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妹について語っちゃおうぜ!!(座談会)

作者: 月夜見幾望

鳴海「───ところで、桔梗君」

桔梗「はい」

鳴海「どうして僕たちが今日この座談会室に呼ばれたのか……。名探偵の君ならすでに気付いているだろう」

桔梗「いえ、まったく分かりません(キッパリ)」

鳴海「……しょうがない。特別に教えてあげよう。ありがたく思いたまえ」


 鳴海刑事は、そこでサッと前髪を掻き上げ、びしっ!!とポーズを決める。まるで『犯人はお前だ!!』とでも言うように、人差し指を突き付けられた僕は、さりげなくその軌道をすっと変えた。

 白い歯をキラリと光らせる鳴海刑事のテンションメーターはすでにHighのほうに振り切れているようだ。経験上、この状態の彼に何を言っても右から左に通過するだけなので、僕は黙って鳴海刑事の次の台詞を待つ。


鳴海「この座談会の目的───それはずばり! 僕と桔梗君で『妹について熱く語っちゃおうぜ!!』ということなんだ!」

桔梗「……帰らせてもらいます」

鳴海「待ちたまえ。これは『Person who seeks the truth』において、君が目立ち過ぎるため、存在感が薄くなりがちな僕を救済するための場でもあるんだよ?」

桔梗「……いや、殺人事件は解決しないといけないでしょう。それに、鳴海刑事はワトソン的なポジションなんだから、僕より目立たないのは当たり前じゃないですか」

鳴海「それが嫌なのだよ、桔梗君! 妹の胡桃に良い所を見せるためにも、僕も君と同じくらいの活躍をしなければならないんだ!」

桔梗「……何でそこで紺青さんの名前が出てくるんですか。多分、『Person~』には登場しないと思いますよ?」


 僕がその事実を告げると、鳴海刑事の中でどういう化学反応が起こったのか、最高にハイってやつから、一気にこの世の終わりみたいな表情になった。orzの姿勢になり、血の涙を流さんばかりに床を叩いている。

 忙しい人だ。


鳴海「なぜだ!? 青磁君は登場したのに、何で胡桃は登場しないんだ!?」

桔梗「いや、僕に訊かれても……」

鳴海「大体、作者は萌えの精神を理解していない!! 今のところ『Person~』には男しか出ていないのだぞ! そんなんで読者層を獲得できると思っているのか!?」

桔梗「鳴海刑事、少し落ち着いてください。女性なら、一応次話で紺青さんと鳴海刑事のおばあさんが出る予定ですよ?」

鳴海「ウチの婆ちゃん出して、誰得だって言うんだ!! それよりも数百万倍可愛い妹を出したほうが読者も喜ぶというものだろう!!」


 がおおおおっ!!と吠える鳴海刑事。

 ……今度、座談会を行うときは丈夫な檻を用意しておいてもらおう。間違って噛みつかれたら、たまったもんじゃない。それにしても……


桔梗「妹のことになるとやけに剥きになっていますけど、ひょっとして鳴海刑事はシスコンなんですか?」

鳴海「ああ、もちろんだとも(キリッ)」

桔梗「………………」

鳴海「そんな白い目で見ないでくれたまえ。なにも恋愛対象として見ているわけではない。僕はあくまで“兄”として、あの子を温かく見守ってあげたいのだよ。ほら、妹って、向こう見ずに突っ走ったり、面白そうなことにすぐ首を突っ込むことが多いじゃないか」

桔梗「まあ、そうですね」

鳴海「胡桃の性格からして、おそらく危険を示唆したところで無駄だろう。あの子は自分の好奇心が満たされるまで、どこまでも走り続ける。ならいっそ、この僕が傍に付いて妹を危険から守ってあげたいんだ」

桔梗「……ひょっとして、警察官になったのはそのためですか?」

鳴海「ああ。もしかしたら笑われるかもしれないけどね。でも、後悔はしていないよ」

桔梗「……なんか、かっこいいですね。僕は誰かのために生きるなんてこと、あまり考えないですから。事件が起きたら、その解決だけに全てを捧げる機械みたいな生き方です」


 そう。

 だから、この右腕に残された傷跡は警告であり、事件になると周りが見えなくなる僕自身への戒めでもあるのだろう。

 それが疼くとき、僕はいつも選択を迫られる。


鳴海「……桔梗君が“向こうの組織”でも頼りにされているのは知っているよ。でも、君を待っていてくれる人がいることを決して忘れてはいけないよ。その人はきっと、世界中の誰よりも君のことを大切に想ってくれているだろうからね」


 鳴海刑事の台詞が引き金となって、僕の脳裏に従妹の顔が蘇る。

 彼女はいつも優しくて、少し周りに流されがちな所もあったけど、常に笑顔を絶やさない子だった。でも、いま思えば……僕は、また彼女を独りにしてしまっている……。『あの時』───統合失調症患者であった彼女を救い出した時、いつも傍にいてあげると決めたはずなのに……。

 僕の内側に宿る、天才的な頭脳を持つ“彼”。

 もし、僕がこのまま“彼”と共に生きるとして、果たして鳴海刑事のように、後悔はしていないと言い切ることができるだろうか……。


鳴海「まあ、君自身にもいろいろ悩みはあると思う。でも、僕で良ければいつでも相談に乗ってあげるから、そんなに思いつめた顔をしないでほしい。胡桃から聞いていた桔梗君は『みんなから弄られつつも、明るくて面白い男の子』らしいからね」

桔梗「……そうですね。ありがとうございます」

鳴海「いや、礼には及ばないよ。───そんなことはさておき、桔梗君はまだ独り身だったね。なら、是非、妹を嫁にもらってくれないかい?」

桔梗「はい!!?」

鳴海「桔梗君なら安心して胡桃を任せられる。それに、君と胡桃は息ぴったりだと思うよ。僕が保障する」

桔梗「インチキ恋愛占い師みたいなこと言わないでください! それに、僕には瑠璃が……あ」

鳴海「ふむ。桔梗君が好きなのは瑠璃ちゃんって子か。メモメモ……」

桔梗「だああああああ!!! 紺青家って、どうしてこう碌でもない人たちばかりなんだっ!!」

鳴海「おっと、そろそろ時間のようだ。この続きは次回の座談会でゆっくり語り合おうじゃないか。それでは、アディオス!!」

桔梗「待てええぇぇぇええぇぇえええ!!!!」



 座談会を終えて、一息ついた後、僕はある番号に電話をかけた。

 プルルルル…という呼び出し音が三回なった後───


?「はい。もしもし」

桔梗「あ、瑠璃。僕だけど、いま大丈夫?」

瑠璃「桔梗お兄ちゃん!? どうしたの、突然……」

桔梗「いや、要件は特にないんだ。ただ、瑠璃の声が聞きたくなってね」

瑠璃「え、あ……わ、私は元気だよ。だから心配しないで」

桔梗「嘘つくなって。声が沈んでいることくらい探偵でなくても分かる。……瑠璃。本当にごめんな、こんな僕で……。いつも瑠璃のそばにいてあげると約束したはずなのに、気付いたら事件のほうが重要になっているなんて……最低な奴だよね……」

瑠璃「そ、そんなことないよ! だって、桔梗お兄ちゃんの中には“彼”がいるんでしょう? だったら───」

桔梗「“彼”は関係ない。これは僕自身の気持ちの問題だ。……瑠璃。どんなに謝っても許してもらえないと思うけど……あいつらを捕まえたら絶対に戻るから……それまで待っていてほしい。そしたら、もう二度と瑠璃のそばを離れないと約束する」

瑠璃「……うん。分かった……。絶対戻ってきてね。胡桃ちゃんと一緒に応援しているから」

桔梗「胡桃ちゃんと一緒に……?」

胡桃「やっほー、赤朽葉先輩!! お久しぶりですね!!」


 電話を通して急にハイテンションな声が耳に突き刺さる。

 僕は受話器を少し遠ざけながら。


桔梗「ええと、紺青さん。何で瑠璃と一緒にいるの?」

胡桃「瑠璃ちゃんの家に泊めてもらっているんですよ。鳴海お兄ちゃんは帰宅時間遅いし、一人で留守番するのも退屈ですから」


 ───ってことは、いま実家に紺青さんはいないわけか。鳴海刑事がそれに気付いたら、即捜索願でも出しそうで怖いんだが……。あとで連絡入れておいてあげよう。


瑠璃「そういうことなので、桔梗お兄ちゃん。私のことは心配しないで、精一杯頑張ってきてね」

胡桃「あ、赤朽葉先輩。鳴海お兄ちゃんと行動することが多いのなら、ついでに伝えておいてもらえますか。『あたしのことは心配しないで、精一杯頑張ってね』って」

桔梗「了解。伝えておくよ。じゃあ、二人ともお休み」

瑠璃・胡桃「お休みなさい~」


 プツっと通話が切れた受話器をしばらく見つめる。

 ───さて、明日も本気出していきますか。


 3000字程度で短編を作ってみよう! と自分の中で勝手に目標を設定して出来上がったのがこれ。ぶっちゃけ、いつも通りの座談会とそんなに変わらないね、うん。

 でも、良い感じに書けたとは思ってる。

 次は座談会じゃない短編に挑戦してみたいですね。

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