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44話 最後のスイカジュースになるかもしれない

 その後、私は牧師さんのこの屋台でアビーとジーンが作った蝶々型のブローチを買い、アナのジュース屋の方に向かう。こちらも少し客が減ってきたようで、アナとも少し話せそうだ。


「よぉ、マスミ!」


 なんとアナのジュースのそばにはミシェルがいた。あのお別れパーティー以来の再会である。


「ミシェル、久しぶりね」

「おぉ、手紙ありがとうよ」

「お二人さんはジュース何飲む?」


 ミシェルはあの青汁風のジュース、私はスイカジュースを注文した。


「アナ、けっこうジュース屋人気みたいじゃん」

「そうね、ミシェル。メニューを少し見直して色々試行錯誤中よ」


 アナは私達にできたて新鮮なジュースを渡す。ミシェルは、一口飲み苦い顔をしていたが、どうにか飲み干していた。この村の男達は健康の方が重要らしい。


「ところで、カーラが亡くなったんだろ。大変だったな」


 少し戸惑いながらも、ミシェルはカーラの話題を出す。青汁風ジュースが理由ではないであろう理由で渋い顔を見せていた。


「犯人わかった?」


 アナがちょっと好奇心を隠せない表情であるが、残念ながらまだわかっていない。私は力なく首をふり、スイカジュースをちびちびと飲む。微かに塩味が効いていて、この日差しの下で飲むと美味しい。


「カーラといえば、俺ちょっと王都で調べてみた」

「何を?」


 私もアナもミシェルのこの話題に食いつく。ミシェルの話をによると、カーラは王都でジュース屋をやっていたらしい。でも王都は人口が多く激戦区。カーラの事業もわざと半年で負債を抱えて店じまいしたそうだ。ミシェルはカーラを王都で見たような記憶があり、色々調べてくれたという。その話を聞き、アナは同じジュース屋として心を痛めていたようだ。


「そうだったの。道理でカーラは私のジュース屋に耳の痛い事を言うわけね…」


 カーラの借金もこの事業での失敗の結果だろう。私も改めてこの異世界で転移者が生活していくのが難しい現実を突きつけられた気がした。


「カーラは転移者だったの。この事は他人事じゃないわね」

 思わず、私もこんな独り言が漏れる。カーラが転移者と聞いて、ミシェルもアナも驚きというより同情が隠せないようだった。

「マスミも大変ね。もしどうしても食いっぱぐれたら、うちの農家を手伝えばいいわ」

「そうさ。住む場所も最悪教会があるからさ。もし家をなくしたら牧師さんに相談すればいい」


 私は二人にこんな優しいことを言われ、涙が出そうだった。改めて自分は運がいいのだと思う。もし一人で王都に転移してしまったら、今生きていっるかもわからない。


「うん、ありがとう二人とも」

「そんな、当たり前の事よ」

「そうさ。困った時はお互い様!」


 こん世界にもこんな言葉があるのか。私はミシェルの声を聞きながら、再び犯人への憤りが強くなる。腹に怒りが溜まり、一刻も早く捕まえたい。


 犯人はアンジェリカ? 村長?」


 私はスイカジュースを飲み干すと、村長の家に向かった。


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