第2話 覚醒とステータスウィンドウ
次に高志が目覚めたとき、彼は、ふかふかで柔らかな、シルクの寝具に包まれていた。
「……ん?」
体を起こそうとするが、体が上手く動かない。代わりに、小さな四肢が彼の視界に入った。それは、驚くほど艶やかな漆黒の毛皮に覆われていた。爪先を肉球が隠している。
「にゃあ……?」
彼の口から漏れたのは、喉を震わせる子猫の鳴き声だった。
(まさか、本当に猫に……!?)
高志は慌てて周りを見渡す。そこは、前世で彼が住んでいた六畳一間のアパートとは似ても似つかない、豪華絢爛な大広間だった。天井は高く、シャンデリアが輝き、窓の外には手入れの行き届いた広大な庭園が広がっている。暖炉では上質な薪が静かに燃え、心地よい熱を放っていた。
ここは異世界、エルドラム王国。そして、高志は、王国内で最高の権力を持つエーデルガルト大公爵家で飼われる、一匹の黒猫に転生していた。彼の新しい名は、クロ。
その瞬間、彼の目の前に、半透明の光の板が現れた。
《タカシ様(高志)の魂と、聖夜の黒猫クロの肉体が完全に融合しました。ステータスを開示します》
(うおっ!ステータスウィンドウだ!?)
高志の魂は興奮を隠せない。まるで長年開発に携わってきたゲームのUIを見ているかのようだ。
***
名前 クロ
種族 聖夜の黒猫(Sランク)
レベル 1
魔力 ∞(測定不能)
固有スキル【永久不労の祝福】【至高の癒し(エリアヒール)】【魔力収束】
***
(魔力「∞」!?測定不能だと!?そしてなんだこのスキルは…)
高志の視線は、最も理解不能で、そして最も魅惑的なスキルに釘付けになった。
【永久不労の祝福】
効果:休息、睡眠、食事、日光浴などの「無為な活動」を行う際、周囲の魔力を自動的に精製・収束させ、大公爵領の魔力循環を強化する。活動すればするほど、マナ精製効率が指数関数的に向上する。
制約:労働・貢献・能動的な魔力行使を行った場合、上記効果は即座に停止し、魔力効率が著しく低下する。また「聖務妨害」と見なされ、関係者に深刻な不満を与える。
「……働くことが、妨害だと?」
高志は驚愕した。前世で彼の価値は「働くこと」にのみ存在した。しかし、この世界では、その真逆が彼の存在意義だという。
「にゃあ……(これは…ホワイトすぎる。いや、ブラックの裏返しだ…!)」




