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楽園から続く道  作者: 詠み人知らず


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傍観

 大学の講義が始まったが、輝幸は全く勉強をしていなかった。あの夜の父の顔が頭をよぎり、滑り止めの大学で勉強するのが馬鹿らしくなるのだ。自然とサークルの部室に足を運ぶことが増えた。

 新歓の夜から、サークル内で綾子の存在感は急速に高まった。綾子は同じ1年の真面目そうな女「木下奈美きのした なみ」と「アヤナミ」というコンビを組んだ。初めてのネタ見せでも、綾子のコンビはウケていた。女性にしてはやや赤裸々で、皮肉をたっぷり含んだボケを繰り出す綾子に、真面目な奈美が若干引きぎみなツッコミを入れる。勢いに乗った綾子は、後半にかけてたたみかけるようにボケていく。若くてかわいい女性が、ここまで赤裸々で皮肉たっぷりなボケをするというギャップが新しく、綾子は舞台上で躍動して見えた。見ている皆から歓声があがる。輝幸は、盛り上がる皆の横で、ただただ、圧倒されていた。

 一方の輝幸は、同じ一年の男「桧山照彦ひやま てるひこ」と「フラッシュ・モブ」というコンビを組むことになった。照彦もお笑いは初めてだったが、ボケ志望で相方が見つからなかったので、ツッコミ志望で、同じく相方の心当たりがなかった輝幸と組むことになったのだ。最初にお互いネタ書いて持ち寄ったが、照彦のネタが散々だったので、それからは輝幸がネタを書くことになった。輝幸のツッコミは一部では評価されたが、コンビとして話題になることはなかった。輝幸のコンビには綾子のような人を惹きつける華がないことを、輝幸自身が一番よく分かっていた。周囲の視線は、増々綾子に集まっていく。「あいつは違う、天才だ。」という声が聞こえ始める。輝幸は、その評価に異を唱えることも、完全に同意することもできなかった。ただ、彼女がメキメキと頭角を現していくその様子を、少し離れた場所から見ていた。

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