異世界ツアー始めます
この物語は、連載本編「異世界ツアーしませんか?」の前日譚です。
本編の第一回異世界ツアーのネタバレを含みます。そちらを先に読むことをおすすめします。
わたしの前に巨大なワイバーン。
生きてはいません。
このワイバーンは、わたしが景色を眺めているときに襲ってきたので返り討ちにしました。
ここは、冒険者ギルドの裏にある買取窓口です。
アンナ「ワイバーンを買い取ってください。」
わたしは金貨10枚を受け取りました。日本円で100万円相当です。
宿に戻りましょう。
わたしはアンナ。16歳、日本の高校生です。
元高校生と言ったほうがいいかもしれません。
わたしは訳あって、この異世界アウローラに召喚されました。今は冒険者として活動しています。
冒険者というのは、気楽な職業ですね。楽に稼ぐことができるので、お金は溜まる一方です。
逆にお金の使い道があまりありません。食事と宿代くらいです。
オシャレな服が売っていないので、未だに高校の制服です。
マリトッツォが食べたいです。
チョコレートが食べたいです。
アニメが見たいです。
ラノベが読みたいです。
インターネットがしたいです・・・
魔法でどうにかできないしょうか。
『召喚魔法は便利よ。』
女神様がそう言っていたことを思い出しました。
魔法で人を召喚できるので、物を召喚することも可能なはずです。
早速やってみましょう。
場所は100円コンビニ、商品はマリトッツォ、
テーブルの上に・・・
『召喚』
マリトッツォ・・・召喚成功です。
わたしは、マリトッツォを食べました。
あ、お金。
これは万引きです。窃盗罪です。
召喚魔法を逆に使って転移させれば、日本にお金を送金出来るはずです。
わたしはバッグから、財布とノートを取り出しました。
ノートを1ページを切り取って、次のように書きました。
*
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マリトッツォ(いちごホイップ)1個いただきました。
お支払いします。お釣りは寄付します。
すみません。
アンナ
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*
110円とメモを、コンビニのレジ横に・・・
『転移』
うまくいきました。
これで日本からお取り寄せできます。
わたしの好きなアニメイトからもお取り寄せが可能です。楽しみですね。
そのあと、女神様からスマホ連絡がありました。
女神様は、わたしの様子を千里眼で見ていたそうです。
のぞきは犯罪ですよ。
女神様はマリトッツォが食べたいと言うので、マリトッツォやチョコレートなど、
1000円分のお取り寄せをしました。
そしてわたしは天界に召喚されます。
天界には白い宮殿と広い庭園があります。どちらも西洋風です。
わたしが立っているところは、庭園の東屋です。
わたしは、女神様にお菓子を差し上げました。
ん?女神様も魔法が使えるから自分でお菓子を召喚すればいいのに。
そう思い、女神様に尋ねました。
地球は管轄外なので出来ないそうです。ちなみに地球の神様の名前はネモウス様です。
それから、わたしはあることに気付きました。
魔法でデジタル情報も召喚できるかもしれません。
早速試します。
インターネットがつながりました。
これで異世界から、小説家になろうのネット小説を読むことができます。
召喚魔法は万能です。
あ、いいことを思いつきました。日本円を稼ぐ方法です。
日本人を召喚して、異世界観光旅行。
そのツアーガイドをして、日本円を稼ぎます。
いま地球では、新型ウイルスが流行しています。そのため、旅行が思うようにできません。
わたしは日本円を稼ぎ、日本人は観光旅行ができます。一石二鳥です。
わたしは、日本人を数日間召喚してもよいか、女神様に尋ねました。
本人の同意と検疫ができれば、いいそうです。
早速、異世界ツアーの準備に取りかかりましょう。
*旅行プランの作成と料金設定、客数の上限。
*ツアーの宣伝、募集、申し込み、召喚の同意。
*受け入れ体制、宿泊の準備。
*ツアーに必要な備品の購入。
*旅先の現地調査。
*ツアー客の安全確保、注意事項。
*食事のメニュー。
*街の清掃。
*検疫。
思いつくのは、このくらいでしょうか。
わたしは最初にスマホのソーラー充電器を家電量販店からお取り寄せしました。
* * *
次は検疫です。
孤児院にやって来ました。
魔法による診察と治療の練習ためです。
わたしは子供達を鑑定魔法で診察してウイルスを発見しました。
身体強化魔法で免疫力を高め、魔法でウイルスを転移させることができました。
魔法による検疫の有効性が確認できました。
これで召喚した日本人を検疫することが可能になります。
* * *
次は、宿泊施設を作ります。
前に大工さんが作った家がありますが、小さいので新たに大きなコテージを作ります。
全客室スイートルームにします。
建築資材は大量にあります。わたしは、プラモデルを作るみたいに、魔法でコテージを組み立てます。
5日間で完成しました。
大きなハーフティンバー風のコテージです。
* * *
次は、街の改革に取り組みます。
まずは街の清掃です。
わたしは冒険者ギルドに街の清掃を依頼しました。
どうして冒険者が街の清掃費用を負担するのか聞かれました。
「街に貢献するためです。」と答えておきました。
本当は異世界ツアーのためです。汚い街をツアー客に見せることは、出来ません。
* * *
次は料理です。
肝心の食材が足りません。まずは食材の確保からです。
小麦、野菜、肉は入手しやすいです。豆類と芋類も少しあります。
ほとんど流通していないのが乳製品と玉子です。
チーズとバターはたまに見かけます。玉子は野鳥のものが稀に出回る程度です。
わたしはスラムに行きました。
スラムで畜産をしようと考えています。
まずは魔法で畜舎を作り、そのあと各地に動物を探しに行きました。
最初に見つけたのは、野生のヤギです。次に野生の牛を見つけました。オーロックスです。
地球では数百年前に絶滅した牛です。
そのあと鶏を見つけました。色の黒い野鶏です。
それらを魔法で畜舎に転移させ、飼育方法をネットで検索して、スラムの人に教えました。
畜産を軌道に乗せるには、住民の衣食住も確保しなければなりません。
スラムの住民は数十人。食料と古着の提供。開墾もしました。小麦、野菜、芋、香草など。
家を作る建築資材も提供しました。
スラムの中に屋根付きの共同炊事場も作りました。
煮炊きだけではなく、パンを焼くオーブンも作りました。
スラムの住民は最初、暗い感じでしたが、数日経つと表情が明るくなりました。挨拶もしてくれます。
わたしは食材が欲しくて、仕事を丸投げしただけなのになんだか心苦しいです。
それから、衛生面が心配なので、トイレも作りました。
山小屋にあるバイオトイレと同じものです。
それと、土魔法で水路を作り、川から水も引いています。
しばらくすれば、玉子と乳製品が供給されると思います。
それから街で玉子と乳製品の需要を作る必要もあります。
それらを使った料理を考えます。
次は、街の周辺にある村に行きました。農作物の栽培をお願いするためです。
土魔法で開墾して、収穫できる農作物を増やしました。
それと周辺の村では、魔物や野生動物による農作物や人的被害が出ているので、
魔物の討伐や害獣の駆除も定期的にします。
* * *
次は街で美味しい料理を普及させます。
わたしは肉屋に行きました。
売っているものは肉と脂だけです。
わたしは骨から出汁を取ることを教えて、骨も売り物になることを伝えました。
それと、ソーセージ、ハム、ベーコンの作り方も教えました。
これだけでも作れる料理のレシピが増えます。
* * *
わたしはパン屋にいきました。
想像通り、大きさや形が違う固いパンしか売っていません。
保存を優先しているらしく、固くてもスープにつけて食べるので、困らないそうです。
わたしは、果物から作った酵母を持ち込み柔らかいパンを作ることを提案しました。
バゲットや食パン、バターを使ったデニッシュとクロワッサン、具材を挟んで食べられるコッペパンや
菓子パンなども教えました。
* * *
わたしは食堂に行きました。
こちらも想像通りです。スープが3種類。固いパン。塩を振って焼いただけの肉。メニューはそれだけです。
わたしは調味料と香辛料を提供して、香草の使い方を教えました。
それと野菜や骨から出汁をとるブイヨンも教えてレシピを増やしました。
柔らかいパンが買えること、加工肉が買えることを教えました。
それから、日本人があまり知らない料理のレシピも教えました。
食堂の厨房には面白いものがあります。冷蔵箱です。
上に氷を入れて、下のものを冷やす木製の箱です。
日本でも昭和の初期ごろまで使っていたものと同様のものです。
氷は、魔法で作る人が売っています。
わたしは、氷を買ってトートバッグに入れて持ち帰る人を見たことがあります。
これはトートバッグの本来の使い方です。
* * *
わたしは宿に行きました。名前は猫耳亭です。
まずはトイレです。
この宿にはトイレがありません。いえ、この街にはトイレがありません。
どうしているのか聞きました。空き地でするか、オマルにしたあと捨てるそうです。
ツアー客に話したら、金を返せと怒られそうです。
わたしは宿の裏にスラムと同じバイオトイレを作りました。
お風呂も作りたいところですが無理です。下水道を作るのは困難です。
それから宿の主人に、食美味しいパンと加工肉が買えることを伝え、料理のレシピも教えました。
この宿は猫獣人の家族が切り盛りしています。
5歳の女の子も宿のお手伝いをしています。
先日、お母さんが子供に小石を使った計算を教えていました。
実に微笑ましいです。
窓には、わたしが発見した雲母を入れました。
* * *
街での活動と平行して、観光地も探しています。
転移魔法、飛翔魔法、千里眼を活用しています。
きれいな山を見つけました。ヨーロッパのアルプスに似ています。ハイキングにいいですね。
高山植物もきれいです。
* * *
きれいな湖を見つけました。景色が映り込んで鏡のようです。水辺の花もきれいです。
湖には恐竜がいます。恐竜は女神様が地球から転生させた生き物です。
他にもこの世界には、古代生物がたくさんいるそうです。
* * *
わたしは森の中に入りました。
森の中には魔物がたくさんいます。ファンタジー小説やゲームに登場する魔物です。
ツアー客が見たいと思うはずです。
森の奥に入ると、大きな青い鹿の魔物がいました。風格があります。神々しいです。
森の主という呼び名がぴったりです。
* * *
わたしは大陸の北方に来ました。
マンモスがいます。ツアー客に見せたいです。他に何かないでしょうか。
探索魔法で山の内部に空洞を発見しました。
ダンジョンでしょうか。ワクワクします。入ってみましょう。
ですが、入口がありません。小さな隙間があるだけです。
わたしは土魔法で入口を広げて中に入りました。
中は洞窟です。わたしは魔法で灯りを作りました。洞窟内は生き物の気配がありません。
ダンジョンではないようです。
せっかくなので洞窟を探検したいと思います。
水晶を発見しました。鑑定魔法で魔水晶だとわかりました。
しばらく歩くと広い空間がありました。壁面や天井なは、魔水晶がたくさんあります。
まるで夜空を見上げているようです。
わたしは更に奥へ進みました。
巨大な空間がありました。巨大な魔水晶がたくさんあります。感動です。
この空間はクリスタルホールと名付けます。
* * *
観光地探しは続きます。
わたしはドラゴンを発見しました。
テーブルマウンテンを住処にしています。
ツアー客に見せたら、驚くと思います。
* * *
観光地を探すのは楽しいです。まさに冒険です。
この感動がツアー客に伝わればいいですね。
観光以外に重要なのが、魔法です。
日本人でも魔法が使えるように、魔道具を作りましょう。
ギルドで冒険者登録するのもいいですね。
日本人と巡る異世界ツアー、楽しみです。
* * *
結局、異世界ツアーの準備に2ヶ月ほどかかりました。
ツアー客はSNSで募集してあります。
わたしは今、夜空を見上げています。星がきれいです。月は二つあります。
いずれあの青い月にも行ってみたいです。
でもまだこの惑星アウローラには、行くところがたくさんあります。
青い月は、あとのお楽しみですね。
いよいよ明日は第一回異世界ツアーの初日です。
* * * * *
翌朝。
異世界ツアーの当日になりました。
今わたしは街の外壁から出て、小さな丘の上にいます。
服装は学校の制服、紺色のブレザーです。
白手袋、左手に日の丸の旗、頭にシンプルなミニハットという格好です。
これならツアーガイドに見えると思います。
異世界ツアーがついに始まります。
わたしは千里眼で、日比谷公園にいるマスク着用の女性四人組を見つけました。
四人のツアー客に、意識を集中して・・・
『召喚』
アンナ「ようこそ、異世界へ」
連載本編「異世界ツアーしませんか?」
よろしくお願いします。