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2話 新しい仕事です

 ミシェルのお別れパーティーの翌日、私は村役場のとある会議室にいた。


 昨日、ジャスミンから紹介された仕事の説明を受ける為だった。


 その仕事は、「転移者保護」という仕事で、かつてはロブがしていた仕事である。何かの間違いでこの世界に来てしまった転移者を保護し、身元を保証する仕事だ。詳しくは知らないが、昨日ジャスミンに言われた。


 かつてロブはこの仕事をしていて、転移者でもある私は世話になった。しかし、その彼こそが杏奈先生を殺した犯人だった。危うく私も殺されそうになり、今彼は塀の中。「転移者保護」という仕事は今は空いている状態だった。


 ちなみにあの事件の余波により、村の商店街はすっかりスカスカになり、ミッキーのパン屋とリリーの雑貨店しかない状況だった。この村は何故か殺人事件ばかり起こるので、住人の入れ替わりが激しくまた何人か引っ越してしまったようだ。ミシェルはもちろん、魔老婆も病気が悪化してしまい王都に病院に入院中である。新しく商店街に店が入れば良いのだが、そんな気配は無く、杏奈先生に事件の余波が今だに身近に感じられた。


「ハイ! あなたがマスミね」


 そこに一人の女性が部屋に入ってきた。


 軽くハグをし、私は自己紹介をする。


「ジャスミンから聞いたわよ。マスミね」

「ええ」

「まあ、座りましょう。私がカーラ。こに村の役所職員で、村長秘書もやってるわ」


 カーラは、砂糖菓子のような美人だった。薄いピンクのスーツが似合い、金色の髪もふわふわだ。日本にいた頃はロマンス小説が好きだったが、カーラは余裕でそのヒロインになれそうだ。役所職員である事がちょと信じられない。


「では、仕事内容を説明するわね」


 カーラは分厚い冊子とともに説明をし始めた。てっきりもっと簡単な説明だと思ったが、少々めんどくさい講習のようだった。


 まず転移者が現れた歴史や背景、その後の差別にあった歴史などを説明される。転移者が持っている技術だけ利用されて、必要なくなったら拷問して殺していたなど悲惨な歴史などは、思わず私は顔を顰める。


「そんな事もあったのね…。そに時代に生きていたら、私は死んでいたかもしない」

「そうよ。マスミはラッキーだったわね」


 冊子には拷問されている転移者のイラストもあり、あまりいい気分はしない。


「でも、今だって完全に差別が無くなったりしたわけでもないのよ。国が転移者にを面倒見るのが一年ぐらい。その後は自分で職を得なくちゃいけないけど、そう簡単じゃないわね」


 砂糖菓子のようなカーラに説明されると、少しは悲惨さが和らぐが確かに冊子を見ていると根深い問題だろう。


 杏奈先生のついては、事件の時はズルをしてカフェを運営していた印象えお持ったが、想像以上転移者が一人で生きていくには難しいようである。杏奈先生が日本と行き来しながら食材を仕入れていた事も仕方がないだろう場合でもない。こんな現実を知ってしまうと、この異世界でどうするべきか悩ましい問題である。杏奈先生の事ばかり考えている場合ではなかった。


「まあ、人間って生きていくのは大変ね。転移者でなくてもあっても」


 カーラは妙に実感がこもっていた。こんな砂糖菓子みたいな女性なので、勝手に苦労知らずのお嬢様かと思い込んでいた。


「カーラは役所の職員さんなのね」

「ええ、まあ、私はコネでこの仕事についたようなものだから」


 カーラは口籠もり、目が泳いでいた。聞いてはいけない話題だったのかもしれない。


「それでは明日から一週間、転移者保護の仕事の座学、それから試験をへて仕事に入ってもらいます」

「試験もあるの?」


 これは予想にしていなかった。


「まあ、簡単なものですよ。仕事内容も難しいわけじゃないから。でも給料が一応出るわよ」


 給料はお小遣いレベルではあったが、メイドの仕事と合わせるとそこそこ悪くない額になる。


「どう? この仕事受ける?」

「もちろん!」


 私は明るく頷き転移者保護の仕事をするよう話が進んでいった。

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