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(仮)  作者: イオン水
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第11話 新興宗教

布を受け取り体の水滴を拭きながらテンションが上がっている僕に背後から声が掛かる。



美女さん「思ったより元気そうですね」


僕「え?」


美女さん「呼吸は戻りましたか?」


僕「あ、はい」


美女さん「では馬上剣術の稽古を行います」


―マジですか?



マジでした。


美女さんの馬上剣術は熾烈を極めた。


まずはお互い騎乗状態での剣の振り方や馬の動かし方、相手が剣のときと槍の時を叩き込まれる。

というか何度も叩き落される。

美女さん槍も使えるんだ。


その後は相手が騎乗の場合を教わる。

相手がどのような攻撃で来るのかを剣と槍で。


その次は自分が騎乗で相手が徒歩かちの場合。

止まらず動き回る事と乱戦でも敵を近づけないようにと叩き込まれるというより叩き落される。



美女さん「一対一ならともかく戦場では落馬したら周りの兵士に取り囲まれて死にますよ。自分だけではなく馬も守るように動いてください」


美女さん「乱戦の時はどこから来るか分かりませんよ。周りにも意識を抜かず敵を馬に近づけない!」


美女さん「相手だけを攻撃せずに馬にも攻撃してください。馬を倒せれば半分は倒したも同然です。だからと言って止めを刺すまで気を抜いてはいけません」


美女さん「あまり近づきすぎると馬に蹴られて死にますよ。騎手に届かないなら馬を狙ってください」


美女さん「攻撃の最中も馬の動きを止めない。絶えず動きながら攻撃しつつ優位な位置取りを心がけてください」


美女さん「体だけで避けない。馬ごと動かないと次には動けなくなりますよ」



美女さんの指導は容赦なかった。

周りで皆が見ている。

兵士隊長が「いいか!今の言葉を忘れるな!」と言い兵士達が頷く。

何なのこれ?



一人の兵士が呼ばれて騎乗する。

「今回は馬への攻撃は無しで」と言うとお互いに羽引きされた剣を持たされて手合わせさせられる。

どうやら相手はさほど剣術が旨くないようで何とか出来ているが馬の操作に気を取られ攻撃が出来ない。

何とか攻撃をしようと思ったら美女さんが抜き身で寄って来るのが見えたのでさっと馬を動かして背後を取られないようにする。

すると美女さんは元の位置に戻る。



―何なの?気を抜いたら来るの?



何回か僕が攻撃しようとしたら美女さんは近づいてくる気配を出し、それに気がつき位置を変えると元にも戻るを繰り返す。

攻撃しようとした時に毎回来るわけではなく、何回に一回の割合で来るのはランダムなのか何なのか。



魔王『分かったぞ』


―何が?


魔王『美女の動きだ』


―何?


魔王『お主が馬を止めて攻撃しようとした時だけ来ようとしている。動き回れというのを実践できて無いからなのでは無いか?』



試しに何回か動きを止めて攻撃しようとしたら美女さんが動く気配がした。



―当たりだ!


魔王『止まるとラスボスが来るぞ』



魔王にラスボス扱いされる美女さん。



―否定できない。



馬の動きを止めないように意識を集中しすると相手の死角を突けそうになる機会が増えてきた。

と思ったら2人目が追加された。

どうやら二対一のようだ。

攻撃をすることは出来ずに剣を弾きながら馬を移動させまくる。

背後を取られないように動く捌く動く捌く。

気がついたら3人目が来てた。

2人でも精一杯なのに3人は無理!とか思ったけど、馬の体が大きくて3人同時には来れない。

ただ3人目が退路を邪魔するように入れ替わるので旨く逃げれない。

このまま捌いていても無理なので剣を受け止めて押し返して隙を作る作戦に出る。

捌きの中に受け止めて弾くという動作も入れる。

左の兵士が体を崩した瞬間を狙って馬で当たりながら囲みを突破する。

逃げるわけにも行かないので2人が来るのを待ち構えたところで「そこまで」という声が掛かる。

先ほど押した兵士は落馬は免れたようだ。



美女さん「馬が止まってしまっていたのに気が付いてよかったです。もう少し気がつくのが遅ければ私が行って叩き落してました」


―魔王GJ!


魔王『ぐっじょぶ?』


―いい仕事したって意味だよ


美女さん「馬は守らなければなりませんが、囲まれそうな時などは相手を崩すのにもっと馬を当てて行かなければ行けませんよ」


―なるほど。


兵士隊長(少し離れた場所で)「忘れるな!相手を崩すのに馬を当てるのも有効だ!」


兵士達(少し離れた場所で)「はっ!」


美女さん「囲まれる前に相手の輪の外に出るよう心がけてください。再度囲おうとするのに連携が乱れたりするのでチャンスです。外へ外へですよ」


兵士隊長(少し離れた場所で)「分かったか!外へ外へだ!囲まれるな!!」


兵士達(少し離れた場所で)「はっ!」


―……


美女さん「対峙した状態で回頭させる時は大回りではなく小回りで素早く行って下さい。相手より遅かったら体勢を整える前に来ますよ」


兵士隊長(少し離れた場所で)「回頭は小さく素早くだ!相手に遅れるな!!」


兵士達(少し離れた場所で)「はっ!」


美女さん「少し煩いですよ」


兵士隊長(少し離れた場所で)「静かにしろ!」


兵士達(少し離れた場所で)「はっ!」



だから何なの?このコント。




美女さん「とりあえず今日はここまでにして明日にしましょう。明日は朝からしますよ」


僕「マジですか?」


美女さん「まじです。明後日には戦になります。全然時間が足りません」



そうだった。

明後日以降は戦が始まるんだ。



美女さん「ですので明日はもっとびしびし行きますよ」



少しはなれた所で「よし!今までの内容を忘れぬよう訓練開始だ!」と言う兵士隊長の言葉に兵士が「はい!」と答えて騎乗すると訓練を始めた。

何だこの士気の高さは。





――――――――――





晩御飯はなかなか豪勢だった。

翁が「姫がおられるから料理係も張り切ったのだろう。戦場では贅沢できないからせめて我が館にいる間だけでもな」と笑った。





夜は魔法の講義だが妖精少女も勉強したいと言い出した。

どうやら昨晩のピンチに何か思うところがあったようで「お兄ちゃんを助ける」と言っていた(可愛い!)

魔力の制御に関しては後は実践しながら精度を上げていくだけなので僕の口を介して魔王が精霊に付いて講義する事になった。

どうやら精霊について知っておくことは無駄では無いらしい。

美女さんと爺は僕の講義を笑顔で眺めている。

意外な事に姫が興味津々に妖精少女と聞いていた。



僕(魔王)『まぁ「人族でも魔族でも波長の合う精霊が居たら使えるし、理論上は気に入られれば上位精霊とも契約を結べるから」な』


姫「魔力が無い私でも妖精と契約できたりするのでしょうか?」


僕(魔王)『「契約に魔力の多さは関係ない。確かに魔力を多い方が好まれる傾向にはあるようだが、魔力が無くても問題は無い(な)です」』


姫「なるほど」


僕(魔王)『「そもそも生きている限り魔力が0と言う事は(無い)ありません」』


姫「そうなんですか?」


僕(魔王)『「魔力の源は精神力(だ)です。これはどんな生き物でも持っている生そのものだ。無ければ死んでいる」』



頷く姫と首を傾げる妖精少女。

妖精少女にはもう少し分かりやすく言わないとダメだな。

「博識なんですね」という姫に笑って誤魔化し続ける。



僕(魔王)『「その精神力を魔力にどれくらい変換できるか、それを魔法と結びつけるかどうかが魔法の有無に繋がる」』


姫「変換と繋ぐ事ですか」


僕(魔王)『「こればかりは感覚だから教えようが無い。それで変換効率で魔力の大小が生まれる。中には魔力は甚大でも魔法が使えない(馬鹿者「うるさいよ!」)者や、魔力ではなく法力に変える者もいる(しな)ようです」』


姫「魔法と神法は一緒なんですか?」


僕(魔王)『「元は一緒(だ)です。感覚で覚えるか、神の声で目覚めるかでの違いに過ぎ(ない)ません」』


姫「と言う事は両方使える事もあるんですか?」


僕(魔王)『過去には居たようだがものめずらしい程度(だぞ)ですね」』


姫「そうなんですか?便利そうですが」


僕(魔王)『「確かに使える術は増えるのは便利(だ)ですね。(しかし)でも精神力の総量はそうそう変わらない。両方使えると言う事は精神力を2つに分けるという事になる」』


姫「どういう事でしょう?」



精神力と言うのは魔力と法力の源ではある。

だからと言って消費したら精神力からいくらでも補充するというわけには行かない。



大きな器に水が一杯満たされている状態をイメージする。

器が人のキャパシティであり水が精神力である。

器の大きさは人によって大小さまざまあり、その大きさはそうそう変わらない。

もちろんその中に貯まる精神力も器の容量を越える事は無い。



その器の一部を区切った中身が魔力や法力で使える精神力となる。

その区切りの大きさが変換率とも最大魔力や法力とも呼ばれる。

区切る範囲の大きさはも人それぞれで基本的には変わらない。



その区切りに入った精神力は魔力か法力のどちらかに変換される。

魔力と法力は精神力の使い方が違うからである。

そして魔法などを使うと区切りの中の魔力は無くなっていき、枯渇すると魔法が使えなくなる。

いくら区切りの外に精神力があっても区切りの中に無ければ魔法は使えない状態になる。



区切りの中の失った魔力はどうやって回復するのか。


それは休息を取る事により区切りの外の精神力が溜まり、それが溢れて区切り内に流れ込む事によって回復していく。

だから休みを取らなかったり体調を崩したり、精神的に弱っている時は回復しにくい。



では魔力と法力を同時に使った場合はどうなのか。


先ほど言ったとおり2つは使い方が違うので一緒に出来ない。

なのでそれぞれに区切る必要がある。

しかし器に空きがあろうが区切りは一つしか出来ない。

一つの区切りをさらに細かく2つに区切る事になる。

片方が枯渇してももう一方から分ける方法は無い。

だから両方覚えるのは単純に使える魔力を減らしてしまう事に繋がる。

しかも2つの大きさは選ぶ事が出来ないので、場合に拠っては得意な方が容量が小さくなってしまう事もある。



ただ魔力は何時、何処でどの様に目覚めるかは分からず、法力に至っては神の気持ち一つなのでどうしようもない。



―長いよ


魔王『仕方あるまい。事実そうなのだから』



このままでは妖精少女が寝てしまう!

一応、うんうんと頷いているけど本当に理解してるんだろうか?

妖精少女か飽きないように簡単に話さなければならない。

でも同時通訳だとあまり考えて話せない。辛いところだ。





――――――――――





精霊は火・水・土・風・光・闇の6つあり、精霊王、上級、中級、下級の精霊に分かれている。

それぞれの属性の他に光は正の感情、闇は負の感情を司ると言われている。



基本的に精霊はどこにでも居るが大抵は下級精霊である。

妖精少女に協力してくれているのもそうであろう。

ただ水の中などに火の精霊が存在できないように、基本的にはそれぞれ属性と対する場所では数が少ない。

逆に自分の属性の場所、水なら湖、火なら火山などの場所にはそれぞれの属性の妖精が多いだけではなく中級の妖精も居たりする。


上級や妖精王クラスになると妖精界と呼ばれる別の世界に居て自らこちらに出てくる事は無い。

各地にある特定の場所のみで交信することが可能だが、人ではなかなかたどり着けない場所だったりする。



妖精と契約をし力を借りるのには精神力が必要だが妖精少女のようにお願いして力を借りる場合には一切必要ない。

ただ力を借りるのは相手に気に入られないと無理だし、借りれる力も周りのものを利用するだけなのでそれほど多くの力は使えない。

頑張っても妖精少女のように風の力で相手をよろめかす程度が精精である。


契約を結ぶのはまずは相手に認められる必要がる。

その上で契約を結ぶのだが、精神力に魔力や法力とは別の区切りが出来る。

これが精霊魔法を使う為の霊力になる。

霊力は同じ属性の精霊なら同じ区切りで使う事になる。

この多きさも精神の器以上は大きくならないし、魔力や法力とは一緒に出来ない。



ただ魔力と法力と違い霊力は新たな契約で増える事がある。

だからと言って下級と数多く契約を結んでも増えるわけで無い。




例えば呼び出すのに霊力3が必要な下級精霊と契約を結ぶとする。

その時に最大霊力10の容量が出来た。

霊力10のうち3で呼び出して残り7を使って、下級精霊で出来る精霊魔法を使う事になる。


次に同じ属性の霊力4の下級精霊と契約を結んだとする。

その場合は最初に契約した際にできた最大霊力10で十分呼び出せるので霊力は増えない。


霊力10あるので4と3の2つの精霊を呼ぶ事も可能だ。

2つの精霊を呼ぶ事により

だが使える霊力は残りの3になるのでそれほど多くの精霊魔法は使えなくなる。


霊力が増える状況はどういう場合か。

それは最大魔力10の状態で霊力20必要な同じ属性の中級と契約を結んだ時である。

10では呼び出す事も出来ないので最大霊力が50に増える。


気をつけないといけないのが精神力の最大値以上の契約を結んでしまった場合である。

精神力の最大値が100の時に呼び出すのに霊力150のが必要な上級精霊と契約を結んだばあい。

最大霊力は100までしか増えない。

その状態で霊力150の上級精霊を呼んでも霊力が0になるだけで呼ぶ事は出来ない。


気をつけないといけないのが説明しやすいように霊力を数値にしたが、実際は感覚でしか分からない。

なので自分の最大値は分からないし精霊を呼び出すのに必要な霊力もどれくらいか分からない。




僕(魔王)『「精霊に気に入られるのはどうしたらいいのかは分か(らない)りません」』


姫「そうなんですか?」


僕(魔王)『「精霊と契約を結んだ事も無いし、精霊は(我々)僕達とは思考が違うから(な)」』


妖精少女「でもお兄ちゃんの周りには多いよ?」


魔王『ほう』


僕「え?そうなの?」



うんと頷く妖精少女。



―多いのか。なんでだろう?


姫「見えるんですか?」


僕(魔王)『「霊力を持つと精霊を見れるようになるらしい。霊力が低いと上のクラスの精霊は見えないが気配を感じるくらいは出来るだろう」』


姫「では妖精少女は霊力を持っていて妖精が見えるんですか?」


僕(魔王)『「妖精族は昔から精霊と強い結びつきを持っている。住んでいる森にも多くの精霊が住んでおり幾人もの精霊使いが居るだろうから、小さな時から触れ合ってわずかでも霊力が付くのは理解できる。そういう種族性が精霊に好まれる要因の一つかもしれない」



「精霊が見えるなんて素敵ですね~」と呟く姫。

妖精少女が「えへへ」と少し得意げにする。(可愛い!)



僕(魔王)『「霊力が無くても日頃から意識をしていたらいつか精霊から語りかけてくるかも知れないな」』


姫「そうなんですか!頑張ってみます」


僕(魔王)『「妖精少女が精霊と契約を結ぶ方法だが」』


妖精少女「うん」


僕(魔王)『「精霊の属性の強い場所で精霊に語りかければ後は精霊が判断してくれる(だろう)よ」』


姫「そんな事でいいのですか?魔方陣を描いたり必要なものがあったりとかは」


僕(魔王)『「中級までは必要(ない)ありません。上級以上は場所(だの)だったり儀式(だの)が必要なの(だがな)ですけどね」』



なるほどと頷く姫と「今度やってみる」という妖精少女。

ここら辺に精霊が集まる場所はあるのだろうか?




とりあえずは今日はここまでと言う事にし、それぞれの部屋に戻った。

相手が勝ちの場合 → 相手が徒歩かちの場合

間引きされた剣 → 羽引きされた剣

死角を付けそうに → 死角を突けそうに

体制を整える前に → 体勢を整える前に

妖精が居たら使えるし → 精霊が居たら使えるし

同じく切りで区切りで → 同じ区切りで

残り7えを使って → 残り7を使って

霊力ある10 → 霊力10

見えるんでですか → 見えるんですか

妖精と強い結びつき → 精霊と強い結びつき

精鋭と契約を結ぶ方法 → 精霊と契約を結ぶ方法

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