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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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7/10

ご飯が不味いので、現実に戻ってきました

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 今回は、ミネルバが居なくなった後の、ミネルバのバイト先だったアレグサー教授の話です。

 ミネルバの後任のリエッタの視点です。



    魔術研究塔教授助手リエッタ side



 今日も今日とて、教授の横顔が尊い。食堂で見かけるだけだった教授を、毎日、こんな近くで拝めるなんて。


 これまで牛の様に大きく無様なカウマン教授の助手の1人だったけれど、アレグサー教授の助手に急遽抜擢された。

 教授は、若くして時空間理論魔術の第一人者。そして、とにかく顔が良い。眼鏡をかけた理知的な長髪スタイルが、最高に推せる。


 教授の助手は男の人が1人だけで、以前は学生課からバイトの助手を定期的に雇っていたらしい。お気に入りのバイト助手が行方不明となり、沢山助手を抱えているうちの牛教授の助手から希望者を貸し出して欲しい旨、お願いがあったのだ。

 先輩達は誰もこの仕事に興味がなく、何の障害もなく私が抜擢された。


「本当にアレグサー教授の助手をしたいの?まあ、止めはしないけれど、うちの研究室よりも大変よ?」


 先輩達には、逆に正気を疑われた。


 え?だってあのイケメン教授よ?何を躊躇うのよ。


「だって、うちの研究は魔獣と家畜の掛け合わせのハイブリット学よ?まあ、以前の助手も魔法薬剤師科の学生だったみたいだけど」


 高々、お門違いの学生が助手を務めれる程なら、楽勝よね。

 乳臭い小娘なんかより、私の美貌と大人の色香でアレグサー教授と良い仲になっちゃったりして、玉の輿~とか?フフフフフ。


「どうでもいいけど、問題は起こさないでね。研究室の恥になるから」


 ニヤニヤと笑う私に、先輩方は冷ややかな目で見送ってくれた。


 アレグサー教授の助手のレガスは、ウェーブの掛かった薄茶の髪の優しい雰囲気のイケメンで、アレグサー教授と良い関係を持てなくても、こっちを落としてもいいんじゃない?という気がする。


「まあ、カウマン教授の助手は何人もいらっしゃるので、問題はないだろうとカウマン教授が仰るのでお借りしましたが、あくまでも『以前の助手が戻るまで』の限定期間となる事をご了承下さい。

 取り敢えず、本日からお願いします」


 仕事は、山ほどあった。教授の指定する資料をかき集め、山ほど産み出される書き散らした紙の山を整理して綴じていく。


「先月発表されたゲーデル教授の論文」


 はいっ!


「グラッツェン教授の、去年、訂正追加された魔術圧縮理論」


 はいっ!


 教授は、無駄な事は一切喋らない。私の方を見ようともしない。


「アレグサー教授、お茶をお持ちしました」


「ん」


2日が過ぎて3日目、教授が動かなくなった。

 目を瞑り、椅子の背もたれに凭れたまま微動だにしない。

 食事の時間になると、レガスの指示通りカップに入ったスープを手渡すと、教授は目を瞑ったまま、それを飲んだ。一口大に切られた料理を教授の口に付けると口を開いて食べる。

 そして、カッと目を開き、顔を歪めた。


「何だ、これは!お陰で思考が中断され、現実に引き戻されてしまった」


 教授は、私に初めて目を向けた。


「そして、これは誰だ?」


「新しい助手のリエッタと申します」


 私は、お得意の優しげな笑みを浮かべて、次の一口を差し出した。


「はい、あーん」


 ギロリと教授は私を睨み付けて、自分の口元を手巾で拭った。


「止めろ。ああ、不味い!スープも料理も冷めきっている上に、不味過ぎる。オマケに、料理は喉の奥まで突っ込まれたぞ。お前は相手の事を考えた事があるのか!?」


 いくら美形だからって、教授は横暴すぎるわ。


「とにかく、何とか魔術呪文は出来上がった。レガス、水ブタの準備」


 アレグサー教授は、隣室の何もない実験室の中央で、片手で呪文を書いた書類を持ち、もう片方の手を上げて空中に光を放って円を描きながら呪文を唱え、両手の平に収まる程の大きさの魔獣である水ブタに触れていくと、水ブタ達は消えていった。


「良し!成功した様だな。ところでレガス、ミネ……くそっ!ヤバい」


 顔を歪めた教授が自分の顔を腕で庇い、後ろに跳びずさると、何もない空中から光が漏れ出て空中からチロチロと水が飛び出し、空中に光のヒビが入り、水は勢いを増して飛び出した。


「失敗だ。避けろ!飛び出して来るぞ」


 破裂する様に水が溢れだし、水を口から吐き出している水ブタ達が、どんどん飛び出し、部屋の壁にぶち当たって跳ね飛び、辺り一面を水浸しにして縦横無尽に跳ね回った。


「ミネルバ、何とかしてくれ!」


「アレグサー、ミネルバは居ない」


「どうしてだ!?くそっ!こういう時は、あれだ。ミネルバの魔術だ」


『蒸発乾固』


「あ、ダメだ、アレグサー。それは、やり過ぎ。バリアー張るぞ!」


 レガスが、私達にバリアーを張ってくれた。

 部屋に溢れ出た水分は蒸発し、飛び散っていた、教授が呪文を唱える際に手にしていた紙の束がボロボロと崩壊し、水ブタが徐々に干からび……。


 教授が再び片手を上げて光で円を描きながら呪文を唱えた。


『……停止、時空間を封鎖せよ』


「……失敗だ」


 最後に教授が、ボソリと言った。


 な、何が起こったの!?


 私は足に力が入らなくなり、その場に座り込んだ。

 崩れた紙の破片は跡形もなく消え、幾つもあった干からびた水ブタさえも何処かに消え失せた。


 教授は崩れ落ち、膝を抱えて頭を膝の間に埋めた。

 レガスは、その隣に座ると、教授の肩を叩いた。


「また、やってしまったよ、レガス」


「まあ、失敗だな。もう一度やり直せ、アレグサー」


「無理だよ。せっかく構築した魔術の呪文を書き記した紙も、ボロボロに崩れ、水ブタのなれの果てと共に、慌てて構築した時を止めた時空間に閉じ込めた」


「とにかく、俺たちが干からびずに済んで、良かったよ」


 え!?私達、干からびるところだったの?さっきの水ブタみたいに……嫌っ。冗談じゃない。

 うちの研究室で、動物と魔獣の間に子供を産ませるのに失敗するよりも、もっと危険じゃない。


 レガスは、何ともない様に言っているけれど、あんな死に方なんて、嫌よ。


「や、辞めます。私にはアレグサー教授の助手は勤まりません。失礼します」


 私は、ガクガクする足で扉まで這う様に行くと、何とか扉を開けて外に転び出て、這這の態でカウマン教授の研究室に逃げ帰った。


 



「で、僕の研究のミューズ、ミネルバは、何処に居るの?」


「アレグサーは聞いてなかっただろうけど、ミネルバは4日程前から行方不明だ。寮母によると、父親が危篤とかで家に帰ったまま、戻って来てないそうです。

 当の危篤の筈のミネルバの父親が、うちの研究室まで行方を知らないか、俺たちが隠してないか怒鳴り込んで聞きに来た」


「ミネルバ、行方不明なのか?ひょっとして、誘拐されたとか、殺されたとか!大変じゃないか」


「落ち着け。父親が言うには


『ミネルバを渡さないと、私が殺されるんだ。頼む、ミネルバを返してくれ』


 と言う話だから、拉致される前に逃げたのかも」


「ミネルバ……僕のミューズ。僕は、君無しでは生きられない」


「まあ、心身共にミネルバに世話されてたからな。だが、4日も居なくて気付かないんなら、居なくても大丈夫だろう?」


「捜しに行くぞ!レガス」


「お前、徹夜ハイだろ。今日は寝て、捜すのは明日にしろ」


「馬車で寝る」


「わかった、わかった。捜す方法は、あるんだろうな?取り敢えず用意してくるから、少しでも寝てろ」





 アレグサー教授&レガス、ミネルバの捜索を開始、物語に参入です。

作者も↑予想外ヾ(≧∀≦*)ノ〃


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