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過去の精霊  作者: 由城 要
第1部 Marginal man story
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序章 昔語り

 かつて、人という存在が生まれるよりずっと昔、世界は精霊によって支配されていた。おとぎ話に聞くような愉快な種族もいれば、神に仕える存在になった種族もいる。我々の力も、精霊の力によってもたらされていると言ってもいい。

 この地上にある全てのものに精霊は宿る。雨の日の草原の下にも、砂漠の砂の上にも。そこには必ず彼らがいることだろう。人の目に見ることが出来なくとも、契約すれば自ずと姿を現す。

 ファーレン様のデルヴァもそうだ。お前はあの召喚魔法を見たことがあるかい?あれは精霊の中でも一番高い階級を持つ『蛉人』の王。いわば、精霊の王だ。

 デルヴァの姿はそれはそれは神々しく、それでいて誰もが平伏したくなるほどの存在感を持っている。私は幼い時、ファーレン様が初めてあの蛉人を喚び出す様を見た。……ああ、私は運が良かったのだよ。ファーレン様が人前にデルヴァの姿を現すことはないからね。

 デルヴァの他にも、蛉人は数多くいる。デルヴァの妻、王妃の立場にあるフィオ。フィオレンティーナの瞳には知性が宿るともいわれている。いつか見てみたいものだよ。子供達の誰かが彼女を喚び出せる日が来るのかねぇ……。

 ……おや、お前が喚び出すのかい?ふふふ……ああ、いや、笑ってはいけないね。目標があるのは良いことだ。お前が彼女を喚び出したら、私はこの村で一番幸せな婆様だよ。ファーレン様にも自慢が出来そうだ。でも、一つだけ言っておかねばならないね。

 『蛉人』の力は強い。彼らを従えるにはお前ももっともっと力をつけなければ。彼らの中には良い者と悪い者がいる。……人と一緒だろう?そう。中には魔術師を逆に利用しようと考える者も少なくない。精霊は人間と契約することで、その存在が消えてしまったとしても転生することが出来る。その為に彼らは魔術師の魂とその力を常に欲しているのだから。

 おやおや……難しい話になるとすぐ眠くなってしまうのだね、お前は。ふふ……仕方ない、ではお話はここまでにしようか。ただ、一つだけ覚えておいておくれ。

 どんなに強い『蛉人』を手に入れようと、どんなに名高い魔術師になろうとも……お前は、お前だ。その優しさだけは変わらないでおくれ。


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