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33話 悲しい事情

 予想通りローラはキャバ嬢だった。日本のキャバクラとはちょっと雰囲気は違うようだが、ローラの雰囲気は不思議と日本のキャバ嬢と大差が無い。


 私達は注文した田舎パンのサンドイッチを頬張った。確かに具は少なめだが、硬いパンと生ハム、オリーブオイルの実がよく合う。隠し味にマヨネーズみたいなソースも入っていてピリッとして美味しかった。とりあえず注文した軽食が不味くなかったのはラッキーである。


「本当にカーラと友達だったの?」


 私は、疑問に思った事を口にしていた。カーラとローラの雰囲気は正反対である。カーラは美人ではあったが、派手ではなかったし、二人が友達というのが納得出来なかった。


「そうよ。カーラと私はずっと一緒に仕事していたもの」

「というとカーラもキャバ嬢だったの?」

「ええ」


 私とデレクは思わず顔を見合わせた。まさかのカーラがキャバ嬢だったなんて。職業差別をするわけでは無いが、あまりにもカーラとそれが結びつかず、やっぱり信じられないのが正直な気持ちだった。


「これが働いていた時の写真」


 ローラは、一枚のモノクロ写真を見せてくれた。そこには、モノクロでも十分化粧や髪型が派手である事が伝わってきるカーラの姿がある。美人だから派手な格好も似合っていたが、その表情は捨てられた子猫のように悲しそうで、泣きたくなった。デレクも悲しそうに俯いている。キャバ嬢という仕事を楽しんでいたとはとても思えない表情だった。


「でも、カーラは役所の職員だったのよね。どういうキッカケでそうなったのかしら」

「カーラはお客さんの一人にとっても気に入られてね。隣町の村長よ」

「どういう事?」


 デレクがブラックティーをすすって聞く。


「うん、その村長がカーラの借金を肩代わりしてね、晴れて彼女は自由の身になったと言うわけ。まあ、カーラ自身にはそれでもかなり借金はあったけどね。羨ましかったな。あのコージー村の村長は、ちょっとはカッコよく見えたね」


 プラムの推理は当たっていた事になる。


 ・カーラはキャバク嬢だった

 ・おそらくカーラの想い人は村長で間違いない

 ・村長の愛人だったという噂は嘘ではないだろう


 デレクやローラがサンドイッチを食べている間にメモを書く。


「村長はどんな感じだった?」


 私はさらに詳しく聞く。


「とにかくカーラにメロメロ、溺愛してたわ。よく高いチーズやワインあげてたし」

「だったら村長はカーラを殺す動機はなくない?」

「そうね。あの村長が殺すかわからない。あり得ない気がする」


 デレクとローラの指摘はもっともだ。でもカーラの日記によると想い人とは上手く行っていなかった。何か恋愛の行き違いで殺しに至ってもおかしくは無い。とにかく村長について調べないと!それにこの事が事実であれば、村長の妻のアンジェリカがカーラを恨んでいてもおかしくは無い。今のところ村長とアンジェリカが一番怪しい人物だった。


「でも、お金は人を狂わすからね」


 驚いた事にローラはクラリッサと全く同じセリフを吐いていた。ニヤリと笑い、不気味な笑みも浮かべている。少し怖かったが、デレクは何故か深く頷いていた。


「私だって借金チャラになるなら、こんな仕事はしないわ」


 ローラは少し身の上を話し始めた。おそらくデレクの人たらしいっぽい雰囲気に気が緩んだろう。


 王都でネイルサロンを開いたが事業はうまくいかず、あちこちに借金。その一つにヤクザのような所から金を借りてしまい、キャバクラで働いて金を返す事になったのだという。


「何でこんなに生きるのって難しいのかね。貧乏って自己責任? 本当に?」


 再びローラはポロリと涙をこぼした。私もデレクも何も言えなかった。人事ではないからである。


 日本でも人気メンタリストがホームレスに暴言を吐き炎上していたが、もう私はそんな話題では笑えない。人事ではないからだ。自分もあと一歩間違えていたらそうなっていただろう。というか、この異世界の村で今後仕事があるかわからないし、ローラの姿は近い将来の自分にしか思えない。


「ねえ、ローラはカーラが何で借金作ったか知ってる?」


 デレクは私が聞きたかった事を先に質問してしまった。


「さぁ。あの子は自分の事を話さなかったから。でも私と同じで事業の失敗とは言ってたね」


 事業の失敗と聞き、デレクもちょっと眉がピクリと動く。やっぱり人事では無い話題のようだ。


「あーあ、楽して稼げる仕事が有ればいいのにねぇ」


 デレクはそんな事を言って笑っていら。ローラの私も笑うしか無い。現実には日本でもアメリカでも異世界でもどこでもそんな仕事は無いのだろう。


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