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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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残念な騎士は、中々の手練れの様です

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 草原での休憩が、続いています。



「昼までは、馬に乗りっぱなしになるからな。今の内に足を伸ばしとけ」


「あ、では、ちょっとお花摘みに行ってきます」


「どれを摘むんだ?教えてくれたら一緒に摘んでやるぞ。今度は、何を作るんだ?」


 ち、違うっ!そっちもしたいけれど、そう言う意味じゃないから。


「御不浄です。そこの草むらに行ってきますので」


 あなた、本当に貴族?まあ、確かにこの場所じゃあ、誤解するかも。うん。


「おう。ここでもいいぞ。私から見えない所に行かれると、危ないからな。よし、連れションするか」


 訂正。こいつは、ただの下品な奴だったわ。しがない貴族の三男坊じゃなくて、貴族のしがない三男坊ね。


「草むらで、1人で、します」


「何だ、大の方か。じゃあ、ほれ」


 オルツァーさんは、腰に着けた小袋から、小さな折り畳みのスコップを出して、私に手渡した。


「終わったら、これで埋めて、スコップを葉っぱで拭いておくんだぞ」


 ……デリカシーは何処に?

 いや、少年相手なら、そんなものか。


 いや、むしろ親切?


 もう、本当に、何かムリ。


 こんな奴に恋なんか、絶対しないわね。


 うん。これから先の旅が、お気楽で良いわ~。


「いえ、分解魔術かけますので、大丈夫です。それと、これは」


 私は、ちょっと小汚ないスコップを掴むと、目の前にかざした。


「洗浄消毒」


 ピカピカにキレイになった小さなスコップをオルツァーさんに返した。


「お、おお!すまない。キレイになったな」


 出来るなら、その小袋も「洗浄消毒」したいけれど、そこまですると、何だかオルツァーさんの持ち物全部に「洗浄消毒」したくなってきそうなので、止めておいた。


 男って奴は、信用できない。


 だから、オルツァーさんは、ちょいイケメン止まりなのか?


 イケメンは、キチンと色々気遣いが出来るからイケメンなのか。


 はたまた、イケメンは全てを許されるのか。


 その辺りに生えていた使えそうな薬草を採取した後に、お花詰みを終えた私は、オルツァーさんの立っていた辺りにも念の為に魔術を使っておいた。


「分解清浄」


 やっぱりついでに、しておこう。


「清浄消毒」


 オルツァーが鼻白んだ。


「私は、ちゃんと昨日、風呂に入ったぞ」


 やだなあ。荷物にですよ、荷物に。


 あんまり信用してませんから。


「あー、でも、野宿の時は便利だな」


 それ以外は、キチンとお風呂に入って下さいね。


「砦では、掃除洗濯はメイドがやってくれるし、飯は食堂で用意されてるからなぁ」


 スゴいな砦の騎士寮。そして、ご苦労様ですメイドさん達。私も砦で魔法薬剤師の仕事がなかったら、魔術を駆使して、砦でメイドとして雇って貰おうっと。


 私は、いざと言う時に必要であろうと思う薬をササッと精製し始めた。


「ミネは、キレイ好きだなぁ。ちょっと潔癖症気味じゃないのか」


 のほほんと、オルツァーが言った。

 まあ、確かに、そうかもしれない。


「研究者ってね、寝食を忘れて作業する人が多いんです。そうなると、お風呂は寝食よりも、もっと忘れがちで……よく、教授達に清浄魔術を掛けまくりました。

 魔法薬学の教授は清潔にしないと実験結果に響くから大丈夫なんですけど、他の教授達は怪しくて」


「魔法薬学の教授は大丈夫なのか、ミネ」


「はい、オルツァーさん。寝食は忘れても、実験の前に清浄魔術を必ず掛けますね」


「風呂とかシャワーは?」


「脳みそにインプットされてないのでは、ないでしょうか。まあ、研究が一段落するか、寝落ちするまで寝ない方もいらっしゃいましたし。食の方は、倒れる前に助手が食事を教授の口に突っ込むとかしてますけど」


 今頃、うちの教授は倒れてるかも知れないけれど、他の助手が何とかしているだろう。


「さて、薬はこんなもので大丈夫だと思います。お待たせしま「伏せろ!」」


 唐突に、オルツァーさんが私を地面に押し倒し、剣を抜き様に飛んできた矢を切り落とした。


 火矢だ。


「消火分解」


 私は、草むらに飛び火した火を消し、元の火矢を分解して消した。精製に失敗して発火した薬品を消す為の魔術だけれど、使えるから良し。

 精製に失敗した薬品は、二次反応や後反応が怖いから、成分を分解する必要がある。ここいらに生えている薬草も、合わさって燃えると有毒なガスになる物もあるのだ。


 次々と飛んで来る火矢は、キリがない。

 私達をここから、いぶり出すのが目的なのかしら。


「オルツァーさん、火矢を何とかしますから、後はお任せしても?」


「おう、任せとけ」


「水網打尽」


 火矢が飛んでくる方に向かって、私は水の網を投げた。

 それと同時に、オルツァーさんが跳ぶようにそちらへ駆けて行く。速い速い、速いわね。スゴいわ。


 私は、道具と出来上がった薬をサッと鞄に詰め、オルツァーさんの後を追った。


 オルツァーさんは、中々の手練れの様で、水網に掛かってなかった男達を何人か伸していた。


「おう、ミネ。中々やるな。で、なん何だ、これは」


「『水網打尽』ですか?あー、教授の1人が実験用の火ネズミ達を逃がしてしまった時に、私が編み出した魔術で、火を使っている奴らに反応して水の網が掛かる様になってます」


「火ネズミを逃がしたのか」


「はい、10匹程」


「大変だったな」


 はい、本当に大変でした。泣きたくなる程。





「私も学園には通っていたんだが、研究塔には、殆ど行った事がなかったな」


「まあ、普通はそうですよね。私は、バイトをしてましたので」


「小さいのに、苦労してるんだな。ほら、飴やるから、食え」


「……モゴモゴ」





 何か、宿の女将といい、オルツァーといい、皆から飴を貰うミネでした。

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