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幻想々話

月夜にて、あるいは闇夜にて

作者: 荒木田久仁緒
掲載日:2022/02/28


いい月夜だね、お嬢さん。



うん……。

って誰? あんたたち。

それにお嬢さんって……あんたも子供じゃない。



うふふ、いいね。身の程を知らない。世間を知らない。

だから自分の限界も知らない。運命に抗うものの絶対条件。



だから、誰なの、あんた。



満月が好きな、ただの妖怪。あなたと同じね。

同類のよしみで一つ、いいことを教えてあげる。



いいこと……?



私たちの力は、月から貰うものではないの。

全ての力は、自分の内にある。

月はただ、その力を引き出してくれるだけ。

それに気づけば、満月はいつでも、あなたのすぐそばにある。



……なに言ってんのか、わかんない。



そうね、私もわからない。霧の向こうはよく見えないから。

でも、これを教えることで、きっとあなたの運命は変わる。



はぁ……?



ねえパチェ、この子に本を読ませてあげて。

月の魔術に関する本がいい。



え? そんな、大事な本が獣くさくなっちゃうじゃない。



くさくないもん!



うるさい。

……ねえレミィ、どうして?



そうすると面白いことが起きそうだから。



……いつものね。

わかった、ついてきなさい。

ただし、汚したり破いたりしたら敷き皮にするからね。

あと、とりあえず入れる前に洗うから。



さっきから勝手に何!?

いったい誰なのさ、あんたら!



ああ、今夜は本当にいい月だな。

美鈴、お茶とお菓子を用意して。この子の分もね。

……ほら、どうしたの? 来ないの?

進まぬ先には、道はないよ?



……行く。








  ◆ ◆ ◆








今日で、終わりにしましょう。



えっ!?

ど、どうして……!?



お嬢様に言われたことでもありますし、いろいろ教えましたけど。

でも、やっぱりあなたは、単に強くなる以上のことを求めてる。

そしてそれを、私が教えることはできないんです。

……今の幻想郷では、ね。



それ、は……。

……でも! 普通の修練なら、まだ……!



あなたは既に十分強いですよ。人狼としてはね。

これ以上、私が教えることはないくらいに。

ただし、別に褒めてるわけじゃありません。

もう、あなたには伸びしろがないんです。

少なくとも体術に関しては。



えっ……。



満月ならば、話に聞くその相手くらいなら、普通に勝てるでしょう。

でも、あくまで普通に勝てるだけです。

万全のあなたと戦うからには、当然そいつも警戒している。

(  )不慮の事故(  )が起きることはない。

たとえ満月の夜にそいつを追い出せたとしても……。

……そして、新月の夜には、(  )不慮の事故(  )は起きる。



新月でも、私にはっ……!



ええ、何やら作ってたのは知ってますよ。

でも無理です。あれでは絶対的な不利を覆すには足らない。

切り札と呼べるようなものじゃない。



そんなっ……。



……あなたにはもう、何人もの友人がいる。

近くから、遠くから、見守ってくれている人もいる。

本来の場所ではないけれど、暖かい居場所があるんです。

だから……。



それでもっ!!

……それでも、私はっ……私は、絶対にっ……!!






……繰り返しになりますけど。

あの技を使ったとしても、普通はまず勝てません。

一撃くらわせられるかどうかの持続じゃ、ほとんど役に立たない。



だから、諦めろって……!



落ち着いてください。本題はここからです。

普通じゃないやり方でなら、その半端な切り札でも勝つ道はある、と言ってるんです。



……!!



ただし、それは非常に危険な方法です。分の悪い賭けと言ってもいい。

そして、もしうまくいったとしても、決して二度は通じない。

だからそんな方法、たとえ知ったところで、何の意味も……。



教えてください。



……。



お願いします。



まあ、あなたがどうしても知りたいっていうのなら。

……念を押しておきますが、私が教えるのは、ただ一度だけ勝つ方法。

それ以上の意味はありません。その結果がどうなろうと知りません。

いいですね?








  ◆ ◆ ◆








紅魔館の状況に、変化はありません。

あの閻魔も、流石にそろそろ動くようです。



そうねえ。

まあ、こればっかりは決まりごとだしね。



……あの。



なぁに?



いえ、何でもありません。



あのね、藍。



はい。



あなたが考えることくらい、私にわからないと思うの?



……失礼しました。



言いなさい。遠慮はいらないから。



ただ少しばかり、助力などを、と。



うん。問題にならない範囲でなら、ね。



ありがとうございます。



随分あっさりと。そう思ったでしょ?



はい。

実利も多少は、とは考えましたが。



それもあるけど。

別に、あなただけからの願いでもない。そういうこと。



……成程。



(えにし)というのは、本当に面白いものね。そう思わない?



まことに。



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