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エピローグ

 この日転移者保護の仕事が終わり、クラリッサの屋敷に戻る。キッチンではデレクが夕飯を作っていた。すっかりこの屋敷食事に用意はデレクがやるようになってしまい、正直なところ私はする事がないが、一応キッチンを覗いてデレクに何か手伝えないか聞く。


 ちなみにプラムは怪しいスプレーの作成をし、クラリッサは仕事で自室でずっと執筆していた。デレクにあんな事をされたのに、ヒロインとヒーローのラブシーンの参考にするとデレクをわざわざ呼び出して当時の気持ちを取材しながら書いているようである。あの事はクラリッサの傷にはなっていない事は救いだった。


「デレク、今日の夕飯何?手伝える事ない?」

「今日は冷製スープと田舎パンのサンドイッチだよ。毎日あっちの世界のごちそう食べても健康に悪いからね」

「そっか」


 キッチンをよく見るとあらかた料理は出来上がっているようで私が手伝える事は無さそうだった。スープもサンドイッチもおいしそうである。


「デレク、もう色仕掛けや不倫みたいな事はやっちゃダメだよ」


 もうあんな事はしないとは思うが、一応念を押す。確かにデレクは欠点だらけの男だが、人懐っこいところや料理上手は他の人には無い長所である。そんなせっかくの長所があるのに、あんな事をしてズルをするのはもったいない。


 カーラだってそうだ。外見の良さはもちろん、生真面目さや正義感の強さという良い面もたくさんあったのに、色仕掛けのような事をしていたのは勿体ない。こんな事をずっとしていたら、いつしかズルをするのが当たり前になり、自尊心も失うのでは無いかと思う。


 日本にいた時は生徒に「なぜカンニングがいけないの?」と問われたが、いつも「自分が嫌いになるからダメだよ」と答えていた。ズルをして手に入れた結果と、きちんと正当な努力をして得た結果ではどちらが自分の事を好きになれるだろうか。やっぱりズルは自分のためにも良くない。自分を傷つける行為だと私は思う。


 ズルとまではいかないが、日本にいた時の職場にはコネで働いている人も何人かいた。その人達はどことなく自信が無さそうで、あまり羨ましくはなかった。やっぱり正当な努力は事をほんの少し自分を好きにしてくれて、自信も育つのだろう。


 そんな事をついデレクに真面目に語ってしまった。すっかり日本にいた時のような教師モードだったが、意外にもデレクは真面目に聞いていた。というかちょっと泣いてもいた。


「ちょっと説教っぽかったかな。先生だったからと思うけど、ごめんね」

「いや、違う。やっぱりマスミは可愛いよ。いい女だよ」


 その台詞はてっきりいつものような媚びを売るものだと思ったが、デレクはとんでもない事を言うではないか。


「マスミの事、好きになっちゃった!」


 いつも以上に邪気のない笑顔で、私は驚きで顔が固まった。


「私はアンジェリカやクラリッサみたいにお金ないけど?」

「うん、わかってるよ!」

「っていうか、牧師さんが好きなんだけど」

「知ってるよ。でも、僕が勝手に好きになることぐらいいいでしょう? 僕と付き合って、カフェも一緒にやろうよ!」


 上目遣いに甘えるようにいう。おそらく自分が一番可愛く見える表情を知り尽くしている。とてもあざといが、人生初のモテ期に私は戸惑う事しかできない。


 まったく、人生は何があるかわからないものだ。辛すぎて大変だと思い込んでいたら、急に目の前に飴玉があったりもする。こんな飴玉だとは予想しなかったが。


「どう? マスミ」

「そうね、ちょっと考えて見るわ」


 私はニッコリとデレクに笑顔を見せる。


 こんな予想外の人生の飴玉にも何か意味があるのかもしれない。


 願わくは、この村にも神様のご加護があらん事を。


 God bless you!


本編完結です。

ご覧頂きありがとうございました!



2作目ですが、プロローグにあるように某メンタリストの炎上をネタに書きました。あと某芸能人の風俗嬢楽しみ♪という炎上発言から着想もえました。だいぶ塩っぱい話になってしまった感じです。


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