覇気
500PV、ありがとうございます。
キングオブマンザイ予選当日。
会場の最寄り駅に着いたとき、輝幸は既に空気が違う気がした。
輝幸は、自分と同じ方向に歩く人の流れを見て、
「この中の何人が出場者なのだろうか。」
とボンヤリ考えながら、緊張感が高まるのを感じた。
しばらく歩くと会場のTV局が見えてきた。
控室に入ると、既に、大勢の芸人たちがいた。
鏡の前で口を動かす者。
無言で台本を追う者。
誰もが平静を装っているのに、空気が張り詰めている。
笑いの大会なのに、笑っている人間は少ない。
笑いを“取りに行く”人間たちの待機所。
輝幸は、喉の奥が乾くのを感じた。
自分の心臓の音だけが大きく聞こえる。
輝幸は、壁際に一人で立っている綾子を見つけ、近づく。
綾子も輝幸に気づいた。
「静かだね。」
綾子が小さく言う。
「うん……」
返事をしながら、輝幸は、2年前の大会のときのことがフラッシュバックした。
あのときも、こんな会話をしたような気がする。
輝幸は、綾子の様子を伺う。
緊張は感じられない。
淡々としている。
淡々としているのに、目の奥だけが燃えている。
しばらく沈黙が続いたあと、綾子が口を開いた。
「ナカジ」
「何?」
「怖い?」
綾子が輝幸の目を見て聞いた。
輝幸は、素直に答えた。
「怖いよ。」
輝幸の答えを聞いて、綾子が少し微笑んで言った。
「いいね。」
今度は輝幸が、聞き返す。
「いいって、何が?」
綾子は、燃える瞳で輝幸の目を見て言った。
「怖いのにこの場に立っているってことは、今、ナカジが、人生逃げていない証拠だよ。」
「・・・」
輝幸は、無意識に”怖い”から逃げてきた。
そんな自分が心の底では嫌いだった。
綾子の言葉を聞いて、輝幸は、
「怖いのは決して悪いことじゃない。自分を嫌いでいるより、”怖い”方がましだ」
と素直に思えた。
輝幸は、少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
そんな輝幸に、綾子はニヤリと口角を上げて言った。
「さぁ、進化した私たちの漫才を見せつけてやろう。」
綾子・・・男前すぎないか・・・?
いよいよ、第一章も佳境、
手に汗握る、”漫才バトル”パートに突入です。
応援、よろしくお願いいたします。
ブックマーク、★を何卒!!




