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楽園から続く道  作者: 詠み人知らず


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31/35

革命

500PV、ありがとうございます。

 エントリーは、拍子抜けするほどあっさりしていた。


「はい、終わり。」

綾子がそう言って、申し込み用紙を入れた封筒を閉じた。

「じゃあ、明日出しておく。」

皆藤がそれを受け取る。

それで、本当に“始まってしまった”感じがした。


皆藤が事務所のホワイトボードに「KOM 予選」と書き、二人に向かって話し始めた。


「まずは、ネタづくりだ。今のキングオブマンザイは準々決勝からYou Tubeで流れる。決勝の観覧に来る客は、お笑いファンがほとんだ。準決勝までのYou Tubeも見ていると思ったほうがいい。見たことがあるネタだと、どうしても初見のネタがハマったときのインパクトには劣る。もちろん審査は芸人の審査員がやるが、客の”ウケ”も大きく採点に影響する。決勝では、準々決勝、準決勝でやってないネタを用意できると強い。」

綾子は皆藤の言葉に頷いて言った。

「てことは、2本か‥‥今、2本、感触の良いネタがある。それに、あと新ネタを2本書いて、合わせて4本を劇場で叩いていこう。仕上がりをみて、そこから2本選ぶ。」

「よし。それでいこう。」

皆藤が応える。

輝幸も黙って頷く。


机の上には、新ネタの断片が散らばっていた。

綾子が切り取った赤裸々でシニカルな女性の心の断片。

輝幸が差し込んだ、多彩な言葉のスポットライト。

それらが混ざって、一本の漫才になりつつある。


「ナカジのツッコミを活かすために、設定はシンプルにして、切れ味のいいボケをテンポよく数撃っていく形にしよう。」

綾子は言う。

「責任重大だな。」

輝幸が言う。

「お父さんに見せつけてやるんだよ。ナカジの言葉チカラを。」

そう言った綾子に、輝幸は、頷いた。


――ネタ作りが続く。

次第に、輝幸の頭の中から、父親の視線が、消えていく。

父親から“自分がどう見られるか”より、客に“言葉がどう届くか”に意識が集中していく。

‥‥‥‥‥

「この瞬間が楽しい。」

輝幸は、そう感じている自分に気づいた。

そして、なりゆきでお笑いを始めた輝幸は、このとき、初めて自覚した。

「俺は、お笑いが好きなんだ。」


自分は逃げ続けてお笑いに出会ったのかもしれない。

しかし、自分は、今、逃げでお笑いをやっているのではない。

自分が“好きなこと”を、仕事としてやっているんだ。

そう、気付いた。


――それは、彼のなかの革命だった。


この物語のキングオブマンザイは、

予選→準々決勝→決勝の順で行われ、

決勝は、9組による一発勝負です。

現実世界のM1とはシステムが異なりますので、ご了承ください。

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