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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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守れなかったモノ

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 今回は、オルツァーの視点です。

 ちょびっと残虐なシーンあります。



     砦の騎士オルツァー side



 私の手は、ミネに届かなかった。


 ミネは、必死に私に手を伸ばしたのに。


 あの子の手を、私は掴めなかった。


 ミネの背後に現れた暗闇は、ミネを引きずり込み、ミネの指先まで闇の中に捉えると、搔き消す様に消えた。


 私は、あの子を守って砦に連れてってやると約束したのに。みすみす敵の手に渡してしまった。


「標的消失。帰還します」


「おい!待て、ハジェス」


 ハジェスと呼ばれた小さな影は、黒い服を着た小さな子供だった。ミネよりも、もっと小さな子供。

 彼らは、自分達は傍観し、あの子1人を剣を持つ私の部屋に行かせたのだ。


 子供を暗殺者に使う奴は、赦せそうもない。


 見る間に、部屋の隅の闇に、ハジェスは溶け込んで消えてしまった。


 私は、彼らがハジェスに気を取られた隙に、彼らの足を切り、動けなくした。


 這いつくばれ。


 お前らなど、それがお似合いだ。


 2度と再び剣が握れなくなる様に、彼らの手を潰した。


 彼らが、ぎゃあぎゃあ泣こうが喚こうが、私には一向に問題ない。


 蹲った奴の上に、私は腰を下ろして座り込み、もう1人の髪を掴んで思いっいきり床に打ち付けてやった。


 ガンッという鈍い音がして、男は、額から鼻から血を出したが、しゃべれれば良いので、べつに問題はない。


「ミネを、何処へやった」


「お、俺達、じゃない」


 足でグリグリと、その男の潰れた手を踏みにじってやる。

 気絶しない様に、痛みに狂ってしまわない様に。加減するのは、それだけで良い。


 また、男が煩く喚いたが、まだ大丈夫そうだな。


「ハ、ハジェス、闇に、闇に紛れる事が出来るのは、あの化け物だけだ」


 小さい子供を化け物呼ばわりし、先兵にする奴にロクな奴は居ない。


 何度か更に痛めつけてやったが、それ以上の話は出なかった。どうやらミネの背後に現れた暗闇は、彼らとは本当に関係ないらしい。

 私の下敷きになっていた男の方も、更に痛めつけて喋らせてみたが、同じ様な情報しか出なかった。

 

 まあ、八つ当たりは出来たな。


 ミネの事を思うと、心が暴れそうになる。だが、彼らを殺すのは悪手だ。もっと、情報が必要だ。


 そうこうする間に、町の騎士団がやって来た。


「私は、辺境砦の騎士団副団長 オルツァー・アーバス。彼らの仲間に、連れの少年が連れ去られた。彼らを閉じ込める牢をお借りしたい」


 騎士達は私を怪訝な目で見たが、私の目付きが悪くなっているのは勘弁して欲しい。


「取り敢えず、拷……尋問の続きは、わが騎士団の本部でやっていただきたい。宿の持ち主が迷惑がっていますので」


 蛙の様にへしゃげる事しか出来なくなってしまった男達は、町の騎士達に荷車に乗せられ騎士団の建物に運ばれた。


 私は、宿屋の亭主に金貨を握らせ、詫びと共に、もしもミネが現れたら辺境砦に知らせて欲しいと頼んだ。

 亭主一家もミネを心配してくれて、快く引き受けてくれた。

 ミネと同じ年頃の宿屋の息子に至っては、襲撃者達が宿屋の外に運ばれる途中に、コッソリ奴らの足を蹴飛ばしていた。

 中々、将来有望だな。


 ミネ、無事でいてくれ。必ず探し出し、助けてやるからな。


 私は宿屋を後にし、町の騎士団の本部へと騎士達の後に続いた。


 襲撃者達は、この領の領主と辺境砦のトップとの話合いで辺境砦に送られる事になった。

 私と襲撃者達を迎えに来たのは、トップもトップ、前女王陛下の王配のタンディン様だった。


 辺境砦は、このグリーナリー王国において、治外法権と言われても、おかしくはない。前女王とその王配の治める砦だ。


 いやいや、何故タンディン様が迎えに!?高々、騎士団副団長の私の為に??


「一番速く動けるのは、私だからな。エルディアナは忙しいしな」


 タンディン様のワイバーンは、騎士達の演習場で大人しく待っていた。


 ガハガハと笑うタンディン様は、縄でグルグルとワイバーンにくくりつけられた襲撃者達を軽く叩くと、私より一足先に辺境砦へと帰って行った。

 私は自分の馬に乗ると、その後を追った。


 取り敢えずは、調査だ。


 私は、ミネの事を知らなさ過ぎた。


 ミネは誰に追われているのか。そして、何の為に?あの子が薬の魔女の姉妹の孫と言うのが本当なら、先ずは身近な薬の魔女から、話を聞こう。

 




「所で、ミネルバ嬢。髪、バッサリ切っちゃったな。本当に男の子かと思ったぞ。なあ、教授」


「髪……ああ、短い?そうか?判んなかったな。どう見たって、いつもの小さな可愛いミネルバだろう」


「小さな……。だから、私は17歳だって言ってるじゃないですか。バイトし始めた当初の7歳とかじゃないんですからね。膝の上から下ろして下さいアレグサー教授」


「まあ、でも、そんな格好していると、確かに12歳位にしか見えないぞミネルバ。小さい頃の様で、懐かしいな」


「この間まで『アレグサー教授大好き。大きくなっても教授と一緒にいる』って、言ってたのに。反抗期かな」


「「教授、それは、妄想ですね」」





 アレグサー教授にとって、小さい頃から研究室でバイトしていたミネ(ミネルバ)は、小さい妹とか娘みたいなモノです。



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