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13話 23回目の殺人事件です

「ところで転移者や不審者はいた?」

「今のところはいないわね。チェリーの家の方も行って見ましょう」


 チェリーはこの村にいた占い師で、この森にある家では変な儀式もやっていた。しかし杏奈先生の事件のおかげですっかり改心そてしまい、今は王都の病院にいる。嫌われ者だったが、いざいなくなると寂しいものだ。牧師さんやクラリッサもチェリーについては寂しがっていた。


 頭上の雲が流れ、急に影が出てきたような気がした。ジェイクがそばにいるとはいえ、やはり森の中は不気味である。杏奈先生はここでよく死体を見つけたというが、やっぱりあの人はメンタルが強かったんだろうか。私はとても進んで死体を見つけようとは思えなかった。


「ちょっと、マスミ。チェリーの家の方に人影が見えない?」

「え、本当?」


 遠くの方にチェリーの家が見えたが、人影は見えなかった。


「いや、やっぱり人影…。っていうか倒れてる?」


 ジェイクは、ハッとし始めた。


「ちょっと、本当?」


 私もその後を追う。もし、転移者がいたら大変だ。チェリーは変な儀式をしながら日本とこの世界を繋げて、杏奈先生の事件の犯人を行き来させていた。今はもうもうチェリーは居ないとはいえ、術は不安定っでよく扉が開いていて杏奈先生が行き来したり、私もこの世界に放り込まれた。あの場所は要注意である。


「マスミ!来るな!」


 先を走っていたジェイクに怒鳴られた。


「どうしてよ?」


 私は息を切らしながら、ジェイクの広い背中越しを見た。見たというより見てしまった。


 そこにはカーラの死体があった。


 こめかみを銃で撃たれ、血を流している。幸い、穏やかな表情で眠ってはいたが、もうこの砂糖菓子は無残に壊されてしまうい、もう生きていない。カーラの死体のそばには、艶々としたタピオの実が散らばっていた。飲みかけのタピオカのカップが倒れていた。


「またか…」


 ジェイクは呆れ顔だった。極めて冷静にカーラの死体を調べ、何か医学用語を呟いていたが、私の耳には何を言っているのかわからない。


「うちの村が意外と治安が悪いな。僕も銃を王都から買ってこようかな」


 ジェイクは呑気にそんな事も言って言っていたが、私の膝はガクガクと震えて今にも崩れ落ちそうだ。


「ちょっと、ジェイク。何、呑気なこと言ってるの?」


 カーラの周りのタピオカの実にアリが集まっていた。このアリ達も何が起こっているのか知らないのか、この殺人事件だらけの村に慣れてしまっているのだろうか?


「うん、たぶん殺しだろうね。どうする? アンナみたいにマスミも調査する?」

「そんな…」


 ジェイクも牧師さんやミシェル同様に他殺体にすっかり慣れている。医者という職業柄、死体を見る事はあるだろうが慣れすぎている。肝が据わっている所の話ではない。


 死体などまだ一回しか見ていない私はすっかりパニック状態だった。


「どうして、一体誰が…」

「それはわからない。ただ、カーラはあまり好かれてなかったのじゃ事実だ」


 そんな事を平然と言っているジェイクが恐ろしい。まさか犯人?第一発見者は怪しまれて当然ではあるが。


「まあ、とりあえずアラン保安官を呼ぶか。ちょっとマスミ大丈夫? 顔が真っ青だけど」

「大丈夫じゃない…」


 私は急に胸が気持ち悪くなり、吐きそうになった。膝が崩れて、ジェイクの腕に支えられる。


 ロマンス小説そのもののような状況ではあるが、死体に全く動揺しない男にどうドキドキすればいいの?


 同時に、さらに胸が気持ち悪くなり私は意識を手放していた。


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