先見
500PV達成、ありがとうございます。
―数日後。
輝幸は、自宅でスマホを眺めていた。
安藤信康が、自身のYouTubeチャンネルで、若手芸人の話をしている。
何気なく流していた映像の中で、輝幸の名前が出た。
「中島ね~。今は、じゃない方芸人なんて言われ方をしているけど、実は、あいつのツッコミ、ポテンシャル高いんだよね。俺は買ってる。」
心臓が、一拍遅れて鳴った。
「まだ安定しない。でも、時々、とんでもない言葉を出す。俺は、あいつのツッコミが化けるのを見てみたい。」
輝幸は、その動画を、何度も何度も、繰り返し再生した。
――安藤さんが認めてくれている。
――俺は、ツッコミをやっていけるのかもしれない。
その夜、輝幸は自宅のソファーに寝転んで、宙を見ながら考えた。
小説。
テレビ。
漫才。
全部、同じものが核となっている。
――”言葉”だ。
俺は、幼いころから、数えきれない本を読み、
本を彩る、数多の”言葉”の中で生きてきた。
その”言葉”達は、俺が意識しないうちに、俺の中に息づいていたのかもしれない。
――数日後。
輝幸は、安藤がプロデューサーを務める深夜のトーク番組の収録に、ゲストとしてピンで呼ばれていた。
輝幸は、ひな壇で、いつものように黙っていた。
しかし、これまでのように不安な様子はなく、自然体でスタジオのトークを聞いていた。
番組には「禿ネタ」が持ち味のお笑い芸人「斎藤たかし」もゲストとして出演していた。
番組の進行役である女性アナウンサーからトークを振られた斎藤は、アドリブで、鉄板の「禿の自虐ネタ」を披露した。
しかし、女性アナウンサーは、昨今のコンプライアンスの厳格化を背景に、局から、容姿に関する直接的な表現は避けるよう指導されていた。
一人で焦った女性アナウンサーは、
「お、”落ち着いた佇まい”で、素敵ですよね。」
と、見当違いのフォローをした。
しかし、その一言で、かえって斎藤のボケが潰されてしまい、スタジオに微妙な空気が漂った。
それを見ていた安藤は、顔をしかめた。
すると、輝幸から、自然と言葉が出た。
「いや、”閑静な住宅街”みたいに言うな!」
客席に、笑いが起きた。
斎藤もほっとした表情で笑っている。
輝幸は、続けた。
「”アド街ック天〇”かと思ったわ!」
笑いがもう一段弾けた。
安藤も大声で笑っていた。
笑い声のなか、輝幸は、これまでと違い、自分の中の言葉が、自然と出てくるようになっているのを自覚した。
これから、輝幸の覚醒が始まります。
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