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炎天下、駅、自動販売機
高度1000m 風 10m/s
使われなくなった電子掲示板は、何が起こったのかも知らず今日も高度と風速を表示し続けてい
る。
「あつ」
いくら核戦争が起きたとは言え、夏は夏だ。赤い太陽はさんさんと肌を焼いてくる。
…喉も乾いたな。なにか買おう。自販機が動いてくれればいいが。
…ウィーン───
動いた!やっぱり高度1000mは核爆弾の影響が少ないようだ。
ごくごくとキンキンとまでは行かないお茶を飲み干す。
壮観だ。
焼け野原になっている地区もあれば、今も生きているだろう地区もある。人間は、全員が死んだ
わけじゃないんだ。そう思うと、少しだけ肩の力が抜けた。
ここ2日、防空壕から逃げ出してここに来て、その間に核爆弾が降り注いだ時は気が気じゃなかっ
た。私が隠れていた防空壕も、その周りも滅茶苦茶になった。日本は、負けたんだ。
不思議な気分だ。雲は黒くて、空も未だに戦闘機が目を光らせているというのに────
すごく、綺麗だ。
心做しか、流れる汗も気持ちがいい。まるでスポーツをしているかのように。
なんだか、また喉が渇いてきたな。
そうだ、今度はコーラにしよう。