雲の上のラーメン
「次は、静岡上空第三駅」
機械的な女性の声が、無音の車内に響く。
かれこれ2時間ほど同じ列車に揺られ、地上の風景も変わってきた。土地は焼けた後はなく、空には立派な入道雲が生えている。
列車を出ると、目前に“食事処”とデカイ看板と、看板の割には小さいレストランが建っていた。お腹がすいていたし、風も強いのでさっさと店内に入った。
驚いたことに、店内には一人だけ人がいた。女性の店員らしき人物が一人。核爆弾が投下されてから、人に会うのは二回目か。
注文ついでに爆弾のことも聞いてみることにした。
声をかけると、彼女はすぐに私のテーブルに来た。
「醤油ラーメンひとつください。」
「醤油ラーメンひとつ」
彼女は元気そうに返す。
「以上で」
「かしこまりました。少々お待ちください!」
「すみません、」
「はい、どうされました?」
「東京に核爆弾が投下されたのはご存知ですか?」
それを聞くと彼女は目をまん丸にして驚いた。
「知らないです!今日はずっとここで働いていたので。」
この辺りはそんなものなのか?警報もならないのか?と疑問に思っていると。
「あ、あの警報はそういう意味だったのか…」と彼女は1人で納得していた。なんて呑気なんだ…
「じゃあ、携帯貸して貰えませんか?充電がなくて…」
我ながら少し図々しいお願いをしてしまったと後悔する。
「それなら、私の使っているモバイルバッテリー貸しますよ。換えはあるので大丈夫です!」
そんな感じで自称店長の彼女に色々お世話になった後、店を出た。ラーメンはまずかった。