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39話 人助け

 ・デレクとカーラが転移者だった。

 ・二人はそれで意気投合した友達


 私は今日わかった事をメモ帳に書き、私は転移者保護の仕事に向かう。


 デレクはともかくカーラが転移者だった事で、私は彼女に同情心しか持てなかった。


 一応これでカーラの秘密はほとんどわかった。なぜ借金を抱えたかはわからないが、だいたい想像はついてしまう。


 まず私は、商店街に行った。ちょうどリリーが店の前で品出しをしていたので、話しかける。


「ハイ、マスミ」

「リリー、こんにちは」

「聞いたわよ。この村は大変ね」


 と言いつつリリーは、アンジェリカの不倫の噂を目を輝かせて語っていた。


「その噂ってどこで聞いたの?」

「さあ、でも気づいたら広がってた感じね」


 事件に関係あるかと思ったが、噂の出どころを調べるのは難しいだろう。この不倫もデレクが金目当てに近づいたという酷すぎるものだが、わざわざ言わない方がいいだろう。リリーのこの様子では、尾鰭がつきもっと酷い噂話になりかねない。クラリッサにも害が及ぶかもしれません。デレクはどうなってもいいが。


「それに相手のデレクって昨日タピオカ屋を壊されたんでしょ?」

「ええ、そうよ」


 クラリッサの家に居る事もここで言わない方が良いだろう。噂に尾鰭が付く事が目に見えている。


「事件と関係あるかしら? リリーは心当たりない?」

「うーん、無いなぁ。タピオカみんな飽き初めてるし、あっちの方はあんま人がいないのよね」

「そっか」


 そう簡単に手がかりは掴めないようだ。


「アナにジュース屋はちょっと混んでたわよ」

「本当?」


 それは嬉しいニュースで、私の声も弾む。


「マスミ、最近本当に肌綺麗になって痩せたじゃない?やっぱりアナにジュース効果かね。私も人参ジュースを飲み初めてから腹持ちが良くって、食欲減るはじめてる」


 確かにリリーもちょっと頬がほっそりし始めている。リリーはもともと痩せていたそうだが、杏奈先生のカフェのお陰で太ってしまった。同じ転移者としてはちょっと責任も感じ、こうして痩せ始めたのは悪い事ではないと思う。


「じゃあ、なんか事件について思いついたら教えてね」

「うん、じゃあね。マスミ」


 こうしてリリーと別れ、今度はミッキーのパン屋の向かう。商店街のは転移者や不審な扉は見当たらないようで安心したが、事件は解決したわけでもない。ミッキーにも何か異変がなかったか話を聞こうと思う。


「いらっしゃい、マスミ」

「こんにちは」


 店の中は相変わらずパンの焼ける匂いと小麦粉のいい匂いがした。ミッキーは焼き立ての雑穀パンを並べていた。


「美味しそう、雑穀パンスライスして貰える?」


 ミッキーは頷き、工房の方でパンをスライスし袋に詰めてくれた。


「マスミ、昨日は大変だったな」

「え?」

「デレクの話を聞いたよ。村で同じ商売している人が被害に遭うなんてな」


 ミッキーは心配そうだった。


「それに昨日の昼間、デレクの店の方で怪しい奴を見たよ」

「本当!?」


 私はその話を食いつき、メモ帳を取り出す。


「うん。まあ、よくは見えなかったけど女ではなかったな。森の方に逃げていった」

「誰かわかる?」

「そこまではな」


 ・デレクのワゴンを壊したのは男?


 ちょうどメモを書き終えたとき、パン屋には客が入ってきた。この中途半端な時間にはいつもはあまち客がいないのだが、村では見かけない顔だった。仕立てのいいスーツをきた中年男性だ。


 ふと思い出した。


 カーラの事件のあった日、このパン屋目当てで来ている王都に男性である。


「いらっしゃい、ダニエル」

「こんにちは! 今日は田舎パンもらえますか?」


 こに男はダニエルという男らしい。ミッキーと親しいようだ。

 ミッキーから紹介される。


「はじめまして。僕は実は王族のもので」

「そうですか。私はこの村の転移者の藤崎真澄です」


 ダニエルは王族の関係者だったらしい通りで服装や態度が洗礼されているはずだ。


「わざわざ王都からなんてミッキーのパンが好きなのね」

「ええ、本当に美味しいですよ!」


 ダンエルに力説されてミッキーはまんざらでも無い顔である。珍しく嬉しそうでちょっと頬も緩んでいる。私もダニエルもお金を払い、パンの袋を受け取り店の外に出る。


「あぁ、いい天気だな。どこか景色の良いところでパンを食べたいよ」

「そうですね」


 私は空を見上げる。今日はちょっと暑くもあるがよく晴れていて空も澄んでいる。白い雲はソフトクリームを連想させ、ちょっとお腹も空く。


「だったら、この村の湖行きません?途中に美味しい野菜ジュースの店もああるし」

「いいですね」

「じゃあ、一緒に行きますか」


 ダニエルと私は湖を目指して歩き始める。途中、ダニエルは政治や税金の話を熱っぽく語っていた。王都では国政の仕事にも携わっていた事もあり、色々思うところがあるらしい。


「転移者のあなたも何かと大変でしょう」

「そうですね」


 カーラやデレクの話を聞き、私も全く将来について笑えなくなってきた。今はクラリッサや村の人達の好意で生き延びているが、いつまで甘えていい訳にも行かない。


「転移者も国がもっと保護すべきですよ」

「そうだと良いんですけどね」


 実際は差別があり、職につきにくいという現実を見せゆけられている。国に期待して良いものかわからない。


 アナのジュース屋は、村の女達で賑わっていた。あの世界一まずいアオジル風のジュースはさすがに買うのが躊躇われ、人参ジュースを買う。ダニエルは、野菜ジュースではなくスイカジュースを買っていた。パンと合うかはわが、栄養にもいいからおすすめだ。


 ダニエルとジュースを飲みながら、教会の近くの道を歩いていたら牧師さんに会った。


「マスミ、こんにちは。あ、ダニエルじゃないですか」


 牧師さんはダニエルの事を知っていた。しかもちょっと親しげでもある。


「ダニエルはクラリッサとも遠い親戚でね。昔、クラリッサのお屋敷でパーティーをやった時に知り合ったんだ」


 牧師さんが説明する。意外とダニエルはこの村と縁があるらしかった。


「僕もちょっと湖の方で休憩しようかな」

「牧師さん、ちょっと疲れてない?」


 牧師さんの顔を確かにちょっと疲れている。目の下にクマができ、寝不足みたいだ。


「アビーとジーンがまたヤンチャしてね。キッチンがめちゃくちゃに…」

「それはお気の毒…」


 事情を察した私もダニエルも同情を禁じえなかった。

 こうして三人で湖に向かう。私は一応、デレクの事やカーラの事件について二人に聞いてみるが、やっぱり手がかりにつながるような情報は得られなかった。


「本当にコージー村はよく人が死ぬな…」


 ダニエルは頬を引き攣らせて引いている。村の外の人間はそう思うのだろう。村に来て1ヶ月ぐらいの新参者の私は気持ちはよくわかる。


 しかしダニエルは、そう言った後に顔が赤くなり、ちょっと気分が悪そうだった。


「ちょっと、ダニエル大丈夫?」


 私はすぐ異変に気づく。これは、生徒が熱中症になった時の様子と似ていた。


「うぅ、なんか気分が…」


 ダニエルはその場に崩れるように倒れた。


「大変だ!」

「牧師さん、早く上着を脱がせてネクタイも解いて!」


 私は牧師さんはすぐ言う通りにし、担いでジェイクの医院に向かう。生徒が熱中症になった時は、出来るだけ薄着にさせすぐに涼しい保健室に連れて行き、水を飲ませた。そばで私はダニエルの様子をみる。意識はあるようで、少しスイカジュースを飲ませる。確かこのジュースには塩が少し入っていた。


 牧師さんの行動は素早く、冷静な時に見ると惚れ直しそうだ。ただダニエルの様子が心配で、そばでオロオロするしかできなかったが。


 牧師さんのおかげですぐにジェイクの医院に運ばれ、ダニエルは処置を受ける事になった。


 処置を受けている間、私と牧師さん医院の待合室で座って待つ。


「牧師さん、ダニエルは大丈夫かしら」

「たぶん軽い熱中症かと思いますが、この村の暑さはえぐいですね…」


 いつもおっとりと動じない牧師さんであったが、こんな状況ではさすがに心配そうだった。


 しばらく待っていると、ジェイクが出てきた。


「ダニエルは大丈夫?」

「ジェイク、大丈夫ですか?」


 私と牧師さんは、齧り付くように問う。

 ジェイクはちょっと引き、苦笑していた。


「うん、軽い熱中症だったよ。たいした事ないけど、一応ここで今日は泊まってもらうよ」


 その話を聞き、私も牧師さんも胸を撫で下ろす。


「とにかく早くここに連れてきて貰って良かったよ。マスミもすぐに上着やネクタイを脱がせたんだって? 正解だ」

「日本人もよく熱中症になってからね」

「牧師さんも早く運んでくれて助かった。ダニエルもすごく感謝していたよ」


 そう言われてちょっと疲れていた牧師さんの顔もにこやかになる。やはり、人間は誰かの役に立てると嬉しいのだろう。私も少し役立てる事ができて良かったと思う。


 医院には村人が患者としやってきて、邪魔になるだろうと牧師さんと私は後にした。


「マスミはこれからどうするに?」

「湖の方行って転移者保護の仕事だけど?」


 何やら牧師さんは、何か言いたそうな顔をしていた。何か言いたい事があるそうだ、自分からは言いにくいのだろう。


 私はちょっとため息をつき、こう提案した。


「湖と森の方に一緒に来る?歩きながら話しましょうか」


 牧師さんは頷き、一緒に歩き始めた。


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