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楽園から続く道  作者: 詠み人知らず


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3/35

蠢動

 説明会のあと、大学近くの居酒屋で新歓コンパが開催された。狭い座敷に詰め込まれ、安い酒と揚げ物が並ぶ。輝幸は、騒がしさに居心地の悪さを感じながら、座敷の端のほうに座っていた。皆藤の乾杯の挨拶で飲み会が始まり、しばらくすると、グラスを持った綾子がやってきた。

「中島くんだよね? さっき、私にツッコミを入れてくれた人。」

不意に名前を呼ばれ、輝幸は少しだけ背筋を伸ばした。

「あ、はい。そうです。」

「加納です。よろしく。」

彼女は軽く笑って、輝幸の隣に腰を下ろした。近くで見ると、コロコロ変わる表情が印象的だった。

「さっきのツッコミ、ちょっとよかったよね。」

「え、そうですか。」

「うん。的確なんだけど、あの場面で誰も思いついてなかった。」

 輝幸は、どう返していいかわからず、グラスに口をつけた。

「お笑いはよく見るの?」

「前にキングオブマンザイにはまって、過去動画とか漁ってた時期はありましたけど、それ以外はあまり見ないですね。」

「そうなんだ?じゃぁ、他に何か趣味みたいなものがあるの?」

「本は好きですけど。」

「へぇー、そうなんだぁ。どんな本を読んでるの?」

「小説が一番多いですけど、ジャンルはバラバラっすね。推理ものや恋愛もの、歴史ものに、ラノベや文学系。小説の他にもエッセイや哲学書なんかも読みます。」

「へぇ、だからかぁ。」

「何がですか?」

「いや、ボケを切り取って表現する語彙力が豊富なんだろうなって。」

「そうですか?」

「うん、そう。」

「加納さんは、前からお笑いをやってたんですか?」

「ううん。高校では演劇をやってだったんだ。」

「え、そうなんですね。じゃぁ、何で今日ここに来たんですか?」

「やってはなかったんだけど、昔からお笑いは好きでTVでよく見てたし、劇場とかにも行ってたんだよ。むしろ、コントから入って、演劇部に行った感じ。めずらしいでしょ?」

「へぇ~、そうなんですね。確かに演じるって意味では共通点ありますもんね。じゃぁ、高校でも、コメディー中心の演劇をやってたんですか?」

「いや、それが全然。部の方針で、海外の古典的な演目ばっかだったんだよね。」

彼女は苦い顔をした。

「そうなんですね。じゃぁ、あまりお笑いにはいかせないかもしれないですね。」

「そうは思わないけどね。お笑いでも、コントがうまいユニットは、みんなめちゃくちゃ演技うまいから。」

「あ、それはなんとなくわかります。」

輝幸がそういうのを聞いて、彼女は、輝幸の前にあった唐揚げを一つ口に放り込み、グラスに入ったお酒を一口飲んだ。

「中島くんは、なんで今日ここに来たの?」

「えっと……なんとなく、です。」

「本当は?」

「かわいい女の子と知り合えるかなって…」

 一瞬の沈黙のあと、綾子は頭を下げた。

「ごめんなさい。ちょっとタイプじゃなくて…」

「いや、3ステップくらいとんだな。」

「ははははは。」

「まず、自分がかわいい枠であるか、少しは疑いをもとうか?」

「あと、俺、人生初告白もまだなのに、もう人生初失恋!」

「はははは。はじめてだったんだね。それはいい記念になったね~。」

 綾子が笑い、輝幸も笑うと、胸の奥で何かがほどけた気がした。


 飲み会が進むと、自然と綾子を中心に話が回り始めた。

誰かの発言を捕まえて膨らませ、独特の角度で笑いに変える。

それを見ていた輝幸は、

「いや、今日入学して、もうMC的なポジションなの?」

とツッコんだ。

その一言で、場がどっと沸く。

綾子は一瞬こちらを見て、楽しそうに笑った。


そんな綾子を見て、輝幸は入部を決めた。

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