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16話 事件調査開始!

 食堂に野菜スープを並べて、夕食が始まる。


「えー、これだけ?」


 クラリッサはブーブー文句を言っていた。


「今日もタピオカ飲んだでしょう。いい加減にして欲しいのはこちらですよ」


 プラムはクラリッサに文句を言われても全く動じず、冷ややかな目でスープを啜っていた。


「マスミだってこんな質素な夕食は嫌よね?」

「いえ、今日はちょっと死体を見てしまい…」

「死体!?」


 クラリッサは驚いていたが、目をキラキラとさせノートとボールペンを持ってきた。クラリッサは実は「カフェ探偵アン」というコージーミステリを執筆していて、杏奈先生が解決した事件をネタに小説を書いていた。あの杏奈先生が殺された事件もネタにする予定のようで、事件の後根掘り葉掘り詳細を聞かれた事を思いだす。


 職業上、仕方ないが人が死んでいるのに目を輝かせている様子にはついていけない。クラリッサが作品のネタでカーラを殺した?一瞬そんな事も考えてしまった。


「カーラが亡くなったのよ。銃で撃たれていた…」


 当時の様子を思いだし、食欲はどっと減る。このスープは完食できるかわからなくなった。


「クラリッサはカーラについて何か知ってない?誰かに恨まれていたとか」


 私もメモ帳とペンを取り出した。


「そうねぇ。あ、カーラは私にいい感情は持っていなかったかもしれない」

「え!?」

「そんな事ないでしょ?」


 その発言は?私はもちろんプラムも驚いていた。お茶会ではそんな素振りはなかった。クラリッサは甘いものについてはワガママな面もあるが、人から恨まれるタイプではない。杏奈先生のような失言するタイプは恨まれても仕方ないとは思うが。


「いるだったかしら?『コージー村速報』にカーラのコラムが載っていてね」

「『コージー村速報』ってなんですか?」


 クラリッサのいう名称聞いたことない名前である。


「コージー村の役場が出してる広報ね。軽めのニュースが載っているのよ」


 プラムが説明した。見た事はないが、なんとなくどんなものか想像つく。市報というか、かわら版みたいなものだろう。


「そこでカーラは、貧富の格差についてかなり怒っていた。金持ちについても税金をむしり取っているってね。たぶん私の事も嫌いだったんじゃないの」

「金持ちと言ってもクラリッサは、そんな嫌味な金持ちでもないし、税制もクラリッサが決めたことじゃないじゃない」


 私は納得がいかない。こうして困っている転移者の私も雇ってくれる心が広い人物であるし。


「うん、でも逆恨みってあるし」


 クラリッサも恨まれたりする経験があったのだろうか。苦笑しながらスープはちびちびと啜っていた。


「それと殺人事件は関係ありますかね?」


 プラムの指摘はもっともであった。カーラが金持ちを恨んでいたとしても、殺す理由になっても殺される理由はない。


「まあ、お金は人の気持ちを狂わすからねぇ。私はこの事件はお金がらみじゃ無いかって思う」

「その根拠は何ですか? クラリッサ」


 プラムは冷静に問う。


「だって殺人の理由なんて恋愛かお金、あとはプライドの問題しかないわよ。今までの事件だってそうだったわよ」


 私は一応クラリッサの言うことをメモする。確かに杏奈先生が殺された事件の動機も発端はお金だった。犯人はお金に困っていたし、不正なことをしてお金を稼いでいた事を杏奈先生にバレて殺したのだった。


「恋愛はどうです? カーラに何か男の影はありましたか?」

「ジェイクと噂になっている事は聞いたけど、他は無いわ」

「私もクラリッサと同じ意見よ。それ以外は聞いたことない」


 となると、恋愛がらみに犯罪の可能性は薄いかもしれない。プライドの問題だとしても、カーラの性格を考えると不用意に人を傷つけるタイプにも見えない。


 ・動機はお金


 やっぱその可能性が高そうだったが、カーラ自身の事がよくわからない。やっぱりカーラの事を調べよう。


 カーラがいくら悪い事をしていても殺されていい訳がない。カーラの為にも犯人を捕まえたいと思った。


「ま、マスミは事件調査に専念してちょうだい。メイドの仕事はいいわ」


 なんとクラリッサは私の気持ちを見透すような提案をしてきた。


「いいんですか?」

「まあ、もともとプラムと二人で何とかやってきたしね。それにあなたは事件を解決して作品のネタを提供してくれた方が100倍役立つ」

「そうよ、マスミ。事件に専念してね。犯人に襲われそうになったら私を呼びなさいね。色々技を仕掛けて仕留めますから」


 プラにもそう言われてしまい、もう後に引けない。しかもメイドの給料はそのまま取材費としてクラリッサから支給される。こんないい条件はないだろう。


 杏奈先生の事件は渋々調査を始めた訳だが、今回はやる気が出てきた。


「ええ、調査頑張るわ」

「頑張ってね、マスミ!」

「頑張って!」


 クラリッサとプラムに応援されて私はニッコリと笑った。

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