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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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貴方に恩はありません~

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 驀進出来るとこまで、とにかく書き進めます。いや、書いてて楽しいわ。この話。(~▽~@)♪♪♪

 騎士の名前、ギデオン→オルツァーに変更しました。すいません。



『父、危篤。すぐ帰れ』


 そんな言葉に騙された私が莫迦でした~。


 学園の寮に届いた手紙に、取り敢えず王都の外れにある荒れ果てた屋敷に帰った私を待っていたのは、危篤ではなく、私を売っ払おうと待っていた父親。


「これまで育ててやったんだから、恩を返せ」


 は?内職やって私を育ててくれたのは、死んだ母。

 その後、学園の費用を一切合財払って寮に突っ込んでくれたのは母方の祖母ですが?

 貴方は、酒に溺れてギャンブルに明け暮れてただけですよね?


「貴方に育ててもらった覚えはありませんが?」


「四の五の言わずに、先方に行け。別に嫁に寄越せとも、取って食おうとも言ってない。先方は、お前の魔法薬剤師の能力が欲しいだけだそうだ」


「だから?何故?私が貴方の為に、行かなきゃならないの?

 学園も、もうすぐ卒業なのよ?卒業と同時に国家魔法薬剤師の資格も取れるし、資格を取ってからならまだしも、資格もない私が欲しいなんて、おかしな話よ」


 父親のオルステッド男爵は、血走った目をしてオドオドとし始め、手近にあった酒瓶を手に取ってグイッと飲んだ。

 様子が少しおかしいわ。いつもなら、一々、グラスに注いでから飲むのに。何を焦っているの?


「仮面の男爵が、借金のカタに魔法薬剤師としてのお前を欲しがっている。私が知っているのは、それだけだ。早くお前を差し出さねば、奴が、やって来る」


 爪を噛んで、父親はガタガタと震え出した。


「嫌よ。真っ平ご免だわ」


 仮面の男爵には一度会った事はあったが、あんな男に会うのは二度とご免だわ。魔法薬剤師としての私が欲しいなんて、何をさせる気なのやら。


「いいから、来い!」


 父親は、私の腕を掴んで外に引き摺り出そうとした。冗談じゃない。父親には、ほとほと愛想が尽きた。


 私は、テーブルの上に転がっていた空の酒瓶を掴んで、父親の頭を殴り、その手を振り払った。


「自分の借りは、自分で返してね。お父様。私は、ご免被ります」


 踞った父親を尻目に、私は持ってきた鞄を手に取ると、そのまま乗り合い馬車に向かった。


 学園には戻れない。せっかく、もうすぐ卒業だったのにね~。父親が言うには、あの仮面の男爵は相当しつこいらしい。

 どんな用途で私が必要なのかは知らないけれど、違法な事をやらされるのは、真っ平ご免だわ。

 王都に戻った私は、『いざと言う時に売っ払いなさい』とお祖母様に貰った指輪を売り払い、髪を切って男の子の格好をし、乗り合い馬車に乗り込んだ。


「おう、坊主。お使いかい?」


「うん。ばあちゃん家に行くんだ」


 目指すは、辺境。そこには、魔女の大叔母がいる。


 心残りは、魔法薬剤師の資格取得だけれど、命の方が大事よね。向こうで、魔女の助手をして何とか生きていこう。


 辺境ですって、辺境。珍しい薬草も取り放題、誰に咎められる事もなく魔法薬も作り放題。自給自足は、楽しみだし。厄介な級友も、お付き合いも、無し!大叔母の伝手で、時々、作った薬を売れば良し。

 天国だわ。天国が、私を呼んでいる~。



 そんな時期もありました~。



 だが、私は、何故か酔っ払いのおっさん(騎士)に捕まってしまったのだった。しかも、2日目に。

 おっさん、おっさん。何してくれんのさ。まったく。


「いやー、すまんすまん。酔っ払っていたからなー。覚えが無い」


 宿屋の下の酒場で朝ごはんを奢ってくれたおっさん(騎士)は、宿屋のおかみさんに怒られた。どうやら、ここは騎士オルツァーさんの定宿らしい。


「甥っ子の誕生日祝いで、実家に帰ってたんだ。不審者じゃないから、安心してくれ」


 いや、初対面の男の子を自分の部屋に連れ込むのは、不審者以外の何者でも無いでしょう。


「それにしても、大人しいな。同じ年位の甥はもっと生意気だが。所で坊主、名前は?何処に行くんだ?私は、オルツァーだ。しがない貴族の三男坊で、騎士をしている」


「辺境に行くんだ。ばあちゃんが住んでる」


「そうか、辺境か。それなら、一緒に行こう。今から辺境の砦に帰るところだ。で、坊主の名前は?ばあちゃんの名前は?」


 職務質問なの?しつこいわね。朝食のパンとスープとハムエッグを平らげながら、オルツァーはニコニコと私に話を振った。


 おかみさんが、酒癖はちょっと何だけど悪い人じゃないし身元もしっかりしてるから、一緒に連れて行って貰うといいよ。と太鼓判を押してくれた。


「ミネ。ばあちゃんは、ミーシャ。薬の魔女と呼ばれてる」


「ああ、魔女殿のお孫さんだったか。薬の魔女殿は、砦に薬を納めてくれてるんだ。砦の騎士や砦に住む一同、魔女殿には本当にお世話になってる」


 オルツァーは、おかみさんに2人分のお弁当を頼み、私はオルツァーの馬に乗せて貰うことになった。

 まあ、女だってバレなきゃ問題ないでしょ。後は、オルツァーの酒癖がね~。


「宿のベッドは別にして下さい。また抱き枕にされると苦しいので」


 オルツァーは騎士だから、力が強い。寝惚けてギュッとされると苦しいので目が覚めるのだ。女として危機感にさらされる前に、人間として生命の危機を感じるので、切に、やめて欲しい。


 ゴンっと凄い音がして、オルツァーが頭を抱え込んだ。


「あんたは、また、そう言う事を!だから、いい年して、嫁の来てがないんだよ!

 うちの犬や猫達も、迷惑してるんだからね。いい加減に酒を控えな!」


 おかみさんの拳骨は、騎士の石頭も砕く。


 素晴らしい。


 あはは、犬猫同然の男爵令嬢でございます~。

 犬や猫と同列に並んでしまったけど、女とバレなきゃ、まあ、いいか。


 




「オルツァーさん、酒癖悪いけど、二日酔いはしないんですね」


「おう、任しとけ。『酒は飲んでも飲まれるな』が人生の標語だ」


「二日酔いがなくても、記憶が飛んでるのは、酒に飲まれてると思う」


「あー、うん。そうだな」





 反省しろ!オルツァー。そして、オルステッド男爵は、もっと反省しろ!

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