30話 金銭欲は美意識も歪ませる
翌朝、プラムからは昨日見たあの気持ち悪いラブシーンについては口外するなと釘を刺された。
「この村の連中の口の軽さと噂の広がる速度を馬鹿にしない方がいいわ」
クラリッサの家の庭の雑草をむしりながら話題は自然とアンジェリカとデレクの事になる。今日は午前中はメイドの仕事を手伝った。
「言わないけど、昨日は驚いたわ」
「不倫かしらね。気持ち悪いわ」
アンジェリカは、心底気持ち悪がっていた。
「ところで今日は、マスミはどこを調査するの?」
「今日は隣町のカーラの友達を探そうと思ってる。しかもデレクと…」
「なんでデレク?」
プラムは抜いた雑草をゴミ袋に入れ、その名前も聞きたくないという嫌悪感いっぱいの表情を見せる。私は昨日の事を説明した。
「デレクとアンジェリカはこの事件と関係あると思う?」
「うーん」
プラムは大きな目をぐるりと回し、しばらく考えていた。
「でも、自分が不倫するくせにカーラ殺す? アンジェリカはカーラと村長が不倫をしていたと思い混んでいる見たいだったけど、人の事言えないというか…」
私は自分の推理というか憶測を話す。
アンジェリカはカーラを確かに恨み、嫌っていたが、自分が不貞行為をしている以上、カーラを恨み殺すとは思えない。それにあの様子ではかなりデレクに熱を上げていそうだ。頭の中はデレクでいっぱいだろうし、カーラを殺すのかもわからない。
「でもカーラは誰かを脅していた可能性もあるでしょう。デレクの不倫を知って、二人を脅して殺された可能性もあるわ」
プラムの推理はもっともで筋も通っている。
「でもデレクってお金あるかな? それにミッキーの証言によると、カーラとデレクが友達みたいに仲良い雰囲気だったって」
「そっか。そう思うと変ね。でもアンジェリカを脅す事は出来るわ。むしろデレクと共謀して、アンジェリカを不倫させて脅す事だって出来るわね」
プラムの言う事はいちいち正しい。でのそこまでの可能性を考えてしまうと限りなく容疑者が広がってしまう。とりあえずカーラの日記にかいてあったイケメンの想い人を探さないと。
「ちなみにプラムは、誰がカーラの想い人だったと思う?」
「村長よ」
即答だった。その可能性はあまり考えていなかったので、私は驚いた。
「えぇ、村長? イケメンではなくない?」
確か50代ぐらいで禿げてもデブでもないが、若いカーラがイケメンだと思うだろうか?
「だってカーラはお金に困ってたんでしょ。この村で一番の金持ちは村長じゃない。その基準で言えば村長はイケメンじゃない?」
確かにカーラの言う事は筋が通っていた。カーラが村長をイケメンと思うのも全くありえない話では無いと思い始めた。
「お金は人間を狂わすからねぇ。クラリッサの言う通りかもしれない。お金が女の美醜感覚を狂わす事は十分ありえるわ」
プラムはしみじみと呟いた。
・カーラの想い人が村長である可能性は大いにある。ただ証拠はない。




