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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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9/10

裸の付き合いは、ご遠慮します

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 お風呂屋、スーパー銭湯、温泉。お風呂っていいですよね~。裸の付き合いなお話です。



 オルツァーさんが、しつこい。


「男同士の友情はな、裸の付き合いから始まんだよ、わかるか?お前もそろそろ、え~と、12歳位か?もう、小さな子供じゃねえんだから、大勢で入るのに慣れとけよ。

 まあ、砦の騎士団に行ったら、露天風呂しかないからな、絶対に入らなきゃならないんだぞ」


 17歳で、女なので、裸の付き合いは、ご遠慮します~。


「いえ、私は騎士団ではなく、祖母の家に行くんですよ。忘れてます?」


 入れるわけ、ないでしょう!?と言うか、絶対に入りません!


「まあ、そう言うなよ。ほらほら、私も初めての場所での大衆浴場だからな。1人で入るのは、寂しいんだぞ?」


 しつこい……いいから、1人で入って来い!


「え!?弟ちゃん、大衆浴場に行くの?


 ダメ!絶対に、ダメよ!


 あんな所に行ったら、あんたみたいな可愛い子、もみくちゃにされて、弄ばれて帰って来れなくなっちゃうわよ。家のお風呂、貸したげるから入んなさい。

 ね、そうしなさい。悪いこと言わないから」


 着替えを持って押し問答していた私とオルツァーさんは、ボンキュッバインの宿屋の娘さんに止められた。


「どちらにしろ、私は最初から宿のお風呂を借りるつもりで、女将さんとの枕の売買の時にお話ししてたんです。なのに、オルツァーのお兄さんが『大衆浴場に行こう』って、しつこくて」


 本当に、しつこい。今も、『え~、何だよ~一緒に行こうぜ~』みたいな顔をしている。


「まさか、あんたもこの子の裸が目当てなんじゃ、ないでしょうね」


 宿の娘さんが、険しい目でオルツァーさんを睨んで人差し指をピッピッピッと振った。オルツァーさんは、私の方を見て赤くなり、慌ててプルプルと頭を横に振る。


 いや、何、赤くなってるの。そんな莫迦なリアクションをしているから、誤解を産むのよ。


「とにかく、私は宿の内風呂を借りるんで、オルツァーさんは、とっとと大衆浴場に行ってよね」


 私がオルツァーさんを宿の外に押し出すと、宿の娘さんは、ニヤニヤと笑った。

 すっかり遊ばれてるな~、オルツァーさん。


 宿の娘さんが案内してくれた内風呂は、けっこう大きく、ゆったりと入れた。

 うーん、気持ちいい~。宿の石鹸は使わずに、自分で作った石鹸とシャンプーとリンスを使う。これだけは、譲れない。

 どちらも、実家で使おうと思って持ってきた物だ。実際は、帰ってすぐに言い争って家を飛び出す羽目になったけど。


 清浄魔術は、お手軽だけれど、お風呂の気持ち良さは格別なので、なるべくこうやって、ゆっくりとお風呂に入りたい。

 これを至福の時間と言わずに、何と言うのか。うん。途中でハーブを摘んでおいて正解だわ。今日の日中の出来事や初めての乗馬で疲れきった身体が、ゆっくりと癒される。


 ああ、幸せ。


「じゃじゃ~ん!お背中、流しに来ました~っ!」


 ボンキュッバインな見事なプロポーションをバスタオルで包み、頭をタオルで巻き、手に布を持った宿の娘さんが、ご機嫌で入ってきた。


「あっら~。やっぱり女の子だったのね~」


 対する私は、全裸の無防備で、お湯の中に沈むしか隠れる手立ては、なかった。

 誤魔化し様が、ないわよね。


「サービスよ~」と言いながら、娘さんは私の髪を洗ってくれた。


「嘘は言ってませんよ。言わなかっただけです」


 私が、そう言うと娘さん--ローザさんは、キャラキャラと笑った。


「そうよね~、誰も『私は男の子です』とか、わざわざ言わないもんね。どういう理由か知らないけど、髪は自分で切ったの?後で切り揃えてあげるわ」


「え、でも、申し訳ないですし」


「勿論、タダじゃないから、心配しないで。ギブ&テイクよ~」


 ご機嫌な声で、楽しそうにローザさんが言う。

 怖い怖い。むちゃくちゃ心配なんですが。タダじゃないって、じゃあ、何なんでしょう。ひいぃ~。


「そんなにビクつかないの。先ずは、この石鹸。汚れがよく落ちる上に、いい匂い。レモンみたいだけれど、もっとスッキリしてるわね。入浴剤も同じ匂いよね。何を使っているの?」


 よくぞ、聞いて下さいました!


「レモングラスです。石鹸を作る際にレモングラスのエキスを入れて作っています。入浴剤にもレモングラスを使ってるんですよ。レモングラスは、リフレッシュ効果が高く、精神的に疲れている時によく効くんです。明日もオルツァーさんと密着して馬に乗るので、これで気になる体臭も汗の匂いも、押さえれますし」


 クスクス笑って、ローザさんは、私の頭を揉みほぐしてマッサージをしてくれた。

 気持ちいい~。ここは、天国?私は、自分で思ってたよりも、疲れていたらしい。


「私、貴族の家にメイドとして行儀見習いに行ってた事もあるのよ。私のマッサージ、気持ちいいでしょう。

 そして、このシャンプーとリンス。これは、何処で手に入れたの?ひょっとして、これも自作かしら。あなたの髪って、むちゃくちゃキレイなんだもの。羨ましいわ」


「はい、これも自分で作りました。いいでしょう、いいでしょう?これも自慢の品です。研究搭では特に女性の教授達が、お気に召して、各々お好きな香りのハーブや花のエキスを混ぜて作って売っていま……おっと」


 口が滑った。しまった。つい、誉められて気をよくして、要らない事まで喋ってしまったわ。

 ヤバいヤバい。


「慌てなくても大丈夫よ。秘密なのね。

 実は、私の別れた亭主は、結構、名の知れた商人でね。婚家では、私も商売を手伝っててね、私も商売に興味が有るわけよ。

 ねぇ、これ、販売する気は有るかしら?これは、売れるわよ、絶対に」


 思わずローザさんに振り向いた私に、ローザさんがキラリと光った目をして頷いた。






「ローザさん、大変です。ローザさんが2人?いや3人に見えます」


「やだ!湯あたりね。ごめんなさい、話が長過ぎたかしら。ほら、お風呂から上がって、上がって。はい!冷たいお水よ。この格好じゃ、誰も呼べないから、ちょっとここで横になんなさい。

 ほら、扇いだげるからね。しっかりして」





 オルツァーは、1人だと詰まらないな~と思いながら、のんびり風呂に入ってました。

 勿論、風呂上がりのビールは欠かせません。



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