかった領主達は途中で合流する事になっており、もう400程増えるらしい。

後はどれくらい静観を決めている領主を取り込めるかといった所である。



現在集まっている者の殆どが騎乗している為に進軍スピードはなかなか速い。

通過する近隣の領主にドンドンと通過の挨拶と参軍の呼びかけを行う。



内容は

「国の乱れを憂いて姫を旗頭に兵を挙げた」

「近くを通過するのに挨拶しないのは失礼だと思い、急だが挨拶だけでもさせて頂く」

「我々が勝利した暁に国を腐らせる逆賊を一族も加担したものも厳罰に処し国を正しい方向に導く所存」

「もし国を思う気持ちがあるならば一緒に兵を率いて戦わないだろうか?」

「勝てば今回の戦の功績に見合った以上のものを与えるつもりである」

「まずは小砦攻略を考えているが、ここが一番の正念場になると思われる」

「ただ王子も別方向から兵を率いて小砦に合流する事になっているので、小砦を落とせば後は問題なく勝てるだろう」

「王子も王女も今回の国の荒廃に本当に心を痛めており、勝利した暁には国賊の一族とそれに加担したものの財産を全て没収し国の復興に当てる事を決定している」

「もちろん国難に何もしない者や我が身可愛さで代わりに勝ち馬に乗るような節操の無いものも国の荒廃に加担したとして資産の一部を差し出してもらうし、よりよい国作りの為に立場も改めさせてもらう」

「もし我々の勝利が聞こえて来たならば多くは報いる事は出来ないと思うが駆けつけてください」



簡単に言うと

「とりあえず今から戦争しに行くけど一緒にどう?今から参加してくれるなら勝った時に頑張り次第で褒章考えるけど。敵対したら全部財産没収の上にお家断絶、傍観したままでも財産の一部と利上げと身分を下げたりするけどね。ちなみに一番しんどいのは小砦だから。そこで王子たちも来るから勝利は確実だけど、これ以降に来た奴は小砦攻略に参加した者より確実に功績は低いね」

と言う事だ。


そんな「敵対したら」とか「傍観でも」とか過激な発言してもいいのかな?とも思ったけど魔王が『どうせ負けたら全て終わりだ。それなら過激な事を行ってでも周りの奴に発破をかけて引き込むしかあるまい』と言うので納得した。

『敵に情けをかけることも無い。勝てば一族郎党皆殺しは基本だ』と言うのはどうかと思うけど、中途半端にして後々反乱を起こされても困るので仕方ないらしい。




夜に野営を行う。

僕の天幕は姫の天幕の横にあるもので爺と一緒に使う。

美女さんと妖精少女は姫と一緒の天幕で休む。

さすがに大所帯だと見張りをする兵がいて夜も休めるようだ。

ただ戦場ではあるので夜襲などには気をつけないといけない。



日が昇る頃には起きて移動の準備を行う。

すぐに準備を終了、移動を開始した。





――――――――――






晡時正刻ほじせいこく(16時頃)に砦まで1刻ほどの距離に付く。

兵士の数は3000まで膨れ上がった。爺と翁の脅しの効果が出ている。


兵士が隊列を組む。


本陣は姫、爺、翁 約1500

右翼は現領主 約700

左翼は領主息子、兵士隊長 約700

遊撃は僕と美女さん 約100



小砦には敵領主軍はあまり集まっていないようだ。

居ても元居た小砦兵と敵領主兵を合わせて500居るかどうかのようだ。


まだ騎士団は到着していない。

原因はわからないが居ないなら小砦を攻めやすくなるので、それはそれでいいかと気持ちを切り替える、




戦が始まった。

右翼と左翼で砦を半方位しながら近づいて弓を射掛けては離れてを交互に行う。

嫌がらせでしかない。

左右に敵が寄ったときに本陣の部隊の一部が城に取り付こうと近寄るそぶりを行う。

相手は援軍が来るまでは持ちこたえようと必死で弓を射掛けてくるが盾に阻まれてそれほどの損害は受けない。



小砦への敵領主軍の援軍は実は来ていた。

ただ取り囲んでいるこちらの軍に気がつき行動が取れなくなっていた。

そこにこちらから兵と使者を送る。


内容は「よく参軍してくれた!さあ一緒に小砦を落とそう!!」というものである。

敵として来たのを知っていながら。である。

そうしてここに来るまでに他の領主に伝えたのと同じ内容を伝え「一緒に勝利の栄光を!」と押し切る。

「自分は国王軍側だ!」と言えば自分より数の多い本陣に襲われ全てを失いという恐怖から否定できないまま反国王軍側へと祭り上げられる。


無理やり反国王軍側に仕立て上げられたにも関わらず「今、小砦を攻撃している所ですが、来たばかりで兵もお疲れのようですので今回は後方で休まれた方がよろしいのでは?」と言われる。


本来なら参加したくない戦になった場合には相手の言い分に頷いて兵力を温存し、時機を見て領地に帰ればいい。

だが今回に関しては姫だけでこれだけの兵が居るのに後に王子の兵も来る。

国王軍が勝てばいいがもし負ければ傍観していたらまずい。

もしもの時は「ここでやら無いと功績は殆ど認められない」という気持ちと、適当に戦闘に参加して体裁だけ保って後は状況を見て勝ち馬に乗ろう、という打算が働いて「このまま参戦する」と言っていた。

そうして国王軍側として着たのにも関わらず丸め込まれ反国王軍になった領主達は次々と左翼と右翼に割り振られていった。



反国王軍は丸め込んだ領主達を信用はしていなかった。


わざと右翼も左翼も弓を射掛けて逃げると言う消極的な行動を取っていた。

丸め込まれた領主軍はここに組み込まれ一緒に「これ位なら自分の兵はさほど被害が出ないか」と消極的な行動を取る。

どんんどん取り込まれる領主達が左翼と右翼に組み込まれるたびに、元々居た反国王軍の兵士達が気が付かれない様に少しずつ右翼と左翼から抜けて本陣に戻る。

半分以上が元国王軍派の領主の軍になり、国王軍派の援軍も途絶えだした頃に右翼と左翼がいつもより深めに小砦に近づき弓を掃射する。


目を疑ったのは小砦の兵士である。

自分達の援軍として着てくれるという約束だった領主達が裏切り反国王派に付いたばかりか、先陣を切って攻撃して来るのである。

小砦の指揮官は怒りに顔をゆがめて裏切り者の領主の旗を狙えと叫んだ。


元国王軍派の領主達も急に小砦からの猛攻に驚き必死で応戦する。

そうなるともう国王派、反国王派関係無く自分を攻撃するものは敵である。

特に自分達を狙い攻撃して来るのである。

信頼関係はすれ違いにより敵対が決まった。

こうなればもう相手を倒すしかない。

「壁に取り付け!」という指揮官の声と周りの兵士の動きに合わせて一緒に壁に取り付くべく前進した。






――――――――――





僕達別働隊は戦場を離れ本陣後方に居た。


魔王が騎士団が不在がどうしても解せないというのだ。

その事を美女さんに伝えたところ「もし隠れているなら本陣への急襲しかないでしょう」と言うので大回りをして本陣後方に配置し隠れる事にした。

今は美女さんが5騎程連れて偵察に行っていた。



美女さんが戻ってきた。

赤白合わせて200名ほどの兵士がいるらしい。


そのうち50名ほどが陽動の為か離れて移動したのでそれを狙う事になった。



50名を背後から100名で包囲を狭める。

魔王の『これ以上は確実に悟られる』の一言に他の兵に合図を送る。

すると50名の隠れる場所の前を斥候を装って美女さんと数名の兵士が通りかかるふりをする。

隠れながらどうするかを合図で話し合う騎士達。

「やり過ごそう」という結論に出たあたりで「ん?」と美女さん扮する斥候が何かに気がついた振りをする。

その瞬間に飛び出そうとする騎士達の背後から僕達が一斉に飛び出し騎士達を取り押さえる。

出来るだけ殺すなとは言っていたが、何とか全員無事に取り押さえたようだ。





捕まえた兵士は45名

全員を武装解除して縛って馬に乗せ連れて行く。

向かう先は残りの約150名の騎士の場所。



少しはなれた見渡しのいい場所で縛った騎士を座らせ兵士で周りを囲んで見張る。

僕と美女さんは数名の騎士とともに45人の中で一番偉いだろう騎士を縛ったままつれて150人の騎士の下へ向かった。




僕達が近づくと約150名の騎士が殺気立つ。

十分な距離を取って話しかける。



魔王『交渉は堂々と威厳を持って、そして相手には主導権を渡さず自分に有利に進めるのだ』


―そんな難しいことはできないよ。



魔王がそんな事をいうので「こういう時にどういえばいいのか分からなくなってしまった」

それで出た一言が




僕「こんにちは」



返事は返って来ない。



僕「責任者の方と話したいのですが」



そういうと一人の人物が名乗り出た。

赤の騎士団中隊長と言うらしい。



僕「お話を聞いてもらえますか?」


赤の騎士団中隊長「人質を取ってか?降伏なら受け入れない」


僕「人質は話を聞いてもら手段なだけで降伏を勧めに来たわけじゃ…ないわけもないか」


赤の騎士団中隊長「どういうことだ?」


僕「とりあえず他の44名も全員生きてます」


赤の騎士団中隊長「全員無事だと?」


僕「少しくらい怪我をしている人もいるので無事ではないですが、元気だと思います。お話を聞いてもらった後は全員解放します」


赤の騎士団中隊長「何が目的だ」


僕「話を聞いてもらうことです。僕の話を最後まで」



赤の騎士団中隊長は話してみろと促す。



僕「赤と白の騎士団には戦に参戦せず傍観して欲しいんです」


赤の騎士団中隊長「何を馬鹿な事を」



僕の言葉を一笑する赤の騎士団中隊長。

その赤の騎士団中隊長に僕は「騎士団長が投獄されているのに笑ってられるんですね」と言うと赤の騎士団中隊長が殺気を放つ。



僕「助けたくは無いですか?騎士団に正式な団長を迎えたくないですか?」


赤の騎士団中隊長「…」


僕「僕達が国王軍を倒せば騎士団長は開放の上で騎士団長として復帰してもらうし、恥知らずの黒の騎士団長一味も処刑しますよ?」


赤の騎士団中隊長「…どうやって勝つと言うんだ」


僕「そのために赤と白の両騎士団には戦闘に参加せずに傍観して欲しいのです」


赤の騎士団中隊長「だが団長の身の安全をちらつかされて戦闘を強制されるとどうしようもない」



それに関しては裏切ったらまだしも傍観では処刑できないという根拠を説明をする。



赤の騎士団中隊長「…たしかに理屈は通っている。だがそれでも団長の命をかけることは出来ない!」


僕「どちらにしてもじりじりと戦力を削られ、脅威で無くなった時点で処刑されてしまいます」


赤の騎士団中隊長「っ!!」



周りの騎士団も僕の言葉に悔しそうに唇をかむ。

どうやらみんな薄々気が付いてはいた様だ。


座して団長の処刑を待つか、打開できるかもしれない案にのるか。



僕「姫も王子も赤と白の騎士団とは争いたくないと考えてます」


赤の騎士団中隊長「……」


僕「それは手ごわいと言うのもありますが、両騎士団が国にとって必要だからです。こんな無駄な戦いで消耗していい存在ではありません」


赤の騎士団中隊長「姫と王子の気持ちは心から光栄に思う」


僕「ですのでこの案に乗ってもらえませんか?」



赤の騎士団中隊長は僕を見つめ「それで交渉のつもりか?」と聞いてきた。

良く分からない僕は首をかしげ「お願いなんですけど」と言うと赤の騎士団中隊長が少し笑った。



赤の騎士団中隊長「…私では判断が付かない」


僕「ではこの話を上に上げてください。あ、でも黒の騎士団団長や領主の手勢にはやめてくださいね」


赤の騎士団中隊長「分かった、赤の騎士団副団長に話してみよう」


僕「白の騎士団にも伝えて欲しいのですが」


赤の騎士団中隊長「赤の騎士団副団長が白の騎士団副団長にも話すだろう」



「大丈夫だ」と頷く赤の騎士団中隊長。



僕「そういえばどうして白の騎士団の先発隊は来て無いんだろう?」


赤の騎士団中隊長「王子側の軍隊の足止めに行かされている」




まさか僕の独り言に答えが返ってくるとは思わなかった。

もしかしたら赤の騎士団中隊長は僕の意見に傾いてくれているのかもしれない。



赤の騎士団中隊長「貴殿の意見は聞いた。赤の騎士団副団長にも必ず伝えよう」


僕「お願いします」


赤の騎士団中隊長「だが何もせず戻ると疑われかねない。それは団長の命に関わる可能性があるので出来ない」


僕「う~ん…ではここで戦闘しましょう」


赤の騎士団中隊長「何?」


僕「正確には僕達とであって戦闘になって痛みわけしたと言う事で」


赤の騎士団中隊長「……」


僕「向こうに小さな怪我をした騎士も居るので丁度良いですね」


赤の騎士団中隊長「捕虜を解放すると?」


僕「話は聞いて貰いましたからね」


赤の騎士団中隊長「捕虜を解放した後の貴殿らに襲い掛かる可能性があるぞ?」


僕「それなら大丈夫だと信じてます」


赤の騎士団中隊長「これくらいの数は対処できる兵士達だと?」


僕「いえ。赤の騎士団中隊長をです」



彼は騎士団長を敬愛している。

その騎士団長を守る為、助ける為に僕は害する必要は無いと感じている。




赤の騎士団中隊長「――っははは!まいった!」


僕(????)


魔王『男にも効果ありか』


―なにが?


赤の騎士団中隊長「分かった!必ず伝える。捕虜の返還も感謝する」



そういうと騎士団たちは剣を収めた。

僕達は捕まえていた騎士団達を解放し武器を返す。

赤の騎士団中隊長が去り際に「貴殿の名前は?」と聞いてきたので「若と言います」と伝えた。

赤の騎士団中隊長は頷くと騎士達を連れて小砦とは別の方へ去っていった。




赤の騎士団を見送った僕に美女さんが「お疲れ様です」と微笑む。



僕「あんなので良かったのかな?」


美女さん「大丈夫です」


魔王『交渉としては最低だったが、結果としては上々だ』



2人の言葉にほっと息をつく。

あ~怖かった。

いつ斬られるかと心臓どきどきしてたよ。



ふと戦場から響く声が大きくなったので見てみると壁に取り付いた兵がはしごをいくつも掛け、小砦の壁を乗り越えているのが見えた。



魔王『決まったな』


美女さん「塀を越えればもう決まったようなものですね。時間の問題です」


僕「結局、小砦攻略は参加しなかったね」


美女さん「でもそれに匹敵するくらいの功績は挙げたと思いますよ」


僕「だと良いんですけどね」


美女さん「さぁ戻って姫に報告しましょう。きっと心配で倒れそうになってますよ」



確かに自分の命を掛けた博打の結果に関しては、どうなったか心配で仕方ないと思う。

美女さんと魔王が『「勘違いしてる気がする」』という。



僕「そうだね!早く戻らないと失敗と勘違いするかもしれない!」



僕達は本陣へと急いだ。

誤字修正

館を立つ為に → 館を発つ為に

後輩に → 荒廃に

撒けたら → 負けたら

半方位 → 半包囲

範囲を狭める → 包囲を狭める

変換 → 返還

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