草を食む令嬢と、人を抱き枕扱いする騎士
読みに来て下さって、ありがとうございます。
2人共、ポンコツ過ぎて恋愛部分まで、中々話が進みません。困ったもんだ。
お弁当も持ったし、水筒には水もたっぷり。同情してくれた女将さんが、「後でお食べ」と飴玉も幾つかくれた。
子供って、お得。
私が馬に乗った事がないと言うとオルツァーさんは私を馬に乗せて、私の後ろに座った。
流石、騎士。後ろで私を支えてくれるオルツァーさんの胸板は硬くがっしりしている。馬の上は揺れるので、ありがたい。
普通ならば、ここで、恋の予感が生まれて、
『きゃーっ、やだ、素敵』
とかなるんでしょうけれど、出会いから、残念過ぎて、ときめく心もないわ~。
今朝起きた時は、騎士姿を見てちょっとばかり『格好いい』と思ったけれど、その直後の台詞が残念過ぎた。
この残念騎士め、あの一瞬のトキメキを返して欲しい。
さて、学園では、教室と研究室に引き籠っていたので、私は人と何を喋ったら良いのか判らなくて、馬に乗ってから殆ど黙っていた。
オルツァーさんは気にならないらしく、放っておいてくれるので、有り難い。
そう、引き籠っていて、外出も必要最低限以下だったせいで、馬に乗った事がなく……。
「お、オルツァーさん、ゴメン、ちょっとストップ!ち、ちょっと下ろして」
馬に乗ってしばらくすると、町外れの草原があり、救いの神が私に微笑んだ!
「ごめんなさい。馬に乗るの、なめてました。ちょっと待ってて」
げろん。馬に乗るって、馬に乗るって、馬車より更に振動がヤバい。馬車は、何とか耐えれたけど。もう、ムリだから。
私は、先程、馬の上から見えたその薬草を引き千切って慌てて噛み、鞄の中から小さなすり鉢とすりこぎ棒を出した。
その辺の草を千切って食む令嬢。とんでもないけど、今は平民の男の子の姿だから大丈夫、セーフ!
オルツァーさんは、薬草を食む私を見て、『お腹を壊すから止めろ』とか、『猫と同じか』とか、言ってきたけれど、こちらは、それどころじゃないのよ。
嫁入り前の令嬢が、いくら残念な男の前でも、吐くなんて、死んでも死にきれないもの。
さて、この後が私の腕の見せ所。
これさえあれば、馬酔いも、なんのその。
薬草を幾つか選んで採取して、すり鉢の中で摺り潰し、袋の中から飴玉を幾つか取り出した。
「合体練成」
宙に浮かんだ飴玉に、緑のドロドロした液体が吸い込まれていく。
よし!完成。
オルツァーさんは、ビックリして目を見開いて口を開けてたけれど、これのお陰で、教授に気に入られて研究室で小遣い稼ぎをさせて貰っていた。
研究室の材料は使いたい放題だったので、こうやって甘味を作ったり、生活必需品を作ったりもしていたし。
さあ、どんどん行きますね。
辺りに生えているタンポポ綿毛をそっと次々とむしって、袋に入れていく。袋を閉じて地面に置き、その上に自分の手を置く。
「膨張結合」
中で綿毛が膨れ上がり、絡み合って繋がり、しっかりした弾力のあるクッションが出来た。
「出来ました。オルツァーさん、出発前準備OKです」
「お、おう。ちょっと、それ、見せてくれ」
オルツァーさんが差し出した手に、私はクッションを乗せてあげた。
ふふん、どうでしょう?自慢の逸品ですよ。材料費は安い布袋のみ。タンポポのシーズンになると、学校の庭でかっさらってこのクッションを作り、教授達相手に荒稼ぎさせて貰いました。
手でポフポフしてみたり、頬擦りして、ぎゅっと抱きしめたりしたオルツァーさんは、やがて、意を決して顔を上げて私を見た。
「私にも、1つ作ってくれないか」
あ、欲しいんだ。
「で、もしも私が、また、酔っ払ってミネを抱き枕にしようとしたら、私の腕の中にこれを突っ込んでくれ」
あー、もう、それは必需品ですね。
と言うか、正体なくなるまで酒を飲まない所から始めて欲しい。
「ミネ、砦に行ったら、これで一儲けできるぞ」
「うーん。ここで幾つか作って、宿屋で売るってのも良いかも知れません。学園では、これで研究塔の教授達相手に荒稼ぎしましたので」
「……お前、学園で何してたんだ?」
「あー、ははははは……」
勿論、他にも色々、教授達には稼がさせていただきました(((*≧艸≦)ププッ




