お持ち帰り禁止令
読みに来て下さって、ありがとうございます。
今回は、オルツァー視点で、お送りします。
砦の騎士オルツァー side
夜中にうっすらと目覚めると、何か柔らかくて暖かいモノを抱いていた。ちょっと良い匂いまでする。
思わず、ギュッと抱き締めると、「んんっ」と小さく呻いて身動ぎをした。
ビックリして起きると、ベッドの中に人がいた。可愛い寝顔に、一瞬、女かと思ったが、髪がかなり短い。
男の子か!?
ギョッとして自分の身体を見ると、ちゃんと服を着ていた。そっと毛布を捲って男の子の身体を見る。
大丈夫!セーフ!セーフ!
ちゃんと、服、着てる。
目覚めてベッドの中に女だったらまだしも、男で子供は、アウトだろう。良かった、服、着てた。多分、何もしてない。大丈夫、大丈夫。
ああ、怖かった。
今まで、犬、猫、鶏までは、酔っ払ってベッドに持ち込んだ事もあったが、人間は初めてだからな。焦ったわ。
次からは、酒の量を減らそう。うん。
で、誰だっけ?この子。
着替えて出立の準備をしている間に少年が起きた。
「よお、坊主、起きたか。おはよう。
で、お前誰だ?何で俺のベッドにいるんだ?」
少年が可愛い寝惚け眼で、私を睨んだ。
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一番上の兄さんに新しい子供が生まれたと連絡を受けて、出産祝いと長男の誕生祝いに王都の実家に帰った。赤ん坊は可愛く、大きくなった甥っ子も12歳となり、生意気な盛りとなった。
でも、その生意気さが可愛らしい。
「お前も12歳の頃は、こんな感じだったぞ」
そう言った兄さんは、とても嬉しそうだった。
何か、良いよな。こう言うのも。私も、年だな。
砦への帰り道に、いつもの宿で飯が来るのを待っていると、男の子がポツンと隅のテーブルに着いていた。服装は平民服だが、キレイな顔立ちで所作も丁寧。どう見ても、いい所の子供だ。柄の悪そうな連中が、そちらを見てはヒソヒソと話をしている。
ヤバいな。
甥っ子と同じ位の年だろうか。
サッと抱えて連れて行かれ、売られて、終わりだ。
飲みかけのエールを持って、少年の前に座り、私の庇護下にある事をアピールすると、殆どの怪しい奴らは、鳴りを潜めた。
よし。
ビクついていた少年に親は何処か質問しても、祖母に会いに行くとしか言わない。
理由ありか。ヤバいな。
「ぼく、ごめんね。今日は客が一杯でさ。店を閉めるのが遅くなりそうなんだけど、大丈夫?」
宿屋の娘が、シチューをテーブルに置いて、少年に話しかけた。
「うん、大丈夫だよ。僕、見かけより年取ってるし、頑丈だから何処でも寝れるから」
「何だ?何の話だ?」
話が見えないので、宿屋の娘に聞いてみた。
「いえね、お客さん。今日は満室なんで、この子の泊まる部屋がないんですよ。だから、この後、ここで寝て貰う事になってて」
ヤバいだろう!
私は思わずエールのジョッキをテーブルに打ち付け、娘を睨んだ。
娘がビクビクしながら、弾みで飛び散ったエールを慌て布巾で拭った。
「何だって!?こんな年端も行かない坊主を店の隅で寝かせるだと?危険だろう」
店の中にいる連中が、聞き耳を立てているのがわかる。奴らが、ほくそ笑んでいるのがわかった。
「奢ってやる。食え」
だが、私が保護してやるにも、警戒されるよな。どうするかな。
串焼きを奢ってやり、私は、考えながらどんどんエールを飲み……そこからは、記憶がない。
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朝飯を奢ってやり、話を聞くと、少年は辺境砦の近くの森に住む魔女の孫で、名はミネと言うらしい。
よし、これで大義名分は揃った。私は、宿の女将に私の人となりを保証してもらい(拳骨も貰ったが)、彼を一緒に辺境砦まで連れて行く事になった。
可愛い子の1人旅は危ないからな。
このミネが孫と言う事は、薬の魔女と呼ばれるミーシャは、結構いい所の家の出身らしい。森の小さな小屋に、ほぼ自給自足で1人で住んでいるから知らなかったが。
まあ、彼女と住むのなら、安心だろう。魔女の防御力は、砦でも一、二を争う程のお墨付きだ。
私は、馬に乗った事がないと言うミネを馬に乗せ、ミネの後ろに彼を支える様に座った。
ミネが前に座ると、ミネのいい匂いが香ってくる。うちの甥は、もっと汗臭いが、ひょっとしたらミネは上位貴族の子供か何かか?生まれが違うと、匂いも違うのかも知れないな。顔立ちも、可愛い女の子の様だし。
「お、オルツァーさん、ゴメン、ちょっとストップ!ち、ちょっと下ろして」
馬に乗ってしばらく行くと、町外れの草原で、いきなりミネが叫んだ。
「ごめんなさい。馬に乗るの、なめてました。ちょっと待ってて」
あ!馬酔いか。そう言えば、馬に乗るのは初めてだとか言ってたな。マズい、流石に馬酔いの薬なんて持ってないぞ。
ミネは、私の焦りなんか素知らぬ体で、その辺に生えてた草を噛み、鞄の中から容器と小さな棒を出した。
その辺の草を幾つかを容器の中で摺り潰し、袋の中から飴玉を幾つか取り出した。
「合体練成」
宙に浮かんだ飴玉に、緑のドロドロした液体が吸い込まれていく。
???
初めて見る魔術だ。
ミネ……お前、何者?
「ミネ、その辺の草を食べるんじゃない。お腹を壊すぞ」
「らいじょぶれす。モグモグ。おなかを、なおしゅ、くしゃ、れすから。モグモグ」
「あ、猫も食べる、あの草か?」
「くちんなか、つっこみましゅよ!」
ミネも大概ですが、オルツァーは、人(令嬢)を猫扱いするから嫁の来てがないのでは?




