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第6話 ゼノンの評価
クロが最高の集中力で尾の先端まで磨き上げ、誇らしげに体を丸めていると、ゼノンが静かに部屋に入ってきた。彼はクロのあまりの集中力と、その毛並みの輝きに、一瞬言葉を失った。
「クロ様。素晴らしい艶でございます」
ゼノンは目を細めた。
「貴方様の自己管理能力には、頭が下がる思いでございます。毛並みが整うことで、魔力の流動性も向上いたします。これもまた、重要な聖務の一環。しかし、決して『労働』ではございませんので、ご安心ください」
クロは安堵の息を漏らした。
(セーフ!自己メンテナンスは『労働』ではない!俺は、究極の無職として、許された唯一の生産性を極めるんだ!)
高志の魂は、働くことを禁じられた世界で、ようやく「報われた」感覚を得た。これからは、究極の無職として、どこまでも「怠惰」を極め、「休憩」という名の「聖務」に全力を尽くすことを誓った。彼の毛並みは、彼のゆるぎない決意を映すかのように、漆黒の光を放っていた。




