第十一話「新たな風」
秋季大会、決勝――
あの惜敗から、季節は少しずつ進んでいた。
グラウンドの土は乾き、新しい足音がそこに刻まれている。
瑞鳳高校野球部、新入生入部の季節。
地方大会ベスト8という結果を残した先輩たちに憧れて、数人の新入生が入部してきた。
だが、すぐに彼らは違和感を覚える。
剣士のような間合いを取る守備練習。
「試合とは斬り合いだ」と語る先輩たちの眼差し。
どこか“時代が違う”空気が、この部には流れている。
「あの……あの人、今『俺の名は永倉だ』って言ったよな……?」
不安げに言うのは、野球経験者でしっかり者の榊ユウト。
彼の目には、上級生たちの野球が、まるで“別物”に映る。
夜の部室。
神谷ハヤトが一人、黙々と素振りを繰り返す。
「ふっ、もう少し腰を落としたほうが……」
誰もいないはずの空間に、誰かが“添えてくる”ような声。
まるで背後に立って教えるコーチが、霊となっているかのようだった。
「まさか、本当に……取り憑かれてるんじゃ――」
一方で、カイたちも葛藤していた。
惜敗。あと一歩、届かなかった。
勝てると思っていた。だが――現実は違った。
ベンチ裏。
土方歳三の声が、久しぶりに聞こえた。
「……お前らだけの力でやってみろ。俺たちは、もう喋りすぎた」
「違いますよ。俺たちは、あんたらの魂を、今度こそ咀嚼して、俺たちの力にする。今度こそ勝つんです」
そう語るカイの瞳には、炎が宿っていた。
新入生の戸惑いと、先輩たちの沈黙。
剣と球、時代と時代が交錯する、瑞鳳高校・野球部の新章。
「球魂維新、第二幕」開幕